彼女の声が廊下中に響き渡った。
あ、終わったぁ。
一瞬頭の中が真っ白になった。
不思議と焦りは感じない。
なんかもう一周まわってどうでも良くなった。
人生なんて誰しもこんなもんだから俺は悪くない。
そんな意味不明なことを言い聞かせては勝手に安心している。ほんと頭おかしい。
それに加えて、俺はさっさと帰りたいという気持ちが先行してしまっていた。それはもちろん、一発ギャグで滑った余韻である。だから取り扱いず、適当に謝っておけば大丈夫だと思い込んでいた。ホントに非常識な自分が恥ずかしい。
目線を下にやった。
一瞬で我に帰ることが出来た。
彼女はぐったりと倒れている。
自分のしでかしたことの重大さにようやく気づいた。が、遅い、遅すぎる。
というか当たった時の衝撃とかでやばいって気づけなかったのかよ。この間抜けめ。
あのスピードでぶつかったら大怪我は避けられないだろうし。もし救急搬送とかになったら、、、
だが、俺はやはりクズだった。
心配をする以前に、脳内では言い訳の文章が作られ始めてるではありませんか。
別にわざとじゃないし、無意識だし。
俺は100%自分に過失があることに気付いていなかったのである。なんて哀れな。
だが、そんな俺だって人間だ。
道徳心のちょっとやそっとぐらいある。
恥ずかしさと申し訳なさで、押しつぶされそうなメンタルを何とか持ちこたえて、俺は彼女に声をかけた。
緊急事態発生。応答がない。
揺さぶってみたが、やっぱり反応がない。
気絶してる。
やばいやばいやばいって、まじで本当にやばい。
どうすりゃいいんだこれ。俺が全部悪い、いっその事責任取って一家心中とかした方がいいかもしれん。うぅ。
最悪の結末が頭をよぎる。
俺は放心状態になりながら、彼女のことをもう一度見てみる。
本能とは、こんな危機的状況に面しているにも関わらず、いつだって正直だ。
とか思ってる場合じゃないわっ
俺は今するべきことは何か考えるんだ。
えーっと、あーっと、うーんっと、、、、
仕方がない…
苦肉の策だが、もう先生を呼ぶことにした。
ほかの人に知られるのは1番避けたかったことだが、もう思いつくことがない。
第一、俺は一発ギャグで大滑りをかましたんだから、今さら何やったってイメージは最低なままだろう。泣
俺は渋々、さっきまで全力疾走をしていた廊下を教室まで戻ることにした。
え、、、?は?ん?
ちょっと何が起きたかさっぱり。
後ろから声ってことは、いや、後ろの子は起きてないはず。あ、俺疲れてる?幻聴かぁ、末期だなぁ。
いやいやそんなわけねーよな?笑
だってさっきまで気絶してたのに、そんなすぐ意識取り戻すとか、ドラマじゃないんだからさ笑
ありえんありえん。
んーまあ一応確認しとk
この瞬間から俺は運命を感じたのかもしれない。
イメージなら、超巨大な矢が飛んできて一気に体を突き抜けた感じ。いやもう、ズキュンどこじゃない。
バッッギューーンぐらいがちょうどいい。
なんなら貫通してどっか飛んでったかも。
恋のキューピットさん、もうちょい手加減してや。
うぉーわーぁーツンデレやぁーああああ
こんなにも秒で人を好きになったの初めてかもしれない。
ただ、忘れてはいけないのは俺は女子と全く話せないってこと。
目を合わせるだけで精一杯、いやそれも無理かもしれない。コミュ障の強化バージョンってやつだ。
あと、俺は消しゴムを拾ってもらっただけでときめいたことがある。これほんと。
神様、なんでだよ、こんな美人を前にしても俺にまともに会話すらさせてくれんのか。
彼女は俺の目を見て、どんどん問い詰めてくる。
オリジナルアビリティ「コミュ障」発動!!!
この能力は、異性を前にすると脳内がホワイトアウトし、言葉が話せなくなってしまう!
また、相手が可愛ければ可愛いほど、威力が倍増する!
よっぽど顔が好みだったのか、威力が上限を超えてぶっ飛びまくってしまった。
こうなったらもう制御出来ない。
正しい日本語すら使えない。
それプラス滑舌も崩壊している。ダメだこりゃ。
俺はもう、消えたくて消えたくて仕方がなかった。
このままでは正気を保っていられない。
気が狂う前に、とっとと謝罪して、解放してもらわねば。
顔を真っ赤にして、立ち尽くしていると、
俺の恥ずかしがる姿が、彼女のツボにジャストフィットしたのか、急に爆笑し始めた。
コ、コイツぅ、人の失態を嘲笑いおって、コノヤロロロロロロロ!!!
もちろん声に出せていない。心の中ではいつだって怒れるし、罵倒だって簡単に出来る。
くせに現実世界では、1音たりとも発すことが出来ない。
なぜかって?怖いからだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
すると彼女が、
騙された、、、、、
ぶつかった時も、気を失っていたフリをしたいたのだ。
普通の人ならちょっとは、イラついてもおかしくないだろう。
だが、ことの時の俺は反抗心が微塵も残っておらず、なぜか逆にもっと好きになってしまうという謎の思考回路をしていた。
とうとう頭がおかしくなったのか、それともドMにでも目覚めたのかは定かではない。
けれども、今にでも声を大にして言いたい。
好きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
、と
コイツめ、なんて罪深い女だ。
コミュ障の扱い方を熟知している。
本当に素で面白がっているのか、はたまた俺を使って遊んでいるのか、
俺は絶対後者だと思い込んで、何とか異議を申し立てようとするけど無理だった。そんな気持ちまでかき消すことのできる美貌、流石っす。
だが俺だって男だ。こんな芯がへにょへにょでは、一生お嫁さんなんか出来ないぞ?生涯独身でもいいんか?
と、心の中で自分に呼びかけてみるが、全くもって効果がない。逆にもうそれを認めざるを得ない状況になってしまっているので、無駄な抵抗にすぎなかった。
もし今、この時の俺に何かを言えるのであれば、
男のプライドを捨てるな!未来の嫁の前だぞ!!
とでも、活を入れてあげたと思う。
今すぐこの状況から抜け出したい。けれどもなぜか、いじられていることに快感を感じてきてさえいる。
どうやらドMが進行してきているようだ。重症になんかになりたくない。が、そんな気持ちとが裏腹に、脳内はパラダイス、可愛い子に話しかけられてる俺イケてる!って感じ。ただ一切返答はできていなんだがな。
あれから何分がたっただろうか。俺は未だに彼女の手のひらで転がされ続けていた。
すると、彼女はなにか用事を思い出したように、
とだけ言い残して、この場を去っていった。
最初俺は、自分がダメ男すぎて、見損なって帰ってしまったのだと思った。そりゃあんな恥ずかしいとこ見られたら次に合わせる顔がないもん。
俺はしばらく放心状態になっていた。
開いた口が塞がらない。あの時何が起こっていたのかがあまり思い出せない。
えーっと彼女が可愛くて、好きになっちゃって、えーとえーと、、、
ようやく終わった、開放されたという安心感もあったが、それ以上に、また会いたいという気持ちの方が強くなっていた。
なんかほら、体が欲しているというかなんというか。
俺は気づいていなかっただけで、実は幸せの絶頂にいたのかもしれない。
俺は複雑な気持ちで帰路についた。
家に帰って布団にくるまりながら考えてみた。というか頭から離れなかった。
彼女についてもっと知りたい。自分のものにしたい。
誰にも取られたくない。
想像ばかりが膨らんでいた。まだ付き合ってすらいないのに。
あとそれと同時に新たな疑問も生まれていた。
なんであんな勢いでぶつかったのに、無傷だったのだろうと。
俺のあの時の激突は、プロラガーマンのタックルに匹敵するだろう。
俺も一応やった側の身として、いじられまくっている中、多少は心配をしていた。
けれども怪我をしていないというか、自分がすっ飛ばされたことにさえ、気づいていない様子だった。
まあ、何はともあれ、彼女の身に何事も無かったのが俺にとっては1番嬉しかったが。
もうこの時点で異変に気づくのは普通だが、俺は極度の鈍感&天然だったもんで、頭の片隅にもなかったのかもしれない。
それにしてもあんなにも完璧な美人を見たのはいつぶりだろうか。いや、多分生きてきた中でこれが初めてだと思う。
相当モテるんだろうなぁ。と思いながらも、なんとかしてこっちに気を向けさせたいと、作戦を練っていた。
そう、近々俺は、告白をするだろう。
俺と彼女の出会いはこんな感じだ。
毎回の事だか、いつ思い出しても自分がダサすぎて恥ずかしくなってくる笑
まともな言動が出来たことが、1度も無いかもしれない笑
それを「それも思い出だからいい」という言葉で片付けていいのかは、少しおかしいような気もするが笑
次は、告白について話して行こうと思う。
少し長くなってしまったが、最後まで聞いてくれてありがとうな。
ではまた👋
コメント
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2月1日に高校受験を控えてるのでもし、次回作を楽しみにしている方がいたら少し公開が遅れてしまいます。 申し訳ないです<(_ _)>