「あ、なんか近いな。」
第17話:『なぁ、なんか避けてへん?』
放課後の教室。
夕陽が差し込む中で、机に頬をつけながら、
ぼんやりノートの端をなぞってた。
最近、光輝の様子がちょっとおかしい。
話しかけても、どこか上の空。
笑ってくれても、目の奥が遠い。
それに、なんや─
前より少し、距離がある気がする。
(気のせい……ちゃうよな。)
いつもなら、冗談ばっか言い合って、
つまらん事でも笑いあってたのに。
最近は、笑いかけても、
どこか”よそよそしい”空気が流れる。
帰り道も、一緒に帰らん日が増えた。
たまたまやって思いたいけど、
心の奥では気づいてる。
(……避けられてる。)
なんでやろ。
俺、なんかしたか?
教室の隅、光輝が友達としゃべってる。
その笑顔を見た瞬間、
胸の奥がチクリと痛んだ。
終わりのチャイムが鳴って、
光輝が鞄を持って立ち上がる。
その肩に、思わず声をかけた。
「なぁ、光輝。」
「ん?どしたん。」
「……最近さ、なんか避けてへん?」
光輝の動きが、一瞬止まる。
その間が、やけに長く感じた。
「……そんなこと、ないって。」
そう言って笑う顔が、
いつもよりちょっとだけ、痛そうに見えた。
(ほんまに、なんもないんか?)
信じたい。けど、胸のざわつきは消えへん。
教室の窓から見える夕焼けが、
やけに滲んで見えた。
「なぁ、光輝……俺、
なんも知らんまま、
大事なもん失うのは嫌やで。」
光輝は返事をせんまま、
ゆっくり目を伏せた。
沈黙の間に、風邪の音だけが流れた。
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