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教室リーグ~底辺モブ生徒が分析スカウターで超名門校の序列をぶっつぶす~
第117話 - 第117話 【音無家の夜】大槻追放と消えせぬ自己矛盾!泥を被った弟の心を解きほぐす姉の一言
42
905文字
2026年06月24日
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#コメディ
ウサギ様
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コメント
1件
よかったです……「面倒な仕事をやり遂げた職人みたいな顔」って言葉、じんわり沁みましたね。勝ったのに純粋な気持ちになれない奏くんの複雑さが、姉の一言でふっと軽くなる感じがすごくリアルでした。大槻追放という外側の成功と、自分の中に残る後ろめたさの対比が美しくて、読んでるこっちも胸がぎゅっとなりました。また続き、読ませてくださいね。
その夜、俺は鉛のような足取りで自宅のドアを開けた。
リビングの灯りが、やけに温かい。
「おかえり」ソファから声がした。姉の彩葉だ。
珍しくテレビもつけず、ただ静かに座っている。
「姉さん。ただいま」
自分でも驚くほど、声に疲労が滲んでいた。
彩葉はじっと俺を見つめ、小さく息を吐く。
「あんた、今日のニュースのこと、何か知ってそうね」
その指摘に、心臓が一瞬止まりそうになった。
この姉には、何も隠せない。
書斎から父・智明が顔を出した。
相変わらず疲れた表情だが、俺を見る目にはかすかな安堵が浮かんでいた。
「奏か。遅かったな」
それだけを言い残し、再び部屋へと戻っていく。
夕食の席では、母が台所で支度を続ける中、三人とも多くを語らなかった。
ただ、テレビのニュースが淡々と「名門洛北祥雲学園の体育教師による不祥事」を報じている。
――俺たちが仕掛けた作戦は、完璧に成功した。
だが、喉を通る飯の味は、驚くほど薄かった。
食後、俺は父の書斎を訪れた。
父は椅子に座り、夜の闇を透かす窓をじっと見つめている。
言葉はなかった。
ただその沈黙の中に、複雑な感情が絡み合っていた。
かつて、この家を暗い影で支配した男――大槻理人。
その男はもう学園にはいない。
それだけで、父と俺の間に確かにひとつの終止符が打たれていた。
(これで、少しは楽になったのだろうか。父さんは)
(俺が、あの男を追い出したことで)
しかし次の瞬間、別の痛みが胸を締めつける。
(でも俺は、あの男の罪のおかげで、この名門校にいる)
(結局、俺は大槻が残した傷跡の上で、卒業まで生きていくんだ)
その事実は、俺の勝利を決して、純粋なものにしてくれなかった。
俺は何も言わずに、書斎を後にした。
廊下に出ると、彩葉が静かに立っていた。
彼女は、俺のその苦悩に満ちた表情を見て、全てを理解したように小さく頷いた。
そして彼女はまるで、世界の真理でも語るかように、静かに言ったのだ。
「あんた、本当に、面倒な仕事をやり遂げた職人みたいな顔してるわね」
その一言で、胸の奥に溜まっていた言葉にならない感情が、わずかにほぐれた気がした。
それぞれの夜。それぞれの想いを抱えながら――
音無家の夜は、深く、静かに更けていった。