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転校してきた殺し屋君第6章:闘志の運動会(アスリート)
第28話:殺意のピラミッド
グラウンド中央。数百人の生徒たちが一斉に膝をつき、肩を組み、巨大な「人間ピラミッド」を組み上げていきます。 ピラミッドの土台となる生徒たちは、その上に死神たちが立っていることなど露ほども知りません。
「……ここなら誰も見ていない。観客席からは、ただのパフォーマンスに見えるだろう?」
ピラミッドの最上段、地上数メートルの不安定な足場の上で、斎藤が不敵に笑います。彼の隣には、視力を捨てて「音」で世界を斬る座頭が、杖を構えて静止していました。
「下で土台になってるクラスメイトに傷一つでもつけたら……あんたたちを一生後悔させてやる」 浩一は、自分を支える友人たちの肩の震えを感じながら、静かに腰を落としました。
「始めようか、黒咲雅樹。組織の『清算』を」
斎藤が動きました。ピラミッドの不安定な足場を、まるで平地であるかのように疾走します。佐藤(小曽根)から学んだ「重心移動」の究極。斎藤の放つ回し蹴りが、雅樹の顔面を掠めます。 同時に、座頭の仕込み杖が下段から浩一の死角を突く。
「……そこだ」 雅樹は竹内(安藤)の超感覚を研ぎ澄ませ、目を閉じました。視界から入る情報を遮断し、足の裏から伝わるピラミッドの微かな「揺れ」で二人の位置を把握します。
ガギィィィィン!!
浩一は、運動会用の白い軍手を嵌めた手で、座頭の仕込み杖の刃を「真剣白羽取り」で受け止めました。 「何っ……音を消した私の突きを!?」
「あんたたちは、この土台になっている奴らの『必死さ』を計算に入れてない。みんなが踏ん張ってるこの揺れが、あんたたちの殺気を教えてくれるんだ」
黒咲は氷河から受け継いだ「静」の技術を使い、あえてピラミッドの揺れに同調しました。 揺れが最大になった瞬間、黒咲の反撃が爆発します。
「佐藤式・神速ジャブ!!」
斎藤の顎に、目にも止まらぬ連打が叩き込まれます。足場が不安定なはずのピラミッドの上で、雅樹だけが完璧な軸を保っていました。 「ぐはっ……バカな、この足場でどうやってこれほどの威力を……!」
「みんなが支えてくれてるからだ!!」
黒咲雅樹は座頭の杖を奪い取り、斎藤を巻き込むようにして払い落としました。 しかし、二人は空中で体勢を立て直し、ピラミッドの三段目付近に音もなく着地。そこは、ちょうど一般の生徒たちが肩を組んでいる場所でした。
「フフ……人質はいくらでもいるわ。黒咲雅樹、あんたにこいつらを傷つける勇気があるかしら?」 座頭が近くの生徒の喉元に手をかけます。
その時、ピラミッドの土台の一部を担っていた黒蜜と藤堂が動きました。
「おいおい、俺たちを忘れてもらっちゃ困るぜ!」 「私たちのクラスのピラミッドを、汚さないでくれる?」
黒蜜が下から斎藤の足を掴んで引きずり下ろし、藤堂が座頭の仕込み杖を体育祭の「バトン」で弾き飛ばしました。 三位一体の連携。
ピラミッドが崩れる直前、黒咲は最上段から飛び降り、空中で斎藤の胸元に強烈な膝蹴りを叩き込みました。
ドォォォォン!!
斎藤と座頭はグラウンドの砂煙の中に沈み、雅樹は華麗に砂の上に着地しました。 周囲からは「おおーっ! 凪くん、すごいアクション!」と大歓声が上がります。生徒たちには、それが組体操の派手な演出にしか見えていませんでした。
「……負けだよ、斎藤」 雅樹が差し出したのは、ナイフではなく、競技用の「退場門」を指す手でした。
「組織の清算課が、学校の行事で生徒に助けられるなんてね……」 斎藤は苦笑いし、座頭を支えて立ち上がりました。 「今日のところは引き上げよう。だが凪……君の日常がいつまで続くか、楽しみにさせてもらうよ」
二人の刺客が霧のように消えていく中、体育祭の終了を告げるファンファーレが鳴り響きました。
「凪、最高だったぞ!!」 黒蜜が黒咲の肩を叩き、玲亜がタオルを持って駆け寄ってきます。
夕日に染まる校庭。 雅樹は、汚れ一つない秋の空を、晴れやかな顔で見上げました。
(つづく)
コメント
1件
やべえ……ピラミッドの上であの戦闘、熱すぎだろ🔥 「みんなが踏ん張ってる揺れが殺気を教えてくれる」って台詞、めっちゃ痺れたわ。クラスメイトが気づかず支えてる構図も好き。黒蜜と藤堂のナイス連携でピラミッド守ったとこ、グッときた。観客からは演出に見えるミスマッチ感も最高! 続き気になる〜
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才川奏美
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