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博麗神社にて。
「れ、霊夢…ちょっと見ろよこれ」
「は?何よ…うわっ」
「このパンめっちゃカビ生えてる…おっこっちのせんべいかっちかちじゃん」
「あんた、ほんとにパン食べないよね…おかげでカビたじゃない、もう」
「なんで私のせいなんだよww」
私は和食派(笑)ですわと胸を張る魔理沙。
「にしても買った覚えがないわ…ちょっと食べてみる気はない?14枚目にどうよ」
「私をなんだと思ってんの?」
「残飯処理班」
「失礼な…私はか弱い乙女だぞ!!」
「どこが?」
あんたのどこが”か弱い”乙女なのよ…と言いたげな顔。
「あ?どっからどう見てもか弱い乙女だろうが笑」
「あんたがか弱い乙女なら私は何なのよ」
「紅白ゴリr」
霊夢がかつてないスピードで魔理沙を締め上げた。
「…紅白天才美少女」
「よろしい」
霊夢は手をパンパンと払う。
「いてて…なんで弾幕ごっこの時じゃなくて今本気だすんだよおかしいだろ」
「何のこと?」
「とぼけやがって…」
霊夢はふふん、と笑った。
「あんただけには負けてやらないわよ」
食べ物には、賞味期限がある。
食品の「おいしさ」と「安全性」を保証するために。
最高の味が失われてしまう前に、それをすべて味わい尽くすために。
そして、『賞味期限』は大体どんなものにもある。
葉音/東方Loveなのだ
3,465
ゆめいろ☆@とどヒュ依存症
12,959
#なんやかんや
深雪 楓
236
人間さえ、例外じゃないから。
私にも賞味期限がある。
どんな強いやつだって、人間である限りはずっとそれに縛られるんだ。
なら、私は。
100年と持たないこの体で、いくつの星を掴めるだろうか。
何をこの世界に刻めるだろうか。
いくつ、他のやつに呪いを残してやれるんだろう。
普段は冷たいくせして、ふと自信満々に、不敵に笑ってみせるあいつを。
いつまで特等席で見られるかな。
私達は、人間だから、さ。
いつか来る最後の日には、最高の味だったって、笑えるように。
あいつの賞味期限が切れるまで、私は紅白天才美少女(笑)の隣を譲らない。
絶対、誰にも譲ってやらないんだ。
…なーんて、な。
「…魔理沙」
「なんだ、霊夢」
「私達、ここで終わりかしら」
「不吉だな、縁起の悪い」
満身創痍。
大きな赤い月が、2人を照らした。
「あんたは、まだ動けるの?」
「…どう思うよ」
背中合わせに座ったお互いの体は、徐々に温かみを失っていく。
「あー。お茶が飲みたいわ、私」
「戸棚に高級玉露がまだあったぞ」
「えー、飲んどけば良かった」
「私は味噌汁が飲みてえ」
あっつあつのやつ。と魔理沙は笑う。
霊夢もつられてちょっぴり笑った。
「私は…やっぱお煎餅。大福も食べたいし…あっ、今日洗濯物干しっぱだ」
「雨が降らないことを願っとくか」
「そうねぇ…今夜は晴れよ」
「それはもう清々しいくらいに、な」
夜空に映えた赤い月。
落っこちてきそうなくらいに近く見えた。
「ねぇ、魔理沙。赤い月って、なんか不吉じゃない?」
「そうか?私には、たまらなく綺麗に見える」
霊夢はにやりと笑う。
「なぁに、告白?」
「は!?なんでそうなる…あっ」
「ふふ、日本語の美学ね」
魔理沙は赤くなった顔を誤魔化すように言葉を重ねる。
「赤い月…まぁ、霊夢の象徴にも見えなくもないか」
「バカね。赤い月といえばレミリアでしょ…」
「漢字違いだ。残念だったな」
あいつのは紅だよ、と魔理沙はどこか得意げに言う。
「…そう。もうなんでもいいわ」
「そうか…」
あ。と霊夢が何かを思い出したように手を打つ。
「魔理沙。あんたが賞味期限切らしたせんべい、美味しかったわよ」
「食ったん!?」
「お茶漬けに乗せたら美味しいのよあれ」
「…そっか。今度私にも出せよな」
「ちなみにパンは捨てたわ。勿体ない…」
「それが正解だよ馬鹿野郎」
霊夢が、魔理沙の肩に頭を乗せた。
背中合わせでそれをすると、必然的に空を眺めることになる。
魔理沙は驚いたように数秒固まった後、同じように自分の頭を霊夢の肩にもたせた。
「空、綺麗ね」
「そうだな」
「…ねぇ、魔理沙」
「?」
「私は、楽しかったわよ。最高に。あんたと同じ空を見られて、本当に良かった」
「やめろよ。そんな、まるで最後みたいな言い方…」
「あのお煎餅みたいに、期限が切れても美味しく食べれるものもある。だけどね…私は、パンだったみたい」
「最高級の皮肉だな。…ま、安心しろ。私もだよ」
「最後が隣じゃなくて、背中合わせだなんて…ほんとはちょっと不満だけど」
霊夢は空に向かってとびきりの笑顔を見せた。
「魔理沙と出会えて、良かった!」
妙に素直な霊夢のセリフ。
これで最後かもしれない霊夢の声。
魔理沙の目から、色々な感情の混ざった雫が落ちた。
「私もそう思ってるよ、霊夢!」
また一緒に朝日を見ることも、せんべいを食べることも、洗濯物を取り込むことも、もう叶わないかもしれない。
だけど、最高にくだらなくって、楽しくて、最高に笑えた。
思い返せば、それで十分だろう?
まだまだ夜は長いけれど。
朝日なんてもう見られやしないけれど。
最後に背中を預ける相手が、こいつで良かったって。
背中合わせでも、一緒に、おんなじ空を見られて良かったって。
そう、思えてしまったんだ。