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トロッコが勢いよく走り出す。
「うぇえ゛~……モチャ゛……よかっだ……」
俺は泣いていた。モチャが無事で本当によかった。そんな俺の頭をローが撫でる。
「ろ、ロー、ひくっ、モチャ、他の子にドラッグを食わせないように1人で全部食っちゃって、俺、止めようとしたんだけど、止めきれなくて……ぐずっ……俺、何もできなく……」
「脱出もしてねえのに泣くんじゃねえ、全部終わってから泣け」
泣き止まない俺をローは優しく宥めてくれる。
そして、遂に建物が倒壊し始め、地面が大きく揺れた。その振動がトロッコにも伝わり、スピードが増す。
「うおっ…!?」
足が縺れ、その場に転んだかと思えばスモーカーさんが俺を受け止めてくれた。
「ありがとう、スモーカーさん」
「やっぱり緋の狐はテメェだったか、ジェディ」
「え? …………あっ、ああっ!! おっ、俺今狐の面つけてねえ!!! ちっ、ちがっ! 違うんだスモーカーさん! 俺海賊になったわけじゃねえ! ちょっとローを手伝ってるだけなんだ!!」
スモーカーさんは俺をじっと見つめてくる。俺は焦った。まさかこんなところで、しかもこんな間抜けな形でバレるとは思ってなかったのだ。しかし彼は何を言うわけでもなく、俺の頭にぽんと手を置いた。
――ドカン……ッ!
遠くから爆発音が聞こえた。
「どこかで爆発があったようね…」
「恐らくD棟。おれがいたSAD製造室だろう。ジェディ、いつまで白猟屋のところにいる。こっちに来い」
「あ、う、うん」
スモーカーさんから離れ、ローの方に戻ろうとしたのだが、俺の体はスモーカーさんに抱え上げられる。
「え? す、スモーカーさん?」
「おい、ロー」
「……」
「スモーカーさーん?」
「上手くここを出られたらお前とはおさらばになるが、その前に聞いておきたいことがある」
「なんだ?」
俺を無視して会話を始めるな~……。
「おれの心臓はシーザーの手に渡っていたはず。何故それをお前が持っていたんだ?」
「…フ、奴の勝手な勘違いさ。おれはシーザーを信用させるため、自分の心臓を奴に差し出し、代わりに秘書モネの心臓を受け取った。その後、研究所まで来たお前の心臓を抜き取った。その時点でおれの手には2つの心臓があった。――おれは秘書モネの心臓を親切に奴に返してやっただけだ」
「…………」
「言うだろう? 人に親切にしておきゃ、てめえにいいことがある、って」
何が親切だ……。完全に騙したんじゃねえか。
俺がそんなことを思っていると、視界がヒュッと変わる。
「うぇっ」
ローが石と俺の位置を変えたみたいだ。さっきまでスモーカーさんに抱えられてたのに、今はローの腕の中にいる。
「ジェディは雑用だが海軍に身を置いていた奴だ、おれが引き取る」
「海兵じゃないけどな」
「こいつは今はおれの目的のために動いてんだ、勝手に持っていかれちゃ困るな」
「あの……そろそろ下ろしてくれないか?」
いつまでも抱き上げられているのも恥ずかしいし、というか今俺の取り合いしてる場合じゃないだろ。
「狐のお兄ちゃんモテモテだね」
「あはは……これがきれいな女の人なら俺も素直に喜んじゃうんだけどな……」
ガタン、とトロッコが揺れる。
「通路が崩れる! 俺の取り合いがしてえなら外に出てからにしてくれ!! あ、いや、やっぱ取り合いはすんな!」
トロッコはしっかりと進み続けるが、仮にここで天井が落ちて来れば生き埋め確定。
それに加え瓦礫で前方が塞がれたのだが、ゾロがそれを斬って道を作った。
「うひゃあ~、カッケェ~!」
「あれくらいおれもできる」
「張り合うな」
「安心すんのは早ぇぞ」
「うわぁあ! 毒ガスが…!」
「……また出てきやがったか」
「生き埋め程度じゃすまなさそうね」
「出口にもガスが待ち受けてるはずだ。誰か、風を起こせる者はいねえか?」
「えっ? そんな特殊能力者が簡単にいるもんか!」
「私、できるけど」
「いんのかよ!!」
ナミの言葉に思わずツッコミを入れる海兵たち。しょうがないしょうがない。ここはそういうのがゴロゴロいるんだ。しょうがない。
少しすると出口の光が見え始める。
「出口が見えたぞ!」
「よっしゃ! 何とか間に合……えっ」
「やっぱり出口にもガスがあるな……ナミさん!」
「任せて」
ナミがトロッコの縁に立ち、クリマ・タクトを構える。
「ソーサリー・クリマ・タクト ガストソード!」
クリマ・タクトから突風が吹きだし、毒ガスを裂くようにして道を作っていく。
「出~た~~!!!」
全員が歓声をあげる。線路が途切れ、ブレーキによってトロッコは止まる。正真正銘、外。俺たちは無事に脱出することができたのだ。
外に出た俺たちが最初に見たのは大きなロボットの姿のフランキー、男たちが目を輝かせて見ている。女の子たちはは? 何が? みたいな顔してるけど。
「…バッファロー、お前は、ベビー5か!」
「ロー! あなた本当にジョーカーに楯突く気?」
「この裏切り者が! ジョーカーはお前のためにまだハートの席を……」
「オラァッ!」
「ウ゛ッ!」
「よっしゃヒットー!!」
俺がトロッコの中に入っていた瓦礫を太った方、バッファローの顔面目掛けて思い切り投げる。見事命中し、バッファローは顔を押さえて呻き声をあげる。
お前に何かされたわけじゃないが、お前たちのボスのドフラミンゴにはいろいろされたのでね! ちょっとした憂さ晴らしじゃい!!
「おい何してんだジェイデン! あいつらトラ男の名前呼んでたし、トラ男の友達かもしれねえじゃねえか!」
「いや、敵だ!」
「そういうことだ。てか、シーザー持ってかれるぞ」
「よ~し任せろ! 飛ぶ敵は狙撃手の仕事」
「あいつら…」
「おいおい、ウソップが『任せろ』って言っただろう」
「ウチの狙撃手ナメんじゃねえぞ、鼻が長えからって」
「鼻が長えは余計だ!」
「バカ言え! 万が一にもあいつを逃がせば作戦は……」
「大丈夫だってロー、ルフィの仲間を信じろ。な?」
俺より高いローの頭にぽふ、と手を置く。彼は黙り込んだまま、じっと俺を見つめてくる。
「同盟組んだんでしょう。さっきも見たはずよ、少しは信用してほしいわ。私も逃げてばっかりで、攻め足りないのよね。戦意を失い、遠くにいる敵なら怖くないのよ!」
「しかも! 手負いで背を向けた敵なら任せろ!」
ウソップとナミがバッファローとベビー5を打ち落とす。
シーザーが逃げようとしたが、海楼石の錠に絡めとられ、海へと落ちた。俺はその様子を見て、小さく息をつく。
「よし、第1段階は成功だ」
「どうだ? やるだろう、あいつら。ひひひっ」
「シーザー回収しないと溺死しねえ?」
「そうだな、回収するか」
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