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3.ちょっとした距離
その後も、二人の関係は少しずつ変わっていった。仕事が終わると、江口と入野はよく一緒に帰るようになり、最初の頃に比べて無駄な口論は減った。しかし、それでも入野はまだどこか素直になれず、ちょっとした反抗的な態度を取ってしまう。
ある日の帰り道、いつものように並んで歩いていると、ふと入野が言った。
入野「…お前、全然気づかないんだな。」
江口は不思議そうに顔を向けた。
江口「気づかないって、何が?」
入野「だから…俺が、たまにお前に話しかける時、もっと反応しろって言いたいんだよ。」
入野は少し恥ずかしそうにそう言ったが、江口はしばらくその意味が分からなかった。
江口「反応って…どういうこと?」
江口は首をかしげながら言う。
入野「だから、もっと気づけよ! 俺の気持ちとか!」
入野はその言葉を言いながら、心の中でどうしてそんなことを言ったのか少し後悔していた。
しばらく沈黙が流れた。江口は歩きながら、少し考えていたが、やっと何かに気づいたようだった。
江口「ああ、俺、確かに気づくの遅いかもな。でも、気づいたときはちゃんと返すから、心配するなよ。」
江口はにっこりと笑った。
入野「だって、自由くんがちょっと可愛いから、つい反応したくなっちゃうんだよ。」
その言葉に、入野は再び顔を真っ赤にして振り返った。
入野「何言ってんだ、お前は! なんでいきなりそんなこと言うんだよ!」
江口「自由くん、やっぱり反応が面白いんだよな。」
江口は少し楽しそうに笑いながら言った。
その後も、入野は少しずつ江口の言動に振り回されることが多くなった。そして、江口もまた、入野が反抗的に見せている心の奥に、少しずつ素直になっていく様子を感じ取るようになった。