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「ハンカチ、要ります…?」
ここから始まった、俺の恋。
道端でうずくまっている泣いている俺に手を差し伸べて助けてくれた。金髪で、龍柄の服を着ていて、パツパツのズボンなのになんだか雰囲気はフワフワしているような、自分に自信がないような。情けない感じの人がハンカチをくれて、今その人の家にいる。
歳は21歳らしく、名前は藤澤涼架。
救ってくれた人にこんなこと言うのもあれだけど、彼女歴なしっぽいかな、恋愛下手くそそう。思ったことを口にすると藤澤さんは「酷くない!?出来たことないけどさ…」と呟いた。ふふ、と口から笑いがこぼれる。な!と俺の顔を見て頬をふくらませた藤澤さんはとても愛らしく、歳上とは思えないくらいだ。そんな藤澤さんでも料理は出来るらしく、腹がなっていた俺にとりあえず、とある程度の飯を作ってくれた。
キノコのソテー、キノコスープ、キノコの炊き込みご飯。…. キノコ尽くし。
動揺しながらもいただきます、と手を合わせて小さくお辞儀をすると藤澤さんは真正面に座ってニコ、と微笑んだ。
5日ぶりにまともな食べ物を口にした時は酷く美味しく感じて、目に涙が溜まる。そんな俺の顔を見て不安そうに「美味しくなかった!?!?ごめん!!!」と藤澤さんは椅子から立ち上がり叫んだ。違う…と静かに言うと、藤澤さんは良かった….と安心した顔で椅子に座り直した。食べ終わったあとめちゃくちゃおいしいかったです、と皿洗いをしている藤澤さんの袖を掴むと藤澤さんは優しく微笑んで良かったあ、と濡れた手で俺の頭を撫でた。
「汚れ落としたくない?お風呂入る?」
「入ります」
「あーい、ちょっとまってて」
ちょっとまってて…?
それはつまり、服とか貸してくれるから持ってくるって意味なのか、タオルとか諸々準備しなきゃダメだからのまっててだよな。そりゃそうだよな、道端で拾った奴の裸なんて見たくないだろうし。それなら自分の服着せた方がマシだよな。
そう考えながら椅子に座っていると皿洗いを終えた藤澤さんがじゃあ行こっか、と俺の背中に手を当てた。え!?と思わず声が出た俺に藤澤さんは不思議そうに首を傾げてどうかした?と俺の目を見て聞いてくる。断りずらいから風呂までオドオドしながら歩いていくと、ここでまってて、着替えとタオル持ってくるから、と俺に声をかけた。場所を教えてくれただけか。
突っ立っていると、服とバスタオル、それにアヒル、?バスボム….?
「はいるよー」
そう言いながら藤澤さんが服を脱ぎ始めた。
ちょいちょい、と止めに入るとん?とトレーナーを脱いだ藤澤さんが目に入った。
叫びたくなるのを抑えてやっぱなんでもないです、と言って俺も服を脱いだ。
準備が完璧に整った時、藤澤さんが俺の体を見てこう言った。
「…何そのひどい傷、どうし」
「あー、話せば長くなるので後で話します」
藤澤さんの言葉を遮って、浴室に入る。藤澤さんも入ってきて、座って、と俺を浴室椅子に座らせた。
「洗ってあげる。染みたら言ってね」
「….はい」
暖かいお湯が背中に当たる。切り跡にピリッ、と痛みが走りつい
「いッ….!」
「っあごめん、やっぱ痛いよね、お風呂やめとく…?」
我慢します、洗ってください、と声をかけると藤澤は止めたお湯を再び出して俺の体を濡らし始めた。
俺の体には痣やナイフで切られた跡、腫れ上がった殴られた赤色の傷などがある。それを見て藤澤さんが黙っているはずもなく、ちょっと痛いよ、と言い急いで俺の髪と体を綺麗に洗って、自分のことなんか気にせず俺の体をバスタオルでゴシゴシと拭き、下着も何も履かないでリビングまで持ってこられた。ソファに座らされ、藤澤さんに体を見られる。えっち、と言いたいとこだけど流石に今は怒られるし、藤澤さんは本気で心配してるはずだ。体の傷を把握したのか藤澤さんは立ち上がり自分の部屋から救急セットのようなものを持ち出してきた。
「なんですかこれ……」
「包帯とか、湿布とか入ってるやつ、じっとしててね。」
「…はい、おねがいします…」
藤澤さんは真剣な眼差しで俺の色んな箇所にぐるぐる包帯を巻き付けたり、カットバンを貼ったりしてくれた。
「あ…りがとうございます…」
「ほいよ、…で、僕が聞くことじゃないかもしれないんだけど、聞かせてくれると嬉しいな」
「…..藤澤さんになら」
「ふふ、ほんと?嬉しい」
藤澤さんがニンマリと微笑んで俺の目を見る。俺は藤澤さんの目を見て
「…まあ虐待みたいなもんですよ。親に振り回されて殴られて蹴られて。結構歳が離れた兄に見捨てられて。…気持ち悪い大人の人に売り付けられそうになったこともあります。あんま言いたくなかったけど、知らないじじいたちに囲まれてケツ開発されちゃっいました。」
藤澤さんは絶望した顔でえ….と言葉が出なさそうな感じで俺を見ていた。言ってよかったのかな、これ。
でも、言わないと藤澤さんに見捨てられちゃうかもだ。言わないと…
「….で、もう親に殴られたくなくてイラついて殴り返しちゃったんですよね。そしたら窓から放り投げられちゃって、まー痛かったですよあれは、骨折れたかと思いました。たかが1階からなのに。それでうずくまってたら藤澤さんが助けてくれたんです。感謝してます、藤澤さん」
顔を俯けながら震えた声で俺がそう言うと、藤澤さんは俺を思いっきり抱きしめて、
「怖かったね、苦しかったね… よく耐えた。 でも、もう僕がいるから、安心して欲しい…言ってくれてありがとう。」
藤澤さんの言葉に思わず涙が溢れる。強く藤澤さんのことを抱きしめて返して、藤澤さんの肩に顔を埋める。
「んっ、すッ、ふぅッ、うっ…」
「大丈夫、落ち着いて。深呼吸」
「すぅ…、ふっ…う、」
藤澤さんは俺の背中を優しくさすってくれている。ふう、と呼吸を整えると藤澤さんが俺から体を離して
「そういえば、名前聞いてない…僕のしか言ってなかったよね」
「….あー、そうでしたね。大森元貴で」
「はっ、大森!?!?」
「…はい……?」
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新連載、「ハンカチ」やっと思いついたのがこれです。暖かい目で見てくれると嬉しいです…。
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