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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
バシャリという音と共に冷たい感覚が走った。
うっすらと目を開きながら、つまり自分の頭から水をかけられたのだと認識する。
ゆっくりと覚醒していく頭に、未だ鳴り止まないエラー音が響いた。
「寝てんじゃねぇよ」
いつの間に戻ってきていたのか、黒マスクは大きめのグラスを手にしていた。
その中の水をかけられたのだろう。
前髪から雫がポタポタと滴り落ちるのを、俺は首を左右に振って払う。
そんなこちらを見下ろしながら、黒マスクはさっきまでの余裕ある態度とは打って変わった表情で眼光を鋭くした。
「お前、何しやがった」
手錠に繋がれた左手首はもう感覚がなくなってきていた。
一体どれくらい意識を失っていたんだろう。
時計がないこの部屋では、確認する術もなく見当もつかない。
「何って…何が」
掠れた声を返すと、黒マスクはグラスを投げ捨てた。
代わりに銃を取り出し、俺の目の前に突きつける。
それと同時にどこか遠くで爆破音がした。
地鳴りがするようなその轟音を無視したまま、あいつは俺を睨み据える。
「システムがダウンさせられた。電気は何とか予備電源で繋いだけど、PC周りは全部ダウンしてる。しかも建物内のあちこちでさっきから爆発が起きてる」
「俺がそんなことできるわけないやん」
黒マスクの言葉に重ねるように…食い気味にそう答えた。
床から腰を少し浮かせた態勢なため、足を伸ばしたり折り曲げて体を支えたりと試行錯誤するけれど楽な姿勢なんて見つからない。
左手首の感覚のなさに比例するように、足も段々と鈍い痛みを訴えてくる。
加えてまた遠くから聞こえる轟音が、軋むように全身に響いた。
黒マスクの言う通り、確かに照明はさきほどより薄暗いとは言えきちんとその明かりを取り戻していた。
「お前自身がやったとは思ってねぇよ。…誰かここに入れやがったな」
「どうやって?」
鼻で笑うように尋ね返すと、黒マスクはギラとその目つきを更に鋭くする。
それを無視するように俺はそのまま言葉を続けた。
「お前ずっと俺の動向を盗聴器で聞いとったやろ。どこに応援を呼ぶ隙があったって言うん」
「…盗聴器壊してからここに来るまで、チャンスはあっただろ」
撃鉄を起こす音がする。
すぐそこでまっすぐ向けられた銃口。
…でも、まだだ。まだこいつは『撃てない』。
「俺のスマホでも調べたら? どうせお前が持っとるんやろ」
それに、と付け加えて唇を持ち上げ不敵に笑んでみせる。
「さっきから聞こえてくる爆発音。あんなに立て続けに爆発を起こせる腕利きの爆弾魔(ボマー)…俺が『外から』呼び込めるわけないやん?」
ニッと笑ったまま意味ありげにそう口にした。
一瞬眉を顰めた黒マスクが、ハッと弾かれたように顔を上げる。
「お前…! まさか…!!」
初めて黒マスクの顔が青ざめたのが分かった。
チッと舌打ちをして、1番近くの男を呼びつける。
「こいつ見張ってろ!」
そしてそれ以外の連中を全て引き連れ、靴を下品に鳴らしながら走り出した。
「冷凍室だ!」
わめくような声が段々と遠ざかっていく。
それを見送ってから、思わず「ははっ」と笑いがこぼれ落ちた。
ざまぁみろ、今日何度目かの言葉を内心で呟く。
声には出さなかったはずだけど、心の声が聞こえたのか黒マスクが残していった部下は俺をジロリと睨んだ。
「随分余裕だな。この後殺されるっていうのに」
持っていた銃を俺の方に向け、そいつは苛立ちを隠さない声でそんな言葉を発する。
煽るような態度気に入らなかったのか、男は不愉快そうに眉を顰めた。
…どうやら黒マスクより気が短いらしい。
「やめとけよ。どうせ撃たれへんやろ」
苛ついた、なんてくだらない理由で勝手に俺を殺せば、こいつだってただじゃ済まないはずだ。
黒マスクが許さないだろう。
「抵抗して逃げようとしたから撃ち殺した、そう言えば大した問題じゃない」
「逃げれるわけないやん、この状態で。…あぁそうや。この手錠の鍵どこ?」
「言うと思うか?」
「…いや?」
このリアクション、鍵を持っているのはこいつじゃなさそうだ。
…どうする。ここを脱する方法を考えたいけれど、殴られすぎたせいか頭が回らない。
だけどそんなこちらの焦りや弱みは見せるわけにはいかず、俺はただ首を竦めて笑ってみせた。
その態度に男は再び激高したのか、舌打ちまじりに手を大きく振り上げる。
次の瞬間、銃を持ったままの手が風を切るような音を立てた。ためらいなく振り下ろされるその重みで殴られたら、今度は気絶じゃすまないかもしれない。
「……っ」
首だけでも傾けて、何とか避けようとのけぞった。
…だけどそれよりも早く、想像より鈍い音が辺りに響く。
ドガッと重い音がしたのと同時に、俺の目の前で男の体が空中で一回転した。
「…!?」
いつの間に入ってきていたのか、一つの影が男を蹴り飛ばしたところだった。
吹っ飛ばされた男は数メートル先の壁に体を打ちつけ、低い唸り声を漏らしながらパタリと力を失う。
…死んではなさそうだ。
そのまま意識をなくしたんだろう。
「……」
男を一瞥してから、俺は自分の目の前に視線を戻した。
あいつを蹴り飛ばしたその「影」は、敵が起きて来ないのを視認してからゆっくりとこちらを振り返る。
薄暗い部屋の中、光るように目立つピンク。
互いに言葉なく見つめ合った時間はほんの数秒だったはずなのに、永遠のように長く感じられた。
やがて伏せ目がちに俯いたないこが、先にその視線を逸らす。
それから床を睨みつけるようにしながら、カツカツと靴音を立ててこちらに歩みよってきた。
俺の目の前で、目線を合わせるように少しかがむ。さっきまでの黒マスクと同じような態勢なのに、あいつのときのような嫌悪感は沸き起こらなかった。
かけるべき言葉は持ち合わせていない。
あんなことをしておいて平然と声をかけられるほど身勝手にもなれなかった。
しかもないこの表情からは感情が全く読み取れない。
悲しんでいるのか、怒っているのか…ピンクの瞳は無感情にただこちらをまっすぐ見つめてくるだけ。
「…まろ」
やがてもたらされた呼び声は、ほんの数時間ぶりなはずなのに何年も聞いていなかったように胸を打った。
散々な目に遭わせたことは自覚している。
本当は言わなければいけない言葉があるのも分かってる。
でもそれら全ては、喉に張り付いたように出てこない。
「ほとけっちにさぁ、まろのこと6発は殴っていいって言われたんだよね」
前触れもなく物騒なことを言うないこは、それでも本気のようだった。
いつもみたいに笑うこともせず、真顔で両手をぶるぶると準備運動でもするかのように振る。
そしてそれから、右手で俺の胸倉を乱暴に掴み上げた。
「歯食いしばれ」
言われて俺は、ぐっと堅く口を閉じた。
舌を噛んでしまうことがないようにと噛み合わせた歯に力をこめる。
ないこが利き手を振り上げるのと、俺が目を固く閉じるのが同時だった。
「……っ」
細身のないこにでも、体重を乗せて殴られれば相当痛いだろう。
…なんて、頭の中でどこか呑気に考えている自分がいた。
だけど頬を打つはずの痛みは一向に訪れない。
片目を薄く開けて様子を伺おうとしたその時、代わりに唇に柔らかい感触を覚えた。
驚いて両の目を見開いた俺に、ないこは更に強く唇を押し付ける。
「……」
重ね合わせるだけのキスに、こいつの複雑に入り乱れた感情が乗っているのが伝わってきた。
やがて唇を離したないこは、至近距離で俺の顔を見つめた。
赤く潤んだ目から零れ落ちそうな涙を堪えているのか、ぐっと眉間に皺を寄せて。
さっきまでの無表情は、嘘のように崩れ落ちていた。
それからそっと俺の頬に触れ、その体温を感じたのか耐えきれないように目を伏せる。
「…良かっ…」
生きてた、とないこから漏れた声は、最後までは言葉として形にならなかった。
だけどそれを気に留めることもなく、そのまま抱きつくようにして俺の胸に飛び込んでくる。
(…っぅ…)
殴られたり繋がれたりして満身創痍の中、体が悲鳴を上げそうだった。
それでもその痛みすら全部堪えて、俺も自由な方の右手を伸ばす。
ぐっとないこの肩を抱き寄せると、あいつはピンクの髪を俺の首元に擦り付けた。
声にならない微かな呻きが聞こえるようで、俺もその髪に頬を寄せる。
「ないこ…」
軋むような体の痛みに耐えながら、肩を抱いた右手に力をこめる。
「ごめん」
ポツリとした俺の呟きに、ないこは答えなかった。
ただスンと鼻を鳴らして俺の腰にしがみつくように腕を回す。
注射器を刺してないこを担ぎ上げたときとは違う。
あの時冷えていく感触しかなかったないこが、今はちゃんと温かくて心臓が脈を打っている。
その事実に、今頃になって微かに手が震えてきた気がした。
緊迫感で押し込まれていた感情が一気に溢れ出す。
しばらくそうして抱き合っていたけれど、やがてないこが先に身を起こした。
俺の右手をぎゅっと握る。
「まろ、早くここから出よう」
目線は左手の手錠に移された。
「鍵は?」と続けて尋ねられる。
「分からん。そこのそいつは持ってないみたいやった」
蹴り飛ばされて意識を失っている男を顎で指し示すと、ないこは困ったように眉を寄せた。
「そっか、どうしよう…あの人が持ってるのか、それとも…」
「手首切り落として逃げる?」
微かに笑って言うと、ないこは冷たい目でこちらを見つめ返す。
「つまんない、その冗談」と一蹴された。
…半分くらい本気で言っていたとは言えずに俺はそのまま言葉を飲み込んだ。
そんな俺を気にする素振りもなく、ないこは「よいしょっと」と立ち上がる。
手錠を一応確認したようだけど、引っ張って引きちぎれるようなものでもないし、鍵がないならどうしようもない。
思考を巡らせているらしいピンクの瞳が空を見据える。そんなないこに、俺はもう一度呼びかけた。
「ないこ、それとは別に…まだここから出られへん理由がある」
何?と言外に問う目が、俺に先を促す。
「あにきたち4人のうちの誰か1人に…マイクロチップ型の爆弾がしかけられとるらしい。それを解除せんことにはここから出られへん」
「爆弾…」
ないこの目の色が一瞬で変わったのが分かった。
驚きと共にその目に宿ったのは、あの黒マスクへの確かな嫌悪感。
「…ハッタリ……ではないか、さすがに」
最初にその話を聞かされたときの俺と、同じような反応をする。
だけどすぐに黒マスクがハッタリなんてしかけるタイプの人間じゃないと考えを改めたらしく、言い直した。
「だったらその『4人のうちの1人』っていうのも本当だと思う。実は2人とか3人に仕込んでましたっていうのはないんじゃないかな」
「…そうなん?」
考えなかったわけじゃないその最悪のケースの可能性。だけどないこは自信を持って大きく頷く。
「うん。あの人はそういう嘘はつかない。あの人の中での正しさとか正義とかがあって…それに則った上で人が苦しむ顔が見たいんだよ」
「…余計悪趣味やんか」
俺がそう悪態ついたときだった。
大きく開かれたままだった部屋の扉の向こうから、何人かの足音が聞こえてくる。
冷凍室を確認しに行っていた黒マスクが戻ってきたんだろう。
そう気づいてないこと思わず目を合わせたけれど、既に遅かった。
隠れるとか逃げるなんてヒマはあるわけもない。
本当なら自由に動けるないこだけでもそうできれば良かったけれど、こいつがそれを望むわけもなかった。
「…!」
足音が段々と大きくなり、やがてこの部屋の前で止まる。
扉が開いたままだったせいで、望むと望まないとに関わらずそこに黒マスクの姿を認めた。
「…ない…こ…」
驚きながらも、複雑な感情をこめて黒マスクがその名を呼ぶ。
垣間見られるのは、自分で殺せと命令したはずの…殺したいほど憎くて愛していた人間がまだ動いていることへの「感動」。
黒マスクが一歩一歩と、部屋の中へ入ってきた。
目を見開き、その瞳が慈しみと憎悪を込めて歪む。
「…動くな」
腰に据えていた銃を構えて、ないこがそう牽制した。
ピタリと一度歩みを止めた黒マスクがニヤと笑う。
「ないこ、そんな物騒なもん捨てな」
言いながら黒マスクは、自分も持っていた銃を構えた。
…ただし、銃口は俺に向けて。
「……っ」
ないこは苦々しい表情で唇を噛みしめる。
そこに畳みかけるように黒マスクは言葉を継いだ。
「マイクロチップの爆弾の話聞いてない? お前の仲間が吹っ飛ぶよ。そんでそこのそいつも脳みそ撃ち抜かれて死ぬよ? 俺の銃の腕、忘れたわけじゃないよな?」
「……」
「ないこ」
促すように重ねて名前を呼ばれ、ないこははぁ、と大きくため息を漏らした。
「…こうやって、まろのことも脅してたんだ」
侮蔑を含んだようなないこの言葉に、黒マスクはさして気にした様子もなく笑った。
「優秀とは言い難かったけどね。お前殺すのに何日もかかるし。しかも殺してないし」
「……」
ないこの無言の怒りが増幅したのが分かった。
黒マスクを睨み据えて、嫌悪感を露わにした目を向ける。
「いいね、その目」
自分に向けられたはずのそれを、黒マスクはまるで他人事のように受け入れた。
「そうやって俺への感情でいっぱいになったまま死ねばいいよ」
狂気に歪んだ笑みを目に浮かべ、黒マスクはそれから不意に表情を戻す。
固い無表情に変わったかと思うと、もう一度ないこを低い声で呼んだ。
「ないこ」
憎しみに満ちた…それでもどこか甘い不可思議な声。
「銃を捨てろ」
続いた言葉に、ないこは一度顔を伏せた。
ふーっと長い息を吐いた後、ゆっくりと床に銃を置く。
そしてそのまま、自分の手の届かないところへと足で蹴り滑らせた。
「うん、いいこ」
満足そうに頷いた黒マスクは、もう一歩こちらに歩み寄る。
そして一歩。また更に一歩…。
その銃口は俺の頭に照準を合わせたままだった。
銃を捨てたないこは、両手を顔の高さまで挙げて無抵抗のポーズを取る。
その従順さに、黒マスクはもう一度笑った。
とても嬉しそうに。
「さて、どっちから殺そうか」
子どもがおもちゃを選ぶときのような弾んだ声音。
楽しそうな黒マスクの高笑いが、その部屋に響いた。
コメント
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桃さんの6発発言の後のキスは照れ隠しですね…言葉じゃ表せられないくらいきゅんきゅんしてます、!! 元恋人さんの桃さんへの執着がすごいです…甘い声で話してるのに言ってることはかなり重たいところが印象に残りすぎてしまって… !!😖 銃の向かい先はずっと青さんのままというのもまた嫉妬のようなものなのか任務を遂行していなかったことへののとなのか…考え深いです✨✨
まっじで神作ですね!!ありがとうございます!!✨ 青さんと桃さんさいかいだぁぁ!! それと共に黒マスクと桃さんも再会してしまったが... この状況に黒マスクの手下一蹴した時みたいに水さん出てきたら凄すぎるッ 続き楽しみに待ってます!!
もう、嬉しすぎますぅぅぅ!!! 桃さんと青さんの感動の再開、涙腺崩壊すぎます…!! 本気で殴るのかなって思ったらキスとか『もう付き合えよッッ』って思いましたね…、( 元恋人さん屑すぎて処刑したいです…、((殴 こっから反撃開始ですね…!! 次回も楽しみにしておきます…!!