テラーノベル
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ruruha
821
#執着
さぶれ
1,802
49
#元カレ
まぁ
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静寂が、広いパーティー会場を覆い尽くす。「イマジネーション」
アカリが魔法をかけると、用意されていた楽器はみるみる姿を変え、それを見た貴族達は疑問の声をあげた。
煌びやかな絢爛の空間には不釣り合いなほど異質で、武骨な楽器を手に、三人はステージ中央へ足を踏み入れた。
アカリが優雅な動作でピアノの前に腰を下ろす。
ハヤトは木製のスティックを指先で軽やかに一回転させ、手の中でしっくりと落ち着かせると、ドラムセットの背後へ。
そして俺はギターのストラップを肩にかけ、静かにマイクスタンドの前へと歩み寄った。
────何百人もの観客の視線が、一斉に俺たちへ集中する。
ゆっくりと目を閉じ、深く息を吸い込む。
喉の奥で自身の鼓動がドクドクと不協和音を奏でるような猛烈な緊張感。けれど、それが堪らなく心地いい。
懐かしい感触だ。前世で何度も、何度も経験してきた、ステージに立つ瞬間のあの高揚感。
明里の細い指先が、静かに鍵盤を押し込む。
やわらかな一音が、張り詰めた会場の空気に溶け出していく。
澄み渡るピアノの旋律が、刺々しかった場内の雰囲気を少しずつ、けれど確実に浄化していった。
そこへ、隼人のドラムが重なる。
密やかに抑え込まれた重低音のビートが、聴衆の心臓の脈動をなぞるように心地よく鳴り響く。
その一音一音が、床を伝って観客たちの身体の奥深くまで響き渡っていく。
そして――俺は全力でギターの弦をかき鳴らした。
鋭く、けれどどこか胸を締め付ける切なさが、空間を鮮やかに切り裂く。
巨大なシャンデリアが放つ光が手元を眩しく照らし、弦の上を縦横無尽に走る指先が、光の中に影となって揺らめく。
あいつの胸の奥深くまで届くように。
あの懐かしい青春の日々の記憶と、いま目の前にある現在を重ね合わせ、魂を込めて奏でる。
会場全体の空気が、一瞬にして俺たちの発する「音」に包み込まれた。
その瞬間、世界の色彩が変わった。
息を呑む観客たちの呼吸が止まり、その視線が金縛りにあうように釘付けとなるのが、皮膚を通してはっきりと伝わってくる。
音の残響が壁を伝い、高い天井を這い、客席の最前列から最後列まで、容赦ない音圧となって叩きつけられる。
明里のピアノがどこまでも優しくメロディを導き、
隼人のドラムが揺るぎない鼓動となって演奏を支える。
そして俺のギターが、それらすべてを束ね上げるように熱く重なっていく。
三つの異なる音が、美しく絡み合いながら「最高のひとつ」へと昇華していくのが分かった。
リリー――鈴は、ステージの袖でじっとこちらを見つめていた。
渦巻くたくさんの人々の中で、なぜか彼女の可憐な姿だけが、色鮮やかにくっきりと目に飛び込んでくる。
……その華奢な肩が、かすかに震えていた。
届いている。
彼女の体を、心を、押し殺していた感情を、俺たちの音が激しく揺さぶっている。
旋律が、魂の奥底へちゃんと響いているんだ。
覚えているか、鈴?
俺たち、かつて同じステージの上で、同じ音を奏でていたんだぜ。
ドラムの連打が激しさを増し、会場全体が地鳴りのようにうねりを上げて振動する。
ピアノはその激しい荒波の中でどこまでも気高く芯を保ち、極上の旋律を織り上げていく。
ギターが加速させた感情は、どこまでもまっすぐに、歪むことなく空間を駆け抜けた。
弾けた音が天井にぶつかり、鮮烈な反響となって返ってくる。
光と音が眩く渦を巻き、呆然と佇む観客たちの表情を一つひとつ照らし出していく。
そして────物語はクライマックスを迎える。
一瞬、すべての音がすっと引いた。
静寂の中に残されたのは、俺のギターの残響だけ。
かき鳴らすというより、まるで愛おしいものを抱きしめるようにして、最後の旋律を紡ぎ出す。
再びピアノとドラムが力強く合流し、三人の音が完全に一つに溶け合って――
────感動の最後の一音へと流れ込んでいった。
……演奏が、終わった。すべての音が空中に消え去った瞬間、会場は真空状態に陥ったかのように静まり返る。
誰もが言葉を失い、動くことすら忘れていた。
ただそこに残された、途方もなく美しい“音の残像”に誰もが溺れていた。
やがて――たった一人、誰かが小さく手を叩いた。
それが引き金となったかのように、次々と拍手が重なっていく。
瞬く間に、ホール全体を揺るがすほどの嵐のような大歓声と喝采が爆発した。
「すごい……っ!」
「あんな音楽、今まで聴いたことがない……!」
「全身の鳥肌が止まらないわ……!」
あれほどヒステリックに暴れていたアリーシャ姫も、ぽかんと口を開けたまま、言葉もなく立ち尽くしている。
そしてその隣で――鈴が、静かに涙をこぼしていた。
けれど、胸のどこかで分かっていた。何かが決定的に足りない。
どれだけ完璧に奏でられても、俺たち三人だけでは届かない領域がある。
あいつの――「如月鈴」の歌声がなければ、きっと俺たちこ音は完成しないのだから。
「……どうして……見たことも、聴いたこともないはずなのに……涙が止まらないの……?」
呆然と涙を拭いながら溢れ出た彼女の呟きを聞きつけた瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられるように熱くなった。
俺はステージの上から、彼女の方をそっと見つめる。
(……すぐに思い出せなくてもいい。焦らなくていい。少しずつでいいんだ。……でも、お前の中に今も“音”が生きているなら)
心の中で、愛おしい相棒へ祈るように言葉を贈った。
また絶対に一緒に、音楽をやろう
コメント
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いやもう、めっちゃ熱かった……! 三人の音がひとつになって会場を揺らす描写、読んでてこっちまで鳥肌立ったわ。特にラストの「まだ、足りない」で鈴の歌声が必要ってのが分かる伏線、最高すぎる。次が待ち遠しい🔥