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「君といると、私の理性が崩壊しそうだ」
ひたぶる感情を抑えた彼の低めな声が、羽のようにふわりと耳元を撫でる。
熱を帯びる眼差しに捕らえられて、目を離せないでいると、コロンが香る滑らかな手の平が頬に触れ、肩がびくんと一瞬跳ね上がった。
「二度だから、な……」
「二度?」って、何のことだろうとも思う。
「一度目はミルクで、二度目は本だったろう」
ようやくその意味が知れると、胸の鼓動がいよいようるさいくらいに鳴り響いて、どうにも止めらなくなった。
「……顔を上げて、こちらを見てくれないか?」
うつむき加減な顎の先が、指で掬われる。
「……貴仁さん」
「彩花」
互いに呼び合い、直向きに見つめ合う。
「……じっと、していて……」
彼が一言を発して、気持ちの高ぶりをなだめるように、私の唇にそっと人差し指を当てた。
触れた指先が下唇を横へ薄くなぞると、「あっ……」と、微かに口が開いた。
「……さっきの続きを、しても?」
黙って首を縦に頷くと、唇にしっとりとひそやかなキスが落ちた。
「……んッ」
求められるままに、口づけに身をゆだねる。
「クッキーのように、唇が甘い……」
彼の囁やきが、甘ったるく私を蕩かす。
「……理性を欠いてしまうほどに、私は、君が好きで……」
息遣いの合間に紡がれる彼の言葉が、纏った羞恥を一つずつ剥がしていく。
「好き……私も」
応えるように告げて、彼へ抱きつくと、ソファーから横抱きに身体ごと抱え上げられた。