コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
2. 近づく距離
その後も二人は、何度もその小さな口論を繰り返していた。しかし、いつしかその口論の中に、無理に取ろうとした壁がなくなり、少しずつお互いの距離が縮まっていった。
ある日、仕事終わりに一緒に帰ることになった。江口は普段から鈍感で、入野が時々見せる不意の仕草に気づかない。だが、その日の帰り道、少し歩調を合わせて並んだとき、入野は不意に小さな声で言った。
入野「ねえ、江口。」
江口「ん? どうした?」
江口が振り返ると、入野は少し恥ずかしそうに目を伏せていた。
入野「…なんか、今日はちょっとだけ嬉しいかも。」
江口はその言葉に不思議そうな顔をした。
江口「嬉しいって、何が?」
入野「なんでもない。」
入野はそう言って顔を背けたが、その横顔にはほんの少しの照れが見え隠れしていた。
その瞬間、江口はようやく気づく。
江口「…ああ、わかった。自由くん、ちょっと照れてる?」
入野「違うし!」
入野は反抗的に返すが、その照れた顔に江口は思わず笑ってしまった。
江口「自由くん、ホントに可愛いね。」
江口の言葉に、入野は顔を真っ赤にして振り返った。
入野「うるさい、バカ!」
しかし、江口の方はそのまま笑顔で歩き続け、入野もつられて少しだけ笑った。