⚠ご本人様とは一切の関係ございません
基本🟪視点のみ(🟨🟪)
学パロ
®️なし
⬜🟦描写大あり
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
手に持った紙を見て、外を見て、また紙に目を向ける
さっきからこの繰り返しばかり
⬜「まだそれと睨めっこしてんの?早くしないと先生帰っちゃうんじゃない?」
🟪「分かってるけどさぁ…」
机越しに教科書と参考書を広げた彼に呆れた声で言われる
持つ手に力が入り、紙にくしゃりと皺が寄る
視線の先には「進路希望調査」と書かれたプリント。親の印鑑と名前だけ記されたそれを見て、俺は溜息を吐いた
締切は今日。これを貰ったのは一週間ほど前。書くことを忘れていた訳でも、無くしていた訳でもない
自分が将来どの職に就き、何をやりたいのかが全く見えない。輪郭線すら見えないそれを目指すために、どこに行けばいいかなんて分かるはずもなかった
書いていないんじゃない、書けないんだ。将来何がしたいか分からないから、と担任に多少ニュアンスを変えて伝えれば、「放課後まで待つから、調べるなりして書け」と言われた。そうして今に至る
俺となかむ以外誰もいない自習室で、かれこれ30分以上はこいつと対峙している。この際適当に書いてその場を凌ごうか。いや、己の将来を決めるものだから適当にすべきじゃない、と脳内で堂々巡りを繰り返していた
⬜「─スマイル、これどうやって解くの?」
🟪「ん、どれ…これ一年の範囲じゃね?」
「応用使えばできるけど、なかむのクラスやらなかったのか?」
⬜「そんなの分かるわけねえじゃん、ちゃんとやってないんだから」
俺もここまで開き直れたらいいのに。目の前でシャーペンを弄び、きっぱり言いきった彼を見つめる
昨日の夜、彼に頼み事があるとメッセージが送られてきた。内容は放課後に勉強を教えてくれ、とのこと
確かに期末を視野に入れているなら妥当だろう。問題は勉強よりも自分がやりたい事に一直線な彼が、しかも苦手とする数学に自ら取り組んでいることだ
今までの彼を知っているからこそ信じられない。雷でも落ちたのか?と馬鹿げた考えが過ぎる程には驚きだった
⬜「…俺が勉強してるのが信じられない、って顔してんじゃん」
🟪「よく分かったな、理由でもあんの?」
⬜「あ、聞いちゃう?それ」
自らやっていたとはいえ、やはり苦手なのだろう。早々に教科書類を閉じ、話したくてたまらない、と言う顔をしている
🟪「…さては飽きたんだろお前」
⬜「これは息抜き!いいから俺の話聞いてよ、俺が何でこんな事するに至ったかをさ」
「時は中間テストの結果が出た日まで遡るんだけどね──」
・・・
⬜視点
🟦「─そんで?テストの結果はどうだった?」
⬜「ふふん、聞いて驚くなよ?」
「……なんと!全教科目標点超え達成しました!」
🟦「…まじで!?よくやったじゃん!」
きんときの家のリビングに拍手が響き渡る
中学の頃から始まった、テストが全て返却された後、互いに結果を言い合う恒例行事
テレビにはパーティーゲームが、手前に置かれたローテーブルにはお菓子やらジュースが広げられている。これも毎度おなじみの景色
勉強会できりやんとシャケに叩き込まれた箇所が丸々出たり、比較的得意な問題が出たり、運の女神がちょっぴりこちらを向いてくれたみたい
お陰で今まで赤点か、その辺りスレスレの点数だったのが嘘みたいに点数が良くなっていた
⬜「まあ結構ギリギリなのもあるけどね 」
🟦「でも頑張ったじゃん、凄いよなかむ」
⬜「へへ、ありがと」
🟦「いやぁ、まじか…え、めっちゃ嬉しいんだけど」
⬜「何でお前の方が嬉しそうなんだよ!」
まるで自分のことみたいに喜んでくれる彼に、つられて俺も頬が緩んでしまう
⬜「きんときはどうだった?」
🟦「俺?俺はまあ、いつも通り可もなく不可もなくって感じかな」
⬜「凄いよなぁ、つまり安定してるって事だろ?中々無理だよそれって」
「そういうとこマジで尊敬するわ」
えらい、とか凄い、とか彼を褒める言葉を次々に口に出すと、困っているように笑っていたのが次第に口をきゅっと結んで下を向いてしまう
昔から変わらないその仕草がたまらなく愛おしい。友人を超えた存在だったなら、抱きしめて離さなかったのに
🟦「……っ、そうだ、進路希望調査!なかむもプリント貰っただろ?」
こうやって自分から話題の標的を逸らそうとするのも好きだ。一見何ともなさそうな顔をしているのに、耳の先が隠せていないんだもん
⬜「…ああ、貰ったわそういえば」
「きんときは決めた?進路。俺全然悩んでるんだけど」
🟦「んー、…実は前々から資料請求はしててさ、夏にオープンキャンパスあるから行ってみようかなって」
後ろのソファに置かれていたパンフレットを指差しながら答えられた。その大学はここからかなり離れた場所に位置している。一人暮らしか寮住みは免れないだろう
⬜「ふぅん」
「…きんときと離れちゃうの、俺嫌だなぁ」
思っていたことがそのまま口から出ていたようで、彼に苦笑される
🟦「まだ完全に決めたわけじゃないし、それにどうせ遊びに来るだろ?」
⬜「毎日会えるとたまにしか会えないは訳が違うじゃん!?」
もちろんこれは本音。そして彼に悪い虫が着いてしまうのが心底嫌なのも本音の一つ
冗談交じりに宥められていた時、脳にひとつの考えがよぎった。 それはあまりに単純で、でも確実な解決策
⬜「……俺もそこにしたらいいんじゃん」
🟦「………え?」
⬜「きんとき!俺もそこ行きたい!」
「決めたぞ、俺第一志望はそこにする!」
興奮気味の俺にに押されたのか、やや後ずさり気味の彼に詰め寄る
我ながらあまりに単純だ。でも後悔するくらいなら、これぐらい大胆に決めた方が上手くいくことを俺は知っている
🟦「行きたいって言ったって…そんな簡単に決めていいものなの?」
「第一……なかむには難しいんじゃないかな、?」
申し訳なさそうにそうこぼされる。最高な気分から一転、急に現実に引き戻された。無謀なことであるという実感がじわじわ脳を蝕んでいく
勉強よりも、関心を持ったものに力を入れてきた。だからこそお世辞にも成績はいいとは言えない、それは誰よりも分かっている
偏差値だって中々に厳しいことも、試験の必要科目に一番苦手な教科が必要なことも、目の前には高すぎる壁がそびえ立っているみたいだった
⬜「……このままじゃマズイ、かな 」
🟦「マズイっていうか、無理にここにしなくてもいいじゃん」
「離れるって言ってもちょっと遠いぐらいだしさ」
⬜「そういう事じゃないんだよ…」
その距離が嫌なんだよ、俺は。自分の知らないところで、何年もの間想いを寄せていた相手に、何処の馬の骨かも分からない奴が隣で笑っているのを、言伝で知ることが一番嫌だ
その事を考えただけで、胸が悲鳴をあげそうなくらい苦しくなる。俺が一番近いところに居たいし、彼もそうであって欲しいと願っている。けれど彼の場合は”友情”で、俺の場合は”慕情”だ。交わるはずがない
⬜「……お願いなんだけどさ」
「もし、……もし俺がそこ受かったらさ、一つ聞いて欲しいことがあるんだけど」
🟦「何だよそれ、今じゃダメなの?」
⬜「今はダメ、…ねぇ、聞いてくれる?」
🟦「別にいいけど……その代わり、結果がどうであれ、教えろよ?それ」
「気になりすぎて俺が受からないかもしれないしさ」
⬜「…っはは、それじゃ意味ないじゃん!」
・・・
🟪視点
🟪「─で?その願いってなんなの」
⬜「そりゃあ、俺の数年間したためた想いを聞いてもらうことだよ」
「言ったじゃん俺、後悔しない道を行くって」
なるほど。つまり彼は想い人と離れることが心底嫌で、彼なりの後悔しないための選択を取った結果が、この急な追い込みという訳だ
なんとも彼らしい考えだと思う。同時に、羨ましいとも思った
俺は彼の様に、思い立ったらすぐ行動ができる質では無いから。もしもの話、彼が薦められたという大学に進路を決めたとして、果たしてそこに自分も行く、という決断を取れるのだろうか。そもそもその思考に至るのだろうか
⬜「…スマイル、顔怖いよ?」
言われてハッとする。眉間あたりが重たく感じるあたり、結構眉間に皺が寄っていたのだろう
⬜「俺は俺、スマイルはスマイルなんだからさ、ゆっくりでいいんだよ。それぞれ考え方は違うんだから 」
🟪「…よく分かったな」
⬜「大方そんなところだろ?」
たまにこうして核心を着いてくる。今日はそれにいつもの感覚と真逆の安心感を覚えた
⬜「…やべ、結構時間経っちゃったなー。スマイル早くそれ書けって、マジで先生帰るんじゃないの?」
🟪「なかむの話聞いてたから進んでないんだけど…?」
⬜「うるさいなぁ、俺はまだお前に聞きたい問題沢山あるんだよ」
「ちなみに、俺が数え終わるうちに書き終わらなかったら夜奢ってもらうからな」
🟪「は!?待てって、書くから!おい数え始めんな!」
彼がカウントダウンを始めたため、大急ぎでボールペンを走らせる。時間も時間だ、仕方なしに無難だと思うところをピックアップして書いていく
第二志望まで書き終わり、残るは第三志望の枠のみ
途中まで書き進めたところでペンを止める。少し考えた後、俺はそれに二重線を引き、別の大学名を書いていく
その時だけ、カウントダウンの声が明るくなった気がした
・・・
彼に放課後勉強を教え始めて一週間が経つ
なぜ俺なんだろうか、と気になり聞いたところ、「一番別の話題に逸れなさそうだし、同じ悩み持ちのよしみってやつだよ」と言われた
教えている分には特に何も問題は無い。彼は元々スイッチが入れば没頭する気質がある。あっという間に最近習った所まで辿り着いた。この調子が続けば過去問を解く段階に進むのも近いだろう
問題は彼ではなく、きりやんの方だ
🟨「ねぇ、今日もなかむのとこ行くの?」
🟪「とりあえず期末までは、ってこれ一昨日も言ったよな?」
🟨「でもさぁ、俺がいたらダメなの意味わかんないんだよね」
「理由聞いても教えてくんないし、気になるじゃん?」
教えられるはずが無い。小休憩の時間はもっぱら互いの恋愛相談なのだから
間違っても彼に聞かせるわけにはいかないし、これは勝手な判断ではあるが、人数はなるべく最小限の方が効率がいい気がするのだ
ということで最近は先に帰るよう言っているのだが、毎度の如くゴネられる。いつだったか、お前にだって他に友人はいるだろう、そいつらと帰ればいいじゃないか、と伝えたところ、何故か物凄く不満そうな顔をされたのを覚えている
教室のドアがガラリと開き、半袖のパーカーを羽織った友人が顔を覗かせていた。キョロキョロと見回したあと、俺を見つけたらしく手を大きく振ってきた
⬜「スマイルー!先行ってるから、いつもの教室な!」
🟪「わかった、すぐ行く─」
🟨「なかむ待って、俺スマイルに話したいことあるから、こいつ向かうのちょっと遅くなるわ!」
言い終える前に、きりやんに言葉を被せられる。おまけに肩を掴まれて身動きが取れない
🟪「なっ…!?」
⬜「あー、…おけ向こうで待ってるわ!」
こいつを振り切ろうとした頃には、既になかむは居なかった
文句を言おうとした矢先、肩から手が離れたかと思えば手を掴まれる。突然のことに頭が追いつかず混乱していると、急にその手を引っ張られ、彼は教室の外へと足を進めた
何を言っても返事はかえってこない。諦めて大人しくついて行った先は最上階の空き教室。随分使われていないのだろう。鍵は壊れたまま、窓のサッシにはホコリが被っていた
教室の中に入ったところで、ようやく手を離される。彼の手の感触がやけに熱くこびりついていた
🟨「なぁ、スマイル」
それまで一言も口を開かなかった彼の声は、やけに低く響いた
🟪「な…何、だよ 」
🟨「お前さぁ」
「……なかむのこと好きだったりすんの?」
続く
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
5000超えたので分けます…
コメント
5件
好きすぎる、、、……!! 表現の仕方とか諸々、…ッ!! こう…何か、ぐッて来るんですよね(本当に語彙力無くて すみません、)