テラーノベル
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負けず嫌いでストイックな彼を、ずっと必死に追いかけていたような気がする。いざ隣に立てた時、欲が出てしまった。背中を見つめるだけじゃない。隣で、もっと色んな表情が見られたら。メンバーだけにじゃなくて、もっと俺だけに見せる表情がほしい。
多分それが、吉田仁人という男を好きになったきっかけなのだろう。
何度も愛おしさを口にした。お前が隣に居ないとだめなんだと、俺が俺じゃなくなるんだと、半ば脅しになるようなことも何度も言った。その度、彼は薄く微笑みながら俺を許してくれた。
いつだって本音は見えない。でもそれでいいと思った。この先もずっと独りよがりの恋をしていくんだと、本気でそう思っていた。
『いいよ。じゃあ付き合お。俺たち』
べろべろに酔っ払って出た情けない告白が身を結び、なんと俺の恋は実ってしまったのだ。どうして応じてくれたのかと聞くと、俺の普段の言動はかなり分かりやすかったようで、想いを伝えられたその時は必ず応じようと思ってくれていたらしい。しかし、さすがに酔っ払いの言葉は信じ難いとのことで後日改めてOKを貰い、俺たちは晴れて恋人同士になれた。
俺はまた、仁人に許された。自分の隣に立つことも、今の関係から新しく前に進むことも、いつだって仁人の優しさが俺を救ってくれていた。
その優しさにつけ込もうとしている、汚い自分が居る。
見ていたい、触れたい。仁人の姿を見る度に、嬉しいのに苦しくなった。手を握った時やキスした時の照れ笑いする顔を見て、誰にも邪魔されたくないってそればかりが頭をぐるぐると駆け巡った。
その首に俺のものだという所有印を残したくて……下唇を噛んで、ぐっと我慢した。
幸せなのに、どんどん苦しくなる。ならいっそ、この手を離した方がいいんじゃないかと葛藤する。それができたら苦労しない。だから困っている。仁人が可愛すぎて、好きすぎて、俺の部屋に閉じ込めて一晩中愛を伝えたい、俺だけ見て俺の手で反応して俺が好きだって言ってほしい……なんて、言えるわけもないだろ。
仁人の幸せを俺が一番考えなくてはいけないのだ。俺が足枷になってはいけない。俺の手を振り払って前に進む仁人、その背中を見る。最悪で最高な、そんな未来を想像して、静かに一人飲み込んで。
歯止めが効かなくなるその前に、俺が仁人を手放さないといけないのに。
『夜八時、お前の家行く』
あぁ、もう、お前はずっと俺の前を走っている。
簡潔すぎる短いその一文に、俺は少し泣きそうになった。
俺がシャワーを済ませた後、仁人も軽く浴びたいと言ってきたので、着替えと新品の下着を渡して俺は一人ベッドに寝転び、じっと天井を見つめていた。
これは、夢?仁人が準備してきたって、本当に信じていいのか?絶対しないって言っていたのに、俺のために?
考えれば考えるほど自分にとって都合が良すぎる夢のように思えて、ぐるりと扉の方に向かって体を捻る。そのタイミングで扉が開いた。
「……っ、お前!!!」
「えっ、なになにこわい。なんで怒られてんの俺」
「なんっで、下、履いてねえのっ!?」
仁人のサイズの服なんて持ってないので俺が普段着ているTシャツを渡したが、案の定ぶかぶかで。まぁそれはいいとしても、こいつ……何故か俺が渡した半パンを履いてない。
惜しげもなく晒される真っ白な太腿。裾からちらりと覗く下着。それがあまりにも目の保養。俺の理性がサンドバッグにされている。
「お前のサイズで俺が入るわけねえって」
「いや分かってる……けど、ちょっと待って。ね?いったん落ち着いて話そ」
「俺はずっと落ち着いてるんですけど……」
「はい、とりあえず座って」
ダブルベッドの上、正座する俺の前に、不服ですと顔に書かれたまま胡座をかく仁人。
「なに?」
りー
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48
「あのね、俺すっごい緊張してるの。分かるよね?」
「うん、分かるよ。お前ずっと顔こえーもん」
「それはごめん、でも必死なの。仁人が俺の家に居るってだけでおかしくなりそうで。もう心臓壊れそうなの」
「……へぇ」
俺の言葉を聞いた仁人が少し顔を傾けて、緩く口角を上げた。
あ、まずい。そう思って俺が身構えるより速く、仁人がするりと前のめりに近寄ってくる。はっと息をする一瞬、俺の左胸に手を当てる。あぁ、なんて嬉しそうに笑って。
「俺で興奮しすぎだろ」
ゴンッと頭を殴られたような衝撃だった。
まるで猫、いやこれは小悪魔か。こんな表情見たことがない。
はっはっと短い自分の呼吸の音がする。頭が沸騰しそうなくらい、興奮で全身があつい。
「勇斗はさ、どっちがいい?」
「……ど、っち?」
「うん。俺を脱がせたい?それとも、俺が脱ぐとこ見たい?」
なんて意地の悪い二択を迫るんだ、この男は。
「俺が、したい」
「……ん、わかった」
カラカラに渇いた喉から絞り出した声がひどくカサついていた。しかし俺の声を聞いた仁人は、噛み締めるように頷いていた。
仁人の手が俺の手を取って、着ているTシャツの裾まで導いた。
視線が合った。仁人が大きく一度瞬きをした。それが合図だった。
微かに震える手で少しずつ捲っていく。横に伸びた綺麗な臍、ほんの僅かに筋の入った腹筋。胸元が少し見えたところで、仁人が首を抜いてすぽんと脱ぎ去った。
俺の手からTシャツを奪ってベッド下へ放り投げる。ふるりと首を振って、そのまま後ろへと身体を倒した。
「やっぱいいな、お前のベッド。すげー気持ちいい」
そのなんでもない言葉に、また心が掻き乱される。
俺のベッド。仁人が、ここに居る。寝てる。しかも、裸で。
思わず頭を抱えて蹲った。だめだ、刺激が強すぎて受け入れられそうにない。
「うぅー、うぅー……」
「なんだよ。今さら裸なんて見飽きてるくせに」
「違う……今、なんか色々実感しちゃった」
「ふーん。じゃあもう見ねえの?」
「見ます」
「なら早くしろよ。風邪引かす気か」
なんとか身体を起こすと、仰向けで大の字に寝ている仁人がじっと俺を睨んできた。
まるい肩、しなやかな腕。腹筋、太腿。どこを取っても真っ白で柔らかさが残る、俺が大好きな仁人の身体が、すぐ目の前に。
こくりと、口の中に溜まっていた唾液を飲み込む。
「さわ、りたい」
「ふっ……どーぞ」
相変わらず、彼は悪戯っ子のような笑みを浮かべている。
俺の熱い手のひらで仁人の肌を溶かしてしまうんじゃないかって、ありもしない妄想をする。吸い付いてくるように滑らかな肌なのに骨格は男性そのもので、しっかりとついた筋肉は彼の日頃の努力をひしひしと感じる。
細い首、浮いた鎖骨。下を辿ると、薄く色づいた彼の、胸。
どうしてか、そこに釘付けになる。惜しげもなく晒される身体に、焦がれる気持ちと一緒に愛おしさも込み上げる。
「……見すぎ」
「っ、ごめん!」
「触りたきゃ触れば?」
ふいっと彼は顔を逸らし、その耳元は赤く染まっていた。
彼だって覚悟を決めてくれているのだ。俺も、ちゃんと前に進まないと。
両手で、その温かさに触れる。手のひらに伝わる彼の心臓の動きが、いつもより速い。あぁまた、愛おしいなって笑ってしまって。
「すき、仁人」
「……知ってる」
「抱きしめていい?」
「っ、いちいち聞くな」
ほら、と言って仁人が手を伸ばした。
「全部、お前のやりたいようにやればいいんだよ」
仁人の方へと吸い込まれる身体。自分より小さい身体はいつもより少し冷たくて、仁人も緊張していたのかと察する。
背中へ回した腕に力を込めると、はっと首元に仁人の息が当たる。それにまた愛おしくなって、ぎゅうっとしてしまう。
もう少し、仁人がほしい。そう思って僅かに身体の間に隙間をつくり、仁人の顔を見つめた。くりくりとした大きな瞳が、不思議そうに俺を見上げていた。
「仁人、キスしたい」
恋人同士になって、もう何度この確認をしているのだろう。仁人との心の距離を確かめたくて、それでも断らないでと願いながら、何度も口にする。
「だからっ……いちいち、聞かなくていいって」
一度だって、仁人は断ったことがない。また、俺は安心している。仁人に許されていることを実感する。
唇に寄せる唇。ゆっくりと瞼を下ろした仁人に、そっとキスを送った。
ただ唇を重ねただけの子供じみた一度のキス。たったそれだけなのに、どうしてこんなにも嬉しくなるのだろう。二度目は下から掬い上げるように少し長めに。大袈裟に響いたリップ音すら愛おしい。
うっすらと開いた仁人の目。言葉がなくとも、分かる。先を乞う、色っぽい瞳。
あぁ、止まらなくなる。
口を開けたタイミングも同じで、どちらからともなく舌を絡ませ合う。歯列をなぞって、上顎を擽って、舌の奥まで味わって。仁人の口の端から溢れた唾液すら勿体ないと思ったりして。
「は、ぁ……んぅ」
この苦しそうな声すら興奮材料にしかならない。
背中に回していた手。片方は仁人の頭を抱えて髪をぐしゃぐしゃにして、もう片方は震える背中を撫でながら下へ下へとゆっくり伸びていく。
人差し指の爪先が、下着のゴムのところを軽く引っ掻いた。すると仁人は両脚を俺の身体へ巻き付け、くんっと腰を上げた。
思わずキスを止め、仁人の表情を伺う。熱に浮かされたぽやんとした顔で、力なく笑った。
「い、いよ……脱がして、はやと」
ゴリゴリと削られていく理性の音がする。俺は必死に唇を噛みながら、頷いた。
肌と下着の隙間に手を差し入れ、仁人の小さくまるっこいお尻をなぞりながらゆっくりと下着を脱がせていく。片足ずつ抜いていき、身に纏っていたもの全てを脱ぎ捨てた身体は……この世で一番美しいと思った。
きゅうっと泣きそうに顔を歪めた仁人は、身体を捻りながら腕を出して顔を隠してしまう。
「ごめ……恥ずい、かも……っ」
羞恥心からうっすらと桃色に染まる身体。枕に押し付けた後頭部が動き、髪がぱさりと揺れる。
こんなにも美しいのに隠すなんて、勿体ない。
仁人の腕を掴むとびくりと大きく身体を揺らした。
「見たい、仁人。おねがい。顔見して……?」
「っ……おれ、へんな顔、してる」
「へんでもいいよ。仁人の顔ぜんぶ見たい」
「ぅ、でも……っ」
「俺も見せるから……それじゃ、だめ?」
俺の言葉にぴくんと反応し、仁人は腕の隙間からちらりとこちらを伺う。
「ぜったい、笑うなよ……」
意を決したように少しずつその腕が解かれていく。震える指で枕の両端を持って、ゆっくりと俺の方へ視線を合わせた。
頬を染め、目尻に少し涙を溜めて。先ほどまでの口付けで濡れた唇。震わせた睫毛の隙間、溢れ落ちそうなほどに揺れた黒い瞳は、羞恥心と葛藤しながらもその奥には確かな熱を秘めていた。
胸を満たす熱を逃すように、はぁっと小さく息を漏らす。
「……きれい」
俺の下でこんなに震えた身体。まるで肉食動物に食われる前の、草食動物のようだ。
俺の言葉に反応して、きゅうっと枕を持つ指に力が入った。ちゃんと俺の言いつけを守って顔は隠さないでいてくれる。かわいい、俺の仁人。
その赤く色づいた首筋にキスを落とす。何度も何度も、甘噛みしながら、軽く吸い付いたりしながら。
「は、んっ……ふ、ぅ」
「かわいい、じんと。ほんっとに、かわいい」
「や……ぁ、うぅ」
もちもちとした柔い肌。もっともっと、ほしい。
首筋から徐々に下へと降りていき、先ほど釘付けになってしまった仁人の胸に辿り着く。
はふはふと浅い呼吸を繰り返す仁人が、不安げにこちらを見つめる。
「ごめん、舐めるね」
もう聞いてなんていられなかった。
胸の頂を避けて、その周りをちゅっちゅと唇で触れる。俺の唇にぴくんぴくんと反応する仁人の身体が可愛い。
もういいかな、と。
あ、と口を開けて、そこへむしゃぶりついた。
「はう、ぅ……ぁ」
まだ柔らかだったそこは、俺が唇や舌で愛してやると少しずつ先を尖らせていった。背中を逸らして逃げようとする腰を片手で撫で、その丸みを帯びたお尻をぎゅうっと掴んだ。
くちゅ、と。彼の下から音がする。
それに気付いた瞬間、じわりと顔が熱くなっていく。お尻の割れ目をたどって、そこへと触れる。
あぁ、本当に……。
「準備してくれてたんだなぁ……」
もうほとんど泣きそうな声で、呟いた。
俺の声を聞いた仁人も、こくりとひとつ頷いた。
「さっきのっ、シャワー、で……ローション、ちょっとだけ、したぁ……」
息も絶え絶えに、仁人が素直に白状した。
「ちょっとだけ、した?」
「まだ、指入れるのはこわい、から……はやとに、して、ほしくて」
「っ……俺、に?」
「周り、ちょっとだけ、塗った……だけ」
うぅ、と仁人が羞恥心から顔を背けた。
ぶわりと押し寄せる愛おしさと緊張、それと幸福感。色んな感情をぶつけるように、またキス。とろりと揺れた仁人の瞳が可愛くて、なんかもう全部好きだなぁって思ったりして。
「ごめん、ちょっとだけ離れてい?」
「え……?」
「仁人のナカが傷つかないように、ね?」
こくんと頷いた仁人から身体を離し、ベッド側の戸棚から目当ての物を見つける。手に持って、それを見せないようにまた身体を寄せる。
興奮しすぎて茹った頭、いや全身あつくて仕方ない。着ていたパーカーを脱ぎ捨てる。
ゆっくりと仁人の脚を広げ、キスしたまま、ローションでぬるついたそこへ触れる。仁人の腕が俺の首へとかかる。片手で手に持っていたローションボトルのキャップを開け、指に纏わせる。
くちゅん、なんて可愛い音がして、その窄まりをぬるぬると触ったり押したりしながら反応を伺う。
「ぅん、ぅ、はふ……」
キスに夢中になっているのか、特に違和感を感じている様子もない。
今、か。中指の腹でそこをタップして、ぐっと押した。最初から全て入れるわけじゃなくて、あくまでも少しずつ、少しずつ。
「んぅう……っ、は、あ」
僅かに眉間に寄せた眉。首にかかった腕に力が入ったのが分かった。
いったんキスをやめて、顔中に口付けを落とす。はくはくと呼吸を繰り返す仁人の顔を見つめ、そこに入った指をゆっくり抜き差しする。
「仁人、痛い?」
「ぅ、い、たくない……っだい、じょぶ」
「うん、ありがと。じょーず。仁人、えらいなぁ。かわいい。好きだよ」
仁人が俺の言葉に反応して、そこがきゅんきゅんと収縮する。それにまた可愛いなって、キスを送る。
一本が慣れ始めたそこに、二本目を入れてみる。違和感があるのか眉間の皺が深くなるが、自分でも深呼吸を繰り返してその違和感から意識を逸らそうとしていた。
「いたい?」
「っ、ちが、な、んかっ、くるし」
「ごめん、つらいな。やめよっか?」
しかし仁人はイヤイヤと首を振る。
「おれっ、はやと、とぉ……したい、のに」
気持ちが急いて、焦って、混乱して。ただ相手を想うだけでは上手くいかないんだと、それがもどかしいんだと、仁人は一人己と戦っていた。
今日、何度目かの愛おしさが全身を駆け巡り、俺は仁人の身体を抱きしめた。直接肌と肌が触れ合って、すっかり冷えてしまったこの体温が痛々しい。
「仁人……」
「はや、と……はやと、ごめん、まだ、おれ、なんでっ」
「謝ることないでしょ。頑張ってくれて嬉しい。でも、仁人も気持ちよくならないと、意味ないから」
「おれ……?そんな、あっ……!?」
すっかり熱を失ってしまった仁人の前に触れる。慣れ親しんだ快感に、仁人が目を丸くしこちらを見つめた。
やんわりと握り込み、先端を親指の腹で抉る。途端に背中を反らし、仁人は恍惚の表情を浮かべる。
「あぅ、ん……っ!」
「きもちい?じんと、かわいい」
あうあうと唇を振るわせながら、身体全体で気持ちいいと伝えてくれる。素直でいい子だ。
そしてそのまま中に入っている指も動かす。大きく混乱している様子もなく、ただ与えられた快感に翻弄されている。
「ごめん、もうちょっとだけ、がんばれる?」
三本目。ぐにゅ、とそこに押し入ると、仁人は苦しげにぱさぱさと髪を揺らした。
「んぐっ、ぅ、ぅう……ぁ」
今までと反応が明らかに違う。中の動きを止めて、前だけで快感を与えた。
「っ、ひ、ぁ、ぁ……」
「うん、きもちい。仁人がきもちいと、俺も嬉しい」
「んぇ……?はゃ、と、もぉ……っ?」
「俺ずうっと幸せなの。仁人に触れることも、仁人が俺の腕の中で、俺の手で、きもちよくなってくれることも。仁人が可愛いから、うれしい」
なんだか支離滅裂なことを言っているような気もするが、心からの気持ちなので仕方ないとしよう。
目をぱちぱちと瞬かせ、俺の言葉を理解し、仁人の顔がまたぶわっと赤くなった。
「おまえっ……やばいこと、言ってる」
特大の愛の矛先が自分なんだと自覚して、仁人のそんな様子に俺はにっこりと笑ってしまう。
「照れてる仁人もかわいー」
「っ、お前ばっかり!このっ!」
「うわっ、え、なに……!?」
ぐるんと回る視界。気付いたら仁人のナカにあった指が抜けていて、何故か仁人に押し倒されて、る?
どこにそんな体力が残っていたのかと顔を覗き込むが、はあはあと荒い呼吸を繰り返しながらキッとこちらを睨んできたので、これが彼の精一杯だったんだなと理解した。
「じ、仁人、さん……?」
仁人に見下ろされている。これはこれで大変美味しいシチュエーションなのだろうが、妙に身の危険を感じる。
仁人の視線が俺の下半身あたりまで落ちる。なんだかまずい予感がする。
「お、おれがっ!俺だって……、っひ!」
仁人が意気揚々と俺の下着に手をかけそのままずり下げると、ぶるんと腹を打って現れる……俺の、俺。
あぁだめだ、完全に引いてる。怯えてる目だ。大きな目が更に見開き、どうしようと焦り始めている。
見切り発車でそんなことするな、と思わず苦笑いしながら、とんでもない現実を直視してしまった可哀想な身体を静かに抱きしめた。
「違う、違うよ?別に俺、普通だから」
「な、なんで、あんな……俺、見たことない……」
「見たことなくて安心したけどちょっといったん忘れようか。こわかったよねー、自分に興奮する男のちんこって普通に引いちゃうもんねー、仁人の反応が当たり前で何もおかしいことなんてないからねー」
ゆーらゆーらと身体ごと揺らして落ち着かせる。仁人もだけど、俺自身にも言い聞かせて、必死に冷静さを取り戻そうと早口で捲し立てる。でかすぎる、なんてお褒めの言葉を呟いた、仁人の独り言は聞かないフリをして。
俺の肩にぽすんと頬を乗せ、仁人も遠慮がちに俺の背中に腕を回した。一緒にゆーらゆーらと、お互い丸出しのそれがなければまだ可愛げのある絵面だったのに。
「……落ち着いた?」
「ん……ごめん」
「仁人が謝る理由はないでしょ」
「……ちょっと、引いたけど」
「それはほんとにごめん」
「ちがくて、あの……でも、う、れしかった……気がする……?」
「えっ」
「俺みたいな身体に、勇斗が興奮してくれてるんだって……なんか、安心した、みたいな……」
ぽつりぽつりと話し始めた彼の本音が、ぐさぐさと俺の心臓を刺していく。そう言って仁人は小さく息を吐いた。
「よかったぁ……」
そうだ。今さら、そんなこと、また思い出すなんて。
「不安だった……?」
俺の問いかけに、ひとつ頷く。
想い合っていると感じながら、それでもずっと不安で、気づけば独りよがりになってしまっていて。自分の中で勝手に仁人という人物をつくり上げて、その中に、実際目の前に居る仁人はどこにもいなくて。
「……ごめん」
ずっとずっと、俺は馬鹿なままなのだ。
きゅうっと抱きしめてくれる体温が愛おしい。俺の名前を呼んで、俺の全てを曝け出してくれるこの男が、なによりも大好きで……。
もう、それだけでいいのかもしれない。
ふと顔を上げた彼に軽く口付けをする。こつんと合わさった額。なんだかそれだけで、満たされてしまう。
「仁人、ほんとに好き」
「ふふ……ん、俺も」
「ちがう、言って?」
「……勇斗が、すき」
「もっとほしい」
再び仁人をベッドに寝かせながら、その真っ白な首筋に吸い付き我が儘を言ってみた。
「俺の、俺だけの勇斗……あいしてる」
ずっと、これがほしかった。たったこの一言、これがあれば俺はずっとこの先も生きていける。
仁人と一緒なら、それでいい。
「俺も愛してる。仁人の全部がほしい」
「じゃあ……勇斗、はやく」
仁人の手が俺の手を取って、そこへ導いていく。
臍のすぐ下。ここに、ほしいって。
俺は無言でベッド側の戸棚から真四角のパッケージを見つけ、歯で噛みながら雑に封を開ける。興奮で震える指で少しずつ、そこに被せていった。気持ちが急いてしまって下を脱ぐ余裕なんてなかった。
仁人は緩く膝を開いて受け入れる体勢をつくっていた。腰の下に枕を入れてやりながら、見られないようにローションで滑りを与える。
くちゅ、とそこが期待できる吸い付いたように音を立てて、一瞬息を呑む。
「……いい?」
一度だけ泳いだ目。しかしすぐに、仁人はこくりと頷いた。
「ぁ、あ……っく、ぅ」
ほんのちょっと先端を押しただけだが、仁人は強烈な圧迫感に喘いでしまう。いくら指三本入ったからって実物とじゃ大違いなのだ。
「じん、と」
「やめっるな……はや、く、」
眉間に深く皺を寄せて、脂汗まで滲ませて、受け入れる側の負担がいかに大きいかがこの一瞬ですぐに分かった。それでも仁人は、俺の腕に縋り付いて離れない。
半分ほど入ったかなというところでもう一度仁人の方を見ると、はーはーっと肩を上下させて全身で呼吸していた。いっそ痛々しいまでの健気さを感じた。
「……きもちい」
この気持ちは嘘じゃない。
「ほん、とに……っ?」
瞬きの瞬間に溢れ落ちてしまいそうなほど涙を溜めて、それでも少しだけホッとしたように、仁人は俺に問う。
もう充分だと思った。俺はすっかり萎えてしまった仁人の前を握った。びくんと身体を震わせた仁人に、笑いかける。
「きもちいね、仁人」
「やっ、ぁ、あっ……!」
慣れ親しんだ男の快感に戸惑い、しかしすぐに受け入れた。徐々に硬くなり濡れていくそこに、仁人も興奮してくれているんだと嬉しくて、少し速度を上げて擦り上げる。
前での刺激に合わせてナカもきゅんっと可愛く反応する。
「っは……」
あぁ、可愛い。可愛い、可愛いって、頭の中がそれしかなくなる。視界に映った目の前の仁人も、健気に反応してくれる身体も、ついに溢れてしまった大粒の涙も。全部、全部……俺が好きなものだ。
仁人がイヤイヤと首を振って限界を伝えてきた。恥ずかしい?自分一人だけじゃ嫌?俺に見られたくない?なんて色んな可能性を考えたが、知らないフリをした。
全部見たい。俺の知らない仁人が、ほしいから。
「俺でイって、じんと」
俺の言葉に大きく目を見開く。同時に、親指で先端をぐりっと刺激した。
「あっ……ぁ、ああっ、……!」
がくがく震える脚で俺の身体を挟み込み、限界まで背中を反らして、迎える絶頂。俺の手と己の腹や胸にまで白く汚していく。長い、長い、快楽だった。
ぎゅうっと締め付けられたナカに、俺も小さく息を漏らしながらなんとか耐える。ずるりと抜き去ると、ひくんと僅かに腫れたフチが見えた。
だめだ、って思った。
視界の端から白く染まっていく感覚がする。本能のまま着けていたゴムを外し、未だ絶頂の余韻に浸っていた仁人に覆い被さる。
「な、に……っ?」
「ごめん、ちょっと貸して」
「わ、えっ、あっ……!?」
戸惑う仁人を横目に、己の出したもので汚れた真っ白な腹筋に己のブツを擦り付けた。何度か擦っただけで、俺も。
「はあっ……ぁ、っく……!」
仁人の腹に擦り付けて軽く自分の手で扱いただけ。それだけで、今まで生きてきた中で一番気持ちいい快感を得た。
まるで全速力で走った後のように荒い呼吸を繰り返す。仁人はそんな俺の顔をじっと見つめていた。
そして俺の頬に手を添えて、ちゅうっと可愛い口付けをくれる。
「……かわいい、な」
自分をオカズにした男に対して言う言葉か、それは。
なんてツッコミを入れたいがまだ呼吸が整わず、力尽きた俺は仁人に抱きついたままごろんと横になった。相変わらず腕の中の男は、上機嫌で俺の頭をわしゃわしゃと撫でている。
どれぐらい時間が経ったのだろう。結局仁人が風呂に入りたいと言い出すまでそれは続いた。
「次、今度は俺の家で」
なんて一緒に入った風呂場で言われてしまい、また俺は理性と戦い、仁人はそんな俺を鏡越しに見つめ微笑んでいた。
おわり。
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天才か?、??
とても、良いお話を拝見できて…幸せです 可愛い…2人とも可愛くて愛おしいです
読了しました……。えっと、もう、なんか、すごかったです……(語彙力消失)。勇斗の独占欲と仁人への愛おしさが行ったり来たりして、切なくて苦しくて、でも最後の「俺の、俺だけの勇斗……あいしてる」で全部報われた気がしました。お互いの不安や覚悟がちゃんと伝わってきて、胸がぎゅうってなりました。めおさん、幸せな気持ちをありがとうございます……!