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研究室には柔らかな午後の光が差し込み、机や棚の上の資料や書籍を穏やかに照らしていた。くられは両手にいくつもの本やファイルを抱え、棚と机の間を行き来している。軽やかな足取りで、まるで自分のテリトリーを自由に巡るかのようだ。
「先生、それ、重すぎませんか! 落としたら大変ですよ!」
ツナっちは慌てて後ろを追いかけ、手を伸ばす。くられは肩越しにちらりと視線を送り、微かに笑った。
「大丈夫だよ、これくらいがちょうどいいんだ」
しかしその直後、くられは少し前が見えず、足元の段差に躓いた。
「わっ…」
小さく息を吸い込み、眉が一瞬だけ上がる。抱えていた本の一部がふわりと宙を舞う。
ツナっちは反射的に手を伸ばし、一冊をしっかりと受け止める。
「ほら! 危なかったですよ!」
くられは肩の力を抜き、わずかに肩をすくめながら息を整える。
「……ありがとう、ツナっち」
小さく微笑みながら、本を抱え直し、目の端でツナっちを見やる。
「もう、びっくりしましたよ、先生!」
「はは、ちょっと躓いただけだよ。…大丈夫、落ち着いた」
くられはゆっくりと息を吐き、残りの本を慎重に棚に収める。
ツナっちは小さく肩を落とし、ほっと息をつく。くられは淡々と作業に戻り、手元の資料や本を整えながら、時折ペンでメモを書き加えている。その姿に、ツナっちの緊張も少しずつ解けていく。
「先生、本当に無理しないでくださいね!」
「大丈夫だよ」
くられは淡々と答え、手元の整理に集中する。時折ちらりと視線を送るだけで、ツナっちはその柔らかな笑みに少し安堵する。
整理がひと段落すると、くられは両手を軽く振り、机や棚の上の資料を最終チェックする。軽く息を吐きながら肩を回す仕草に、ツナっちはほっと胸をなでおろす――この人に何を言っても無駄だ、自分がしっかりしないと、と。
午後の光に照らされた資料や本のページが穏やかに反射し、ほんの少しの揺れと温もりが、二人だけの静かな時間を静かに満たしていた。