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中学2年生のあの時はインフルの時期で学級閉鎖直前の出席人数だったらしく、2クラス合同で体育の授業を受けることになった。
先生「ゼッケンの数足りないから右側のコートのチームはゼッケンなしで」
生徒たち「はーい」
先生「質問はあるか?」
誰も手を挙げなかった。
先生「ないな。じゃあ、早速チーム分けをする。分ける時は必ず別のクラスのやつがいるようにやるからな。」
俺は密かにアオトと同じチームにならないよう願った。
————
何故こうなったかは俺が知りたい。およそ六分の一の確率だった。
俺はアオトと同じチームになってしまい、かなり気まずかった。そのせいでお互い変に接してしまった。だが、不幸中の幸い、他のチームメイトは俺たちの様子に気づいていなかった。
女子A「アオトくん試合頑張って!」
アオトは中学に上がってからかなりモテていたため試合直前まで俺たちのチームに女子が集まっていた。影キャの俺にはかなり窮屈な環境だった。
俺達はあの頃のように名前で呼び合える雰囲気ではなかったためいつしかお互いを名字で呼んでいた。
アオト「中村くんも、佐々木くんも、頑張ろ!」
佐々木「おう!」
先生「試合、開始!」
先生は開始の笛を鳴らした。
相手チームからのサーブ、俺たちはポジションについた。
俺はバレーが得意な為、あまり心配はしていなかった。
力強く放たれたボールがネットを超え、自陣に飛んできた。
佐々木「よっ!」
佐々木がレシーブを取り、アオトがパスをし、中村のスパイクで一点入った。
アオト「中村ナイススパイク!」
アオトは中村とハイタッチをしながら楽しそうに言った。
中村「アオトも打ちやすいやつありがと!」
先生「次!ゼッケンないチームから」
アオト「はーい」
そこからみるみるうちにアオトが点を取った。時にはブロックをしたり、スパイクを決めたり、裏からサポートしたりとバレーのプレイヤーとして完璧に機能していた。
だが、それとは裏腹に俺は全くの役立たずだった。いつの間にかボールが放たれていたり、パスをしようとするとタイミングを間違えたりする。それには明確な理由があり、それはアオトがいたことだった。
アオトが居るとつい考えてしまう。何度も、何度も思い出して、頭の中で再生してしまう、アオトの悲しそうな顔が。思い出す度に胸が痛み試合に集中できない。
俺はチームの足を引っ張っていた。
中村「焦んなくて大丈夫だぞ!」
ユニ「ありがと」
チームメイトは俺を責めなかった。少でも責めて欲しかった。得点を取られてしまったこと、チームの連携を崩してしまったこと。
そして—————
アオト「ユニくん!」
—————。
——————————……………。
アオトに最悪な思いをさせてしまったこと。
俺はあの日、誰も俺を責めてくれなかった。いや、責めてくれる人がいなかった。
あの出来事は俺とアオトの間でしか知られていない。
だけどその瞬間確かに、アオトの声が俺の中に響いた。
アオトのレシーブが俺の方に飛んできた。俺は今度こそチームの為になろうと、頭をパスをすることのみに集中させた。
今度は完璧にアオトがスパイクを打ちやすい所にボールが行くようにパスをした。
ユニ「アオト!」
アオトの目が少し光った気がした。
アオトは地面を蹴り、ボールを打った。
アオト「よ!」
ボールは敵陣の床に勢いよく衝突した。
その瞬間、先生の笛がなった。
先生「試合終了!1点差でゼッケンありチームの勝ち!」
中村「クッソー!惜しかったな!」
佐々木「アオト!最後の良かったぞ!」
アオト「僕じゃないよ!田中くんだよ!」
中村/佐々木「田中…」
中村たちが不思議そうに言った。
中村「お前さっきユニって呼んでただろ」
アオト「え、そうだっけ?」
アオトは誤魔化すように答えた。
女子A「田中が足引っ張ってなかったらアオトくんのチームが勝ってたのにね」
ふと、そんな言葉が俺の耳に入って来た。
女子B「ねえ、田中くん」
ユニ「はい」
俺は背筋が凍るような声に返事をした。
女子A「なんで田中くんがアオトくんと同じチームなの?」
ユニ「え、そんな、、俺が決めたことじゃないし……」
俺は女子たちの視線に圧迫感を覚えながら消え入るような声で言った。
アオト「ユニくんのせいじゃない!」
アオトは俺の前に手を出し、女子から守るように言った。
女子もまさかアオトが俺の味方をするとは思っていなかったらしい。
女子B「私たちはアオトくんを思って——」
女子たちは俺への態度を忘れ、アオトに媚びを売るような態度に変わった。
アオト「ユニくんが上手くプレイできなかったのは僕のせいだから…!」
女子A「アオトくんのせい?何言ってるの?」
アオトは声を詰まらせ、怒りを混ぜながら、言った。
アオト「ユニくんはいつもはもっと上手いから!でも今回、僕が居たから集中出来なかったの!それだけ。」
女子たちは、珍しく怒ったアオトを見てそそくさと去っていった。
あの時からだろうか。アオトを見ると顔が熱くなる。
俺はアオトに恋に落ちた。
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