「……ごめんなさい、私」
口にしてすぐに、つまらないことを言ったのを謝ると、
「なぜ謝るんだ?」
と、彼から聞き返された。
「だって、なんだかうじうじしていて……」
以前、彼にお見合いの話が持ち上がっていた際にも、一人で凹んでチーフには大丈夫だからと諭してもらったのに、私ったらまた……。
「……美都」
彼から、ふいに名前で呼ばれて、心臓がどくんと大きく高鳴る。
「……僕だけに、可愛いと思わせてほしい。
君の可愛さは、僕だけに独り占めさせてほしい……」
「あっ……」言葉にならずに、涙が溢れた。
テーブルの向こうから伸びた彼の腕が、私の頭を引き寄せて、
唇が柔らかく重ね合わされる。
ふいのキスに薄く開いた唇の隙から挿し入れられた舌の温もりが、緩やかに口内を撫でる。
「うん……っ」
挟んだテーブルのわずかな距離がもどかしいくらいに、互いの唇を求め合うと、
二人っきりの部屋の中には、湿り気を帯びた音が微かに響いた……。
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