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「あ、そうだ。これ持ってきてたんだった。」
そう言って天乃は猿山に一つの手のひらサイズの瓶を手渡した。
空が黒に塗りつぶされ、空には丸く輝く満月が浮かび上がった夜のこと。普段の黄色いコートから全身黒の服と黄色のスカーフという格好の天乃は慣れた手つきで校門をよじ登り、校舎裏の小さな神社へと来ていた。天乃の予想どうりそこで天乃を待っていた猿山に駆け寄り、段差に座っている猿山の隣に腰を下ろす。
会える機会も減った姿かたちの変わらない幼なじみと談笑しながら取り出したのがこの小瓶だった。
「なに、これ」
空の満月に被せるようにして瓶を見た猿山はそう声をこぼす。中には黄色のトロリとした液体が入っており、傾ける度ゆっくりと移動を繰り返す。ラベルや文字などは見当たらない。
「ねり飴。この前久々に見かけたんだよね」
「へ〜」
「あれ、もしかして初めて見たの?」
「…そうだな」
ねり飴という透き通った黄色に見入っている猿山の肩を抱いて自身の方に寄せた天乃は持ってきたカバンから割り箸を取り出す。袋から出したそれで猿山が持っている瓶を指す。
「蓋開けて」
蓋を取ってもらい、透き通った黄色の中に割り箸を入れる。ぐるりとかき混ぜてから掬うようにして瓶の外に出すと、そのまま空中で何度か回し、飴で出来た糸を絡め取る。
「はい、あーん」
「…あ」
戸惑いながらも素直に口を開けた猿山に愛おしさを覚えつつ、口からのぞく赤い舌の上に割り箸ごとねり飴を付ける。
「ん、」
ねり飴を味わっていた猿山の口をその中にある割り箸の先を動かし口内を傷つけないように丁寧に動かす。その度に漏れ出る声が、生気のなかった白い肌が赤く染まる様子が、呂戊太と同じくらい、いやそれ以上に愛おしい。
「んぁ、」
割り箸を抜くと同時に震える猿の手から瓶を受け取りその上に割り箸を置く。舐めきらないうちに抜いたせいで口の中から引いた銀の糸が天乃の情欲を無意識にも煽る。
一言文句を言いたげな猿山を黙らせるため片手で両手首を掴み頭を支えながら座っていた段差の上に押し倒し唇を合わせる。
「ん、ふ、んぅ…ん……♡」
途端に媚声をこぼす彼が愛おしてくてたまらない天乃は正真正銘自分だけのものとなった猿山を、まるで割れ物を扱うかのように優しく愛でる。口内を犯しながら媚声とねり飴の甘いレモンを堪能し、しばらくした後天乃は口を離す。
終わりかと瞼を上げた猿山の目の前にはギラギラと光る黄色と深紅の瞳があった。