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3人の旅の始まり
深い霧に包まれた夜。
Bar Melancholiaの扉が静かに閉まる。
蒼原燈は、眠っている赤羽美琴をちらりと見てから、太宰に向き直る。
「あら、早かったのね……待っていたわ」
太宰は静かに顔をしかめた。
「美琴に何をした」
蒼原燈は、美琴の隣で静かに微笑む。
「夢を見てもらってるのよ。記憶の奥底に触れるために」
燈はふっと小さく笑った。
蒼原燈は、眠っている赤羽美琴をちらりと見やり、それからゆっくりと太宰に向き直った。
「――あら、早かったのね。待っていたわ」
彼女の声は柔らかく、それでいてどこか底の知れない響きを持っていた。
太宰は静かに顔をしかめ、一歩、警戒するように踏み出す。
「……美琴に何をした」
燈は答える代わりに、美琴のその寝顔に視線を落としたまま、穏やかに微笑んだ。
「夢を見てもらってるのよ。深く、深く……記憶の奥底に沈んでしまった“あの頃”に、触れてもらうために」
彼女は静かに息を吐き、小さく笑う。その笑みはどこか、懐かしさと痛みが滲んでいる。
「ねえ、太宰くん――あなたは何か、思い出してくれたかしら?」
その言葉に、太宰の脳裏に浮かんだのは、かつての美琴の姿だった。異能力に飲まれそうになりながらも、必死に抗っていた少女。痛みと孤独の中で、何かを守ろうとしていた彼女。
太宰は目を細め、静かに口を開いた。
「……なるほど。理解したよ。君は、美琴の異能力が形を成したものなのだね?」
すると燈は顔を上げ、ゆっくりと微笑んだ。瞳の奥に、太宰だけに向けた執着の光を宿して。
「ええ、そうよ。太宰くん――貴方に、会うために」
その声は優しく、狂おしいほどの哀しみと愛しさを孕んでいた。
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