目黒は酒を飲んでいる。
舌が切れているから、顔をしかめながら、それでも飲まずにいられない。
泣きながら飲んでいる。
可哀想なことをした。
怖がらせた。
強引にキスして舌を噛まれた。
目黒ー翔太くん。
9人の収録。
渡辺と目が合った。
小さな声で、舌大丈夫?
と聞かれた。
気にしてくれてる。
嬉しかった。
でも、そばには居てくれない。
いつも、近くにいるのに今日は遠い。
乱暴なことしたから当然かな。
目黒は寂しい目をして渡辺を見た。
2人とも騒ぐ方ではないから、誰にも何も言われなかった。
目黒は喋るのが辛いのだろう。
「うん」くらいしか喋らない。
渡辺は食事が出来るのか心配になる。
悪いのは目黒だが気になる。
収録終わりに渡辺が目黒の服を掴み、顎をしゃくった。
空いてる楽屋に入る。
渡辺ー痛いか?
目黒ーうん。
渡辺ー謝らないぞ。
目黒ーうん。
渡辺ーもう戻れないの?
目黒ーごめん。
渡辺ーいきなり、あんな事されるのは困る。
目黒ーうん。
渡辺ー今まで通りだと辛いか?
目黒ーいや、もう何もしない。
渡辺ー喋るな。
目黒ーうん。
渡辺ー俺は今まで通りがいい。
目黒ーうん。
渡辺の指が目黒の唇に触れる。
目黒は苦しそうな顔をして首を振る。
渡辺ー悪かったな。
目黒ーううん。
渡辺ーお前といると落ち着くし、安心するんだ。
目黒ー翔太くん。
渡辺ー俺は酷いことしてるか?
目黒ーううん。
渡辺ー我慢してくれ。
目黒ーうん。
渡辺がそっと目黒を抱きしめる。
目黒は、腕を回すことなくされるまま。
渡辺を怖がらせないよう動かない。
渡辺は楽屋を出て行った。
目黒は動けない。
悲しくて辛くて寂しい。
だが渡辺と今まで通りに過ごすためには仕方ない。
泣けてくる。
いつも通りが戻ってきた。
2人は笑い合う。
だが、互いの家に行く事はない。
2人きりになる事も少ない。
2人は無理してる。
目黒は、渡辺を怖がらせないよう気を付けて接している。
渡辺も、目黒に変な期待を持たせないよう気をつけている。
3か月ほど過ぎた。
ちょっと渡辺の頭を撫でたり、肩を組んだりするようになって渡辺も自然と受け止めている。
目黒は、渡辺を怖がらせないないよう少しずつ距離を縮めて行った。
渡辺にも分かっていたが嫌な気持ちにならなかった。
目黒ー嬉しい。
渡辺ー何?
目黒ー一緒にいられて。
渡辺ー今の目黒は好きだ。
目黒ー翔太くん、そういう事言わない。
渡辺ーごめん。
笑い合う。
そっと渡辺の小指に自分の小指を絡めてみた。
ピクと動いたが、手を引かなかった。
目黒ー翔太くん。
渡辺ーな、何?
目黒ードキドキしてる?
渡辺ーん、してる。
目黒ーでも、いいんだね?
渡辺ー・・。
渡辺は小さく首を縦に振った。
目黒は抱きしめたい衝動に駆られた。
だが、辛い我慢をした。
渡辺が逃げてしまう。
我慢だ我慢だと心のなかで唱える。
コメント
2件
過去作全部読み返してるんですけど、ほんとうによいです🫶好き…