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風「私ね、平野のこと好きになっちゃったみたい…」
意を決して打ち明け、恐る恐る顔上げる。
どんな顔してるだろう。
さぞかしびっくりするやろな…。
ありさ「うん、みんな好きだよ?」
教室の中、ありさがキョトンとして言う。
そう、平野への気持ちを自覚したけど、いきなり本人に伝える勇気なんてなく(だいいちまだ平野は学校休んで名古屋にいる)、そうなるとまずは女友達に相談でしょ!と言うことで、2年の時から1番仲良くしているありさに打ち明けてみた。
それなのに何なんこの反応!?
私の一世一代の告白を、さも「何当たり前のこと言ってんの?」位のテンションで…。
風「え、もっとびっくりせぇへん!?」
ありさ「だってこのクラスの女子の半分位は平野のこと好きだよ?」
そ、そうなん!?
何と言う難解な恋に手を出そうとしてるんやろ、私…。
ありさ「あれだけいつも一緒にいたら、好きにならない方がおかしいじゃん。私からしたら、むしろまだ付き合ってなかったんかーい!って感じなんだけど。
風と平野が付き合ってると思ってる子、結構たくさんいるよ?」
え、そうなんや??
そういえば私、あんまりガールズトークに参加したことないな。なんとなく今でも女子の塊って怖い。
ありさはさっぱりしていて女子特有の群れる感じがないし、転校初日に声をかけてくれたこともあって、女子の中では1番仲良くしている。
ありさ「いいじゃんいいじゃん!私応援する!よかったぁ~!」
風「え、何がよかった?」
ありさ「あっ…えっと…、うーん、じゃあ私も風にだけ、話すんだけどさ…」
風「えぇ~~っ!!ありさって、れんれんのこと好…」
ありさ「ギャー!声がでかい…!!((꒪∆꒪;)」
慌てて口をふさがれる。
私が平野を好きって告白してありさに求めていたリアクションを、まさかのありさからのれんれんが好きという告白返しで自分がしてしまうとは…。
ほんまにびっくり…。
ありさは男勝りで恋の話なんてしてるの一度も聞いたことないんやもん。れんれんとも仲いいのは知ってたけど、いつもお互い憎まれ口ばっかり叩いて喧嘩ばっかりしてるから。
風「そっかぁー!だからありさも時々関西弁うつってるんや!」
ありさ「え?」
風「だってありさ、”好きな人の喋り方ってうつる”って言ってたやん?そんでそういえば、あの時もありさ関西弁うつってた!」(←1話)
ありさ「そ、そうだっけ!?」
風「そっかそっか~!なんで今まで気づかなかったんやろぉ~?私、応援するね!」
なんか女友達と恋バナして、お互いの恋を応援してキャッキャして…てめっちゃ思い描いていた女子高生の図やん。私、青春してる!なんか日本に帰ってきてから、私リア充…!?
でも、急にありさの表情が曇る。
ありさ「でも、廉は風のこと好きじゃん?」
風「あれは本気やないよ~。れんれんは誰にでもチャラいって、ありさが言ったんやん?」
ありさ「うん、最初はそう思った。また物珍しい転校生に絡んでる、って。でも、今回だけはやけに長いんだよね。いつもは、口説いてすぐ付き合ってすぐ別れてって、2か月ももたないくらいのスパンで次、次って感じだったのに」
風「そ、そうなんや…。すごいな、れんれん…」
ありさ「なのに、風が転校して来てからあいつ、一度も彼女作ってないでしょ?それって、異常事態なんだよ!!」
廉「なになに?何の話~?」
突然れんれんが話に割り込んできた。
ありさ「わっ!別に何でもない!平野がいないと寂しいねって話!あ~早く帰ってくるといいねー!ねっ、風?」
廉「そうか?俺は別に寂しくないけど?その方が風ちゃん独り占めできるし。ねっ、風ちゃん」
そう言ってれんれんの腕が肩に伸びてきそうになったので、立ち上がってスルリとかわす。
今、ありさの気持ちを聞いたばっかりで、れんれんのこのテンションは気まずすぎる。
風「れんれん!前から言おうと思ってたんやけど、そうやって私のことをからかうの、もうやめて!最初は転校生だからもの珍しくて面白がってたかもしらんけど、そろそろもう飽きたやろ⁉︎」
廉「はぁ~!?何言うとんねん!俺はいつでも本気やっちゅーねん!何度も言うとるやろ?」
風「はいはい、そうやってふざけているうちは、近くにいる大切な人の存在に気づかないもんなんよ~?」
とりあえずこの場は退散~!
廉「全くいつになったら風ちゃんは真剣に聞いてくれんのかな~?」
ありさ「まずはそのチャラい見た目をどうにかしたら?私はもっと前髪これくらいのがいいと思うな~」(廉の前髪をいじる)
廉「うっさいわ!お前の好みなんてどーでもえーわ!」
ゴンッ!(ありさが廉のお腹にパンチする)
廉「うっ…」
ありさ「人がせっかくアドバイスしてやってんのに!もう知らん!」
廉「なんやね~ん!この怪力オトコ女~っ!」
ありさ「はぁ、なんでいつもこうなっちゃうんだろ…」
河合「お前らー!今日は嬉しいニュースがあるぞー!なんとうちのクラスに転校生が来ることになった!」
みんな「え~!」
河合「と言っても、1週間限定だ」
みんな「はぁ~なにそれ~!?」
河合「でも喜べ女子!アメリカからの交換留学生で、イケメンだぞ~!」
女子「キャー!」
生徒たちの盛り上がりに満足そうに河合先生は廊下に出て、待たせていた転校生を呼びに行く。
廉「アメリカやって。風ちゃんの知り合いやったりして」
風「まさか~(笑)」
ありさ「アメリカって言ったってどんだけ広いと思ってんの!?あんたアホなん!?」
廉「いちいちうっさいなぁ~お前は!」
風「まぁまぁ(。・_・。;ノ」
ガラッ。
教室に入ってきた男の子を見て息を飲む。
スラリと背が高く、肩幅が広いがっちりとした体系。赤茶の髪に白い肌。
教室のあちこちから「かっこいー」と歓喜のざわめきが怒っている。
だけど私は、言葉が出なかった。
代わりに足が震える。
「風っ!」
突然、その転校生が教壇を降りて、私の席に駆け寄り、私は椅子ごと抱きしめられた。
「やっと見つけた…!」(英語)
「ジェシー…どうして…」(風も英語で喋ってます)
「風を追いかけてきたんだ」
ジェシーはクラス一のイケメンで、リーダーシップもあってカリスマ的存在だった。
ジェシー「日本から来たんだろう?お前、英語しゃべれんの?なんかしゃべってみろよ」
転校初日から、ジェシーは何かとちょっかいを出してきた。
中学1年から突然アメリカに引っ越して、当然英語なんて全然しゃべれなかったけど、何とか一生懸命知っている単語並べた。
だけどジェシーは
「お前、発音変だな!」
と言って笑った。
クラスの人気者だったジェシーの言動にはいつもクラス中が注目していて、“日本から来た転校生は、英語の発音が変“と言うイメージはすぐに定着した。
そしてその発音をからかって笑う、と言う遊びも。
最初に私の発音をからかったのがクラスのボスじゃなければ、ここまで一気に私へのいじめは広がらなかったかもしれない。
だからイケメンは嫌い。
無駄に影響力があって、良いにつけ悪いにつけ周りを率いる力がある。
廉「そっか、あいつが噂の…」
休み時間、ジェシーが早速話しかけてこようとしたので、急いで教室の外に逃げ出した。異変を感じていたれんれんがついてきてくれたので、あれが前に話したアメリカでのいじめっ子のボスだということを話した。
廉「大丈夫やで、俺が守ってやるから」
れんれんが頭をポンポンしてくれる。
いつもはこういう時、平野がそばにいてくれたっけ。
平野がいなくて不安な今、こうやって優しくしてくれる存在がいるとすごく心強い。だけどありさの顔が頭をよぎり、れんれんの手を交わすように立ち上がる。
風「うん、大丈夫大丈夫。たった1週間の交換留学だって先生言ってたし」
廉「でもあいつ、“追いかけてきた“とか言ってなかった?自分がアメリカから追い出したようなもんなのに、どういうことやねん?」
ほんまそうよ、ジェシーがいなかったらあんな辛い思いをしなくても済んだかもしれないのに…。
たった1週間や。
授業中は話しかけて来れないんやから、休み時間と放課後にうまく逃げ伸びればこっちのもん。
チャイムが鳴ると同時に、追いかけるジェシーが先か、逃げる私が先かの攻防戦が毎度繰り広げられた。
幸い、ジェシーは女子に人気で、休み時間になるとすぐに取り囲まれて身動きが取れなくなってしまうので、今のところうまく逃げ伸びている。
さらにこちらは、いつもれんれんがべったりくっついてガードしてくれている。
廉「そうや!ええこと考えた!風ちゃん、俺と付き合ってることにせぇへん?そしたらあいつもそうそう近寄って来れんやろ?もちろんほんとに付きおうても俺は全然ええんやけどな!」
風「だ、だめ!そんなの絶対だめ!(;゚Д゚))))」
そんなのありさになんて説明したらいいんよ?絶対だめでしょ!
廉「なぁ、なんかちょっと前から風ちゃん俺のこと避けてへん?」
れんれんが怪訝な顔をする。
風「そ、そんなことないけど…⁈」
廉「そうかぁ?ま、ええけどな。でももっと俺に甘えてくれてええんやで?」
そう言って、またれんれんの手が頭に伸びてきそうになる。
とっさに身を交わしてしまい、れんれんの顔を見てハッとする。
れんれんが、びっくりするほど傷ついた顔をしていたから。
廉「そんなに俺のこと、嫌い?」
風「え、嫌いとかそういうんやなくて…」
友達の好きな人って聞いちゃった以上、そんなに仲良くできないんよぉ(><)
だからといって私の口から、ありさの気持ちをれんれんに伝えるわけにはいかないし。
うぅ、苦しい立場…。
廉「どうせ俺は、誰にも本気で好きになってもらえへんのよね」
れんれんが寂しそうにつぶやいた。
え、どういう意味?
風「何言うてんの?れんれんのこと好きな子なんて、いっぱいおるやん」
廉「どーだかねぇ…。それに俺は!風ちゃんに好きになってもらいたいんよ!」
風「何…?急に真剣になっちゃって。れんれんらしくない…」
突然真顔でそんなこと言うから、ちょっとどきっとしちゃったよ。
廉「いつもチャラい態度だから本気にしてもらえへんなら、ちゃんと言う。
俺、風ちゃんの事、本気やで?本気で好きや」
な、な、な、何を言うーーー⁈:(;゙゚’ω゚’):
めっちゃ真面目な顔して…!
風「そ、そんな、どうせ“なーんちゃって、びっくりした?“とか言うんやろ!?もう!ちょっとやめて~」
へらへら笑ってごまかそうとしてみるけど、れんれんは全然笑わない。
廉「なんで信じてくれへんの?」
何このテンション?ま、まさか本気で言ってる…?
風「だって、なんでれんれんが私を?しかも、友達として仲良くなってから徐々に好きになってくれたとかだったらまだわかるけど、転校初日からそういうこと言うてたやん?普通冗談やと思うやん?からかわれてると思うやん?」
廉「風ちゃんが教室に入ってきたあの瞬間に、運命だと思ったから」
風「いやいやいや!それこそ信じられへん!なんでこんなイケメンが!私に一目惚れするとかあり得へんから!」
廉「いや、風ちゃんすごいかわいいと思うよ?一目惚れでも全然おかしくないやん?でも、俺のは一目惚れとかそういう軽いのじゃないから。ほんまに、運命やと思ったから」
だから何なの、運命って~~(꒪ꇴ꒪
れんれん、そんなキャラやったっけ!?
廉「でも、風ちゃんが、同じ気持ちになってくれるまで待つから安心して?返事は今じゃなくていい」
そう言って、れんれんはスタスタと行ってしまった。
もう何言ってるのかわからん〜〜(>_<)頭爆発しそう…(ㅇㅁㅇ川
ジェシーが帰るまであと2日。
今日はサッカー部のマネージャー担当の日。部活に行くとなんとそこには、ジェシーがいた。
風「えっ、なんで!?」
廉「今日、体験入部させてくれって。絶対、風ちゃん狙いだろうけど」
ジェシー「風が全然話を聞いてくれないから」
風「だって、話すことなんてない。今さら何を話すの?まさか、日本まで来て私の発音がおかしいって笑いにきたの!?」
ジェシー「風、ごめん…!」
初めて来た日本人の転校生は、小さくて、か細くて、初めて見た時からなんか気になって仕方がなかった。
話しかけたいけど、なんで話しかけていいかわからない。
「お前英語しゃべれんの?なんかしゃべってみろよ」
それが最初の会話だった。
何か言ってくれたけど、よく意味がわからなかった。
ガキだった俺は、“もっと何か喋りたい“と言う気持ちをどうやって表したらいいのかわからなかった。
「お前、発音変だな!」
そうやって笑うことしか、コミニケーションの取り方がわからなかった。
だけど周りのクラスメイトが俺に便乗して風の発音を笑うようになって、どんどんそれはエスカレートしていった。
もちろん風が傷ついている事は途中から気づいていた。
だけどクラス全体に蔓延してしまったその雰囲気を変える事は困難だった。
1人だけヒーローぶって風を守ると言う行動をとるのも恥ずかしくてできなかった。
当然風は俺を避けるようになったから、ますますからかうことでしかコミニケーションをとれなくなった。
ある日風は授業中に体調が悪くなって保健室に行った。心配して様子を見に行こうとしたら、クラスの奴が一緒についてきた。しかし保健の先生は、風を切って捨てるように冷たい言葉を投げかけた。
風は傷ついていた。俺は声をかけることができず、先に教室に戻った。
すると一緒に保健室に行った友達が、先生の口真似をしてみんなの笑いをとった。みんなが笑って、すごく盛り上がって、俺はそれをやはり咎めることができなかった。それどころか俺も一緒に笑ってしまった。
そして、その姿を教室に戻ってきた風に見られた…。
次の日から、風は学校に来なくなった。
俺は、取り返しのつかないことをしてしまったんだと思った。
次に風が学校に来た時、やっと戻ってきてくれた!と飛び上がるほど嬉しかった。だけど先生の言葉に愕然とする。
「風は日本に戻ることになった」
俺のせいか?俺がいじめを牽引したからか?
違う!そんなことがしたかったんじゃない!
俺はただ風と話がしたかっただけだ!なんでわからないんだよ?
俺がどんなに取り戻そうと思っても、俺を避けてそのチャンスをくれなかった。俺から逃げて、保健室に逃げて、そして今度は日本に逃げ帰るって?ふざけんなよ!
なんで、なんで…。
なんで日本に帰っちゃうんだよ。なんで、俺は風にあんなことをしてしまったんだ…。
風に腹が立っているのか、自分に腹が立っているのか、もう何が何だかわからなかった。
俺は最後まで風と目を合わすことができず、ふてくされて席に座っていた…。
ジェシーが一気にまくしたてた英語を聞きとれた人はたぶん私と、英語が得意ないわちだけだった。
いわちが、簡潔にれんれんやジンくん、海ちゃんに説明をしている。
海人「それって…」
神宮寺「風ちゃんのこと好きだったからいじめてたってこと?」
岩橋「で、女子も一緒になっていじめてたっていうのは、クラス一の人気者のジェシーが、やたら風ちゃんに絡むことへのやっかみだったんだね?」
廉「なんっやねんそれ!好きな子いじめるって小学生か!で、今さらそれを謝るためにわざわざアメリカから来たんか!?それで”ごめん”って一言言えば、許されると思ってんのか!?風ちゃんがそのことで、どれだけ心に傷を負ったのか、お前わかってんのか!?」
ジェシー「俺は、風をアメリカに連れ戻しに来た」
へ?
ジェシー「俺、日本に来る前、みんなに宣言してきたんだ。これから、風を連れ戻しに行ってくるって。俺は、風が好きだからって!
だからもうアメリカに戻っても、いじめなんてさせないから。先生に聞いたら、風の両親は今もアメリカに住んでるって?だったら、風だってアメリカに戻れるだろう?いじめがなくなれば、もう何も問題は無いだろう?傷つけた分、そばで償いたいんだ。風、俺と一緒にアメリカに帰ろう?」
即座にいわちがみんなに通訳する。
廉「待て待て待てーぃ!そんな勝手なこと、させへんで!?」
ジェシー「お前、いつも風と一緒にいるよな?一体風のなんなんだよ?風の男か?」
(いわち、通訳が入る)
廉「うっ…」
神宮寺「その質問は痛い…」
岩橋「この状況で”1年近く片思いしてるけど、全く相手にされていない男です”ってかなり分が悪い…」
廉「おいっお前ら!Σ(-᷅_-᷄๑)」
ジェシーがれんれんに詰め寄る。ジェシーはかなり背が高いので、ジェシーの方が優勢に見える。
廉「おっしゃ!じゃぁ、サッカーで勝負や!風ちゃんは絶対に渡さへん!お前が負けたら、とっとと黙ってアメリカに帰れ!」
ということで、なぜか勝手に私がアメリカに帰るかどうかの勝負が繰り広げられることになった。れんれんが負けたらどうしてくれんのよぉ~~~?(−_−;)
ポジションはれんれんはディフェンス。ジェシーはアメリカでもサッカーをやっていて、ポジションはフォワード。ガチンコで2人がぶつかり合うこととなる。
突然始めることになったこの試合の意味を、サッカー部のみんなも知っているはずなのに、いざ試合が始まったらみんな普通に本気になっちゃって、ジェシー側のチームのメンバーもかなりいい動きをしてくる。
ちょっとみんな!!ほんとにジェシーのチームが勝っちゃったらどうすんの~! ( ꒪д꒪ )
体格差では圧倒的にれんれんよりもジェシーの方が勝っている。
だけど、れんれんはびっくりするような執念深いマークを見せて、完全にジェシーを封じ込めていた。
いつもは練習試合ではスマートなプレーしか見せないのに、こんなに泥臭いれんれんのプレーを見たのは初めてだった。
ピ、ピ、ピー!
試合終了。
1対0。
勝利したのはれんれんのチームだった。
ジェシーがその場にへたり込む。
れんれんがジェシーに近づいて言った。
廉「You are loser!」
え?その言葉…。
私がアメリカで、保健室の先生に言われた言葉。そしてそれを真似て、クラス中のみんながはやしたてていた言葉。
次の日から学校にいけなくなるほど、私をどん底に突き落とした言葉。
いじめられていた事は前に詳しく話した。だけどその言葉は、話してない。
私にとって、まだ思い出すと辛くなる言葉だったから、みんなにいじめのことを打ち明けた時もその言葉だけは避けたはず。
ここにいるみんなだけじゃない、あの日言われたその言葉は、両親にも言えなかったんだ。
それなのにどうして…?
風「れんれん…?どうして、その言葉、知ってるの?」
だってその言葉を話したのは、たった1人。
あの頃、すべてを話せた、たった1人の存在…。
オンラインゲームで知り合って、だんだん仲良くなって直接話すようになって、いつしかお互いに辛いこと何でも言い合えるようになった。
顔も知らないたった1人の友達。
“ren“…!
廉「やっと気づいてくれた?」
そう、renちゃんは大阪に住んでいて、関西弁を喋る子やった。
毎日、部屋にこもってrenちゃんとしかしゃべらなくなって、それで関西弁がうつった。
支えられてた。大好きだった。
廉「急に連絡取れなくなって、ずっと探してた。ずっとずっと、忘れられなかった」
そう、あの頃、部屋に閉じこもりっきりでゲームばかりしている私を心配した親に、パソコンを取り上げられて、ある日突然renちゃんとの関係は強制的に途切れさせられてしまった。
私にとって、唯一光をくれる存在だったのに…。
廉「転校するの、すげーやだったのに、それからは”転校したら、風ちゃんと再会できるかも”って、そう思ったら転校が明るい未来に思えてくるようになった。風ちゃんが、俺を変えてくれたんよ」
私はアメリカでのいじめのことをいつもrenちゃんに話していて、renちゃんは親が転勤族で友達と仲良くなってもすぐに離れ離れになってしまうことを嘆いていた。
そうやって、私たちはお互いの悩みを来る日も来る日も話していた。
廉「アメリカから転校生がくるって聞いた時、まさかあのhuちゃんだったりして…なんて、ちょっと期待した。でも、そんなことあるわけないか、ってすぐに自分に言い聞かせてそんなん奇跡だよなって」
私も、ずっといつかrenちゃんと再会したいって思ってた。でも、そんな奇跡起こるわけないって、どこかでもう諦めていた。
廉「でも、風ちゃんの声を聞いたとき、俺は一瞬でわかったよ。
本当に奇跡が起こったと思った。これ絶対運命やろって」