テラーノベル
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ねぇ、いい加減わかったでしょ?
リスカなんて、やめた方がいいなんて言葉は、なんの救いにもならないってことが。
わかっててやってるのに、何言ったってムダってことくらいわからないんだとしたら、たいがい頭が悪すぎる。
やめろって言うんなら、ねぇ、何か代わりになるものをちょうだいよ?
音楽? 好きなことに打ち込めばやめられるだろうって?
やめられなかったじゃない。好きだった音楽は、いっときあたしを別の世界につれて行ってくれただけで、この息苦しい世界から解放してくれたわけじゃなかった。
死ねもしないし、生きてく場所もないんだとしたら、ねぇ、あたしはいったい何処に行けばいいの?
何処に……どこか、生きていけるところがあるんなら、行きたいよ。
傷だらけの手を、誰かつかんで──
暗い水の底のような中で、溺れかけて死にそうだったあたしに手を伸ばして、明るい地上へ引っ張り上げてくれたのは、某音楽事務所だった──。
気まぐれに上げた歌ってみた動画が、とあるプロデューサーの目にとまったらしい。
あたしはスカウトをされ、事務所のある東京に出ることになった。
東京でひとり暮らしをして、レッスンを続けながら、将来はデビューを目指そうと、スタッフから請け負われた。
デビューなんて、たぶんそう簡単にはできないことくらいわかってた。
現実は、ドラマやマンガの世界ほど甘くはない。
だけど、ここから脱け出せるのなら、あたしはどこでもよかった。
この世界から、さよならできるのなら、どこへでも行く。
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