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甘っ!!!!!!最高ですね!
予定のない、静かな休日。
スタジオもライブも取材もない日は、誰よりも“脱力してる元貴”――通称“オフ貴”が現れる。
今日もその例に漏れず、リビングのソファに沈みながら、スマホ片手に何かを見ていた。
ジャージ、無造作な短髪、そして黒縁のメガネ。
滉斗は、飲みかけのアイスコーヒーを片手に、その姿を見てニヤニヤが止まらなかった。
(今日のオフ貴、かわいすぎる…)
視線を向けてもまったく気づかない元貴。
むしろ、ちょっと口が開いてるのがまたポイント高い。
(メガネ、いきなり外したらどんな顔すんだろ)
その誘惑に勝てるわけもなく、滉斗はそっとソファに近づいた。
「……なに?」
気配に気づいたのか、メガネの奥の目がぴくりと動く。
「いや、近くでオフ貴見たらさ、可愛すぎて理性吹っ飛んだ。」
「そのネーミングやめろ。マジで。」
「オフ貴、めちゃくちゃ良いネーミングじゃん?」
その会話の最中に――
ひょい。
「っ……てめ、滉斗!!」
メガネが外された。
「ごーめーんー!」
「見えねぇっつってんだろ!!」
「でもその、“ちょっと焦点合ってない感じ”、今日イチでかわいいよ?」
「お前さぁ……っ」
「怒った顔も好きだけど、見えてない時の顔のほうが甘えっぽくて好き。」
「黙れ。」
舌打ちしながら、手探りでメガネを取り返そうとする元貴。
でも滉斗は意地悪く、頭上に掲げたまま笑っていた。
「おい…お前なぁ…」
「ごーめーんなさーい!!」
「うぜぇ……マジでぶっ飛ばす……」
「でもさ、その顔、めちゃくちゃ好きなんだよね。」
その一言で、空気がふっと変わった。
「……元貴のそういうとこ、俺だけが知ってるって思うと、すごく幸せになる。」
「……は?」
「だってさ、普段の元貴って尖ってるし、かっこいいし、ちょっと遠いじゃん。
でも、こうしてオフの元貴に触れると、“俺の人だな”って思える。」
その言葉に、元貴が静かに目を伏せる。
「……なら、そろそろ返せ。」
「うん。」
メガネを返すと、元貴はそっとそれをかけ直した。
レンズの奥で、目元が少しだけ柔らかくなる。
「……俺もお前の顔、知ってるよ。」
「え?」
「“ごめんなさいのあと、絶対調子乗る顔”。」
「うっ、バレてた。」
「わかるに決まってんだろ。何年一緒にいると思ってんだ。」
すっと近づいた顔。
ほんの数センチの距離。
「……やっぱ、かけたままの方が、エロいな。」
「うるせぇ。」
そのあと。
ふたりは、ソファに身体を預けたまま、唇を重ねた。
甘くて、柔らかくて、ちょっとだけ焦れて――
でもそれは、まだ序章だった。
後編へ続く