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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
「…それしかないわけ?」
沈黙を破ったのは、ないこのそんな言葉だった。
吐息混じりの声を漏らし、黒マスクをまっすぐ見つめる。
その目に宿っていたのは嫌悪感と侮蔑と…少しばかりの哀れみ。
「『あの時』は自分が死のうとした。そんで今回は俺を殺そうとした。今はまろと俺? 誰かを殺すことでしか自分の持て余した感情を昇華できない?」
両手を挙げた態勢のまま、ないこはそう言う。
銃を持つ黒マスクの手が少しだけ震えた気がした。
それが怒りのせいだったのか悔しさのせいだったのかは分からない。
「俺はそんな風に考えられない」
黒マスクから一瞬たりとも目を離さず、ないこの低い声が続ける。
「俺は、まろと2人で生きる道を選ぶよ」
曇りも濁りもない声を放ったないこを、黒マスクはじとりと凝視した。
しばし無言で見つめ返した後、ふっと笑みを漏らす。
それから冷めた言葉を寄越した。
「『どうやって』?」
未だ手錠が外れず動くことすらできない俺を顎で指し示す。
揶揄するような笑みを目元に浮かべて。
「…決めた。お前から殺してやるよ」
そう言いながら、黒マスクは銃の先を正面に向けた。
カチャリと音を立てて構え直されたそれが、まっすぐにないこを捉える。
銃口が自分から逸らされたはずなのに、こちらに向けられていた時よりも俺の鼓動がドクリと大きく跳ね上がったのが分かった。
「待てよ! ないこは傷1つつけんと殺したいって言うとったやろお前…! 撃ったら傷どころとちゃうやろ!」
思わず声を上げた俺に、黒マスクはチラリと横目で一瞥を投げる。
「驚いた。そんな声出るんだ、お前」
くくっと喉の奥を鳴らすようにして笑った。
「ずっとスカした感じで飄々としてたからさぁ…そっちが本性か」
「…っ」
「ますますないこから殺したくなった」
カチリと撃鉄を起こす音がする。
汗が頬を伝い、床に落ちたのが分かった。
「さすがに脳天を撃ち抜くのだけはやめとくよ。きれいな顔が台無しになるし」
言いながら、黒マスクはうっとりと恍惚に満ちた笑みを浮かべる。
「心臓を撃ち抜いても、一発では死ねないかもな」
そんな不愉快な言葉を耳にしながら、俺は手首ごと手錠をグッと引っ張った。
だけどそれくらいの力でどうにかなるなら今頃ここにはいない。
びくともしないそれに舌打ちを鳴らし、唇を噛みしめる。
「苦しかったらごめんな、ないこ」
はは、と笑って続ける黒マスクの人差し指が、トリガーにかけ直された。
「…ないこっ」
微動だにせず、ないこは黒マスクを見つめ返していた。枯れそうな大声でその名を叫んだ、俺の方を振り返りもせず。
「…まろ」
まっすぐ黒マスクを見据えたまま、ないこの少し掠れた声だけは俺に向けられる。
「ごめんな」
「…っ何言って…!」
今さっき、2人で生きるって言ったばかりだろう。
何でそんな諦めたみたいなセリフを吐くんだ。
謝られるようなことなんてされてない。
むしろ自分が責められて当然だと思ってる。
…そうだ、まだ俺はお前への罪を償えてもいないのに。
グッともう一度引っ張った手錠も、ガシャンと音を立てるだけで相変わらずビクともしない。
こんなことならさっき本当に手首を切り落としておけば良かった。
そうしたらせめて、今お前を抱きしめながら一緒に死ねたかもしれないのに。
「ないこ!!」
俺がもう一度声の限りに叫んだ…その時だった。
「うわぁぁぁっ!」
いくつもの叫び声が、部屋の外から聞こえてくる。
一番扉側に近かった黒マスクも驚いたようにそちらを振り返った。
それは、ほんの一瞬のことだった。
油断と言うには刹那すぎる。
だけどそのわずかな隙を逃さず、ないこが床を蹴った方が早かった。
「!」
黒マスクに飛びかかり、銃を持つ手ごと長い脚で蹴りつける。
「っ」
手からすり抜けた銃を、ないこは床に落ちる寸前でバッと拾い上げた。
形勢を逆転するようにその銃をそのまま黒マスクに向ける。
「…っ!」
カチャリと音を立てた銃口に、黒マスクの顔色がサッと変わったのが分かった。
それと同時に外での騒ぎ声はだんだんと近くなる。
足音と共に大きくなるいくつもの悲鳴。
やがて、黒マスクの部下の一人が部屋に飛び込むようにして姿を見せた。
空中を掻くようにこちらに手を伸ばすその様子は、まるで助けを請うようだった。
顔は青ざめ、瞳は苦痛と絶望に見開かれている。
「た、助け…」
何かを伝えようとしたその男の背中が、後ろから何者かにズシャリと音を立てて斬りつけられた。
途端に血飛沫が舞う。
崩れ落ちるように男が前方に倒れこんだせいで、その向こう側…部屋の外の廊下まで視界が拓けた。
「!」
そこに現れたのは、舞った血よりも赤い「真紅」。
俺とないこが同時に目を瞠る。
だけど先に声を上げたのはないこの方だった。
「りうら…!」
「遅くなってごめん」
今自分が斬ったばかりの人間を乗り越えながら、りうらはゆっくりと室内に入ってくる。
ブンと音を立てて刀を振り、ここに来るまでに何人斬ったのか分からない血を払った。
「ないくん、そのままその人、動かないように見張ってて」
黒マスクに銃を突きつけたないこに、りうらはそう指示をする。
蹴られた手が痛むのか、黒マスクは右手を抑えながら眉を寄せていた。
悔しさすら滲んだその顔に至近距離で銃を突きつけたまま、ないこは小さく頷く。
悠然とりうらは室内を進む。
ここに来るまでに見えた敵は全て斬ったのか、すぐに応援が来る気配はなかった。
廊下の向こうはさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っている。
コツコツと厚底ブーツの音を鳴らし、俺の前までやって来た。
中途半端な態勢のままの俺に、ポケットから取り出した何かを見せる。
「…それ…」
「鍵。どいつが持ってるか分かんないから片っ端から斬っちゃった」
小さく笑みを浮かべてから、りうらは俺に繋がれた手錠を一瞥した。
手にした鍵は一つではなく、いくつもが束になっている。
どれが俺の手錠の鍵なのかは見た目では分からない。
りうらがまずそのうちの一つをはめてみたけれど、回って解錠されることはなかった。
そして小さく首を竦め、次の鍵に入れ替える。
そうしている間にも、りうらはまるで世間話でもするかのような口調で話を続けた。
「ほとけっちがさ、まろに盗聴器仕込んでたんだよ」
「…は?」
盗聴器? もしかして、あの玄関でのやり取りの時だろうか。
全然気付いていなかった事実に、俺の口から気の抜けたような声が漏れ出た。
「あにきが受信器を持ってたから、病院で全部聞いてた。まろが何でこんなことしたのかも、ないくんが裏切り者なんかじゃなかったことも。…それとそこの人の目的が何なのかも」
2つ目の鍵も、差し込んでも回らない。
次、そしてまた次と試していく間もりうらは話を続けた。
「受信器を託されて、聞きながらここに来た。だから手錠の鍵が必要なことは分かってたから寄り道しちゃって、時間かかっちゃった。ごめん」
りうらの穏やかな声に、俺は首を左右に振った。
「それと、しょうちゃん目が覚めたよ」
「え…!」
「ホントに!?」
俺の声とないこの大きな声が重なる。
それにクスリと笑みを漏らし、りうらは頷いてみせる。
「一緒に行くって言うのをあにきが必死で抑え込んでる。あんな怪我して来れるわけないのにね」
意識不明の重体にまで陥っていて、こんな短時間で目を覚ましたことだけでも奇跡だ。
はぁっと安堵の息が漏れる。
そんな俺に構わず、りうらはもう何本目か分からない鍵を差し込んだ。
なかなか合う気配のないそれに、苛立ち一つすら見せないのはさすがだと思う。
涼しい顔のまま「作業」を続ける。
「それとまろ、これ見て」
言いながら、りうらは自分の首を指さした。
そこには仰々しく包帯が巻かれている。
この前りうらが怪我をしたのは腹だったから、首に包帯は巻かれていなかったはずだ。
「りうらだったよ、マイクロチップの爆弾埋められたの」
トントンと、りうらは自分の首の後ろ辺りを指し示す。
「盗聴器でその話聞いてから、あにきがすぐに対処してくれた。…爆弾しこまれてたのがりうらで良かったよ。ほとけっちだったら病院にいなかったからすぐに取り出せなかったし」
そこまで言い終えた頃、手錠がカチンと音を立てた。
鍵があき、開いた手錠の隙間から左手が解放される。
「まろ」
自由になった左手に、支えるように右手を添えた。
麻痺しきった感覚が元に戻るにはどれくらいかかるだろう。
そんなことを漠然と思う俺に、りうらは呼びかけながら腰に差していたものを俺の前に突き出した。
「向こうの部屋にあったよ。まろのでしょ?」
目線を落とすと、りうらが手にしていたのは俺のブラスターとスマホだった。
受け取ろうと右手を伸ばした俺の目を、りうらは至近距離でじっと見据えた。
「…まろ…ありがと」
俺の右手にブラスターとスマホを乗せ、それからその手をぎゅっと握る。
「もう、独りで戦わなくていいよ」
続けたりうらの言葉は清々しいくらいに爽やかで、血生臭いこの場所には不似合にも思えた。
そんな声が耳に届いた瞬間、ぶわ、と奥底の感情が溢れ出しそうだった。
胸から気管を伝って吐露しそうな思いを押し殺し、眉間に力をこめる。
「泣かないでよ」
「…泣いてへんわ」
手錠から解放されたことで、俺は緊張感から放たれたようにその場に尻をついた。
うなだれるように座りこむ俺に、りうらはクスと笑みをもらす。
そしてそれから刀を持ち直しながら、後ろを振り返った。
「ないくんここ頼んでいい? りうら、ほとけっち迎えに行くよ」
きっとほとけは今も、どこかで時間稼ぎと称して黒マスクの部下たちの目を撹乱しているんだろう。
黒マスクに銃を向けた態勢のまま、ないこはそんなりうらの言葉に大きく頷いた。
「…ここ片付けたら、全部爆破する。ほとけっちと離脱できたら連絡ちょうだい」
「了解」
短く答えてりうらは再び歩き出そうとした。
だけど一歩踏み出そうとしたところで、「そうだ」と何かを思い出したようにもう一度俺を振り返る。
床に座ったままの俺に、少しかがんで視線を絡ませた。
「まろ、あにきから伝言」
言いながら、りうらは小さく笑みを零す。
「『往復ビンタはやっぱり俺の手が痛そうやからナシ。その代わり5時間は説教したるから家帰ったら正座して待っとれ』だって」
下手くそな関西弁を真似て言ったりうらの言葉に、俺は俯きがちだった顔をゆるりと上げる。
りうらは小さく首を傾げて「往復ビンタって何」と苦笑いを浮かべていた。
「…さぁ」
あの夜、あにきと話した内容が鮮やかに脳裏に蘇ってくる。
それでもそれを濁してりうらに曖昧に返したけれど、あいつは正確な答えなんて期待していなかったのか一つ頷いただけで再び立ち上がった。
「じゃあね、後でまろのスマホに連絡する」
短くそう言って部屋を出て行こうとするりうら。
ロングコートの裾を翻して出口へ向かう途中、すれ違い様に黒マスクが「おい」と声をかけた。
「逃げれると思ってんの? ここに俺の部下がどれだけいると思ってる? お前ら4人が無事に逃げるなんて不可能なんだよ」
ないこに銃を向けられたままでも、尚そう言葉を吐き捨てる黒マスク。
その隣に差し掛かった時、りうらはピタリと歩みを止めた。
そしてそれから、ゆっくりと振り向いた。
紅い瞳が、俺たち仲間に向けられるものと同じとは思えない冷たい光を放つ。
「それ全部斬ればいいんでしょ? 簡単じゃん」
唇に浮かんだ笑みは妖艶で、本当にうちのチームの最年少で弟分とは思えない。
「あぁでもりうら、家に帰るヒマなくて組織本部の刀を借りてきたから、自分のじゃない武器はやっぱり扱いが難しくて」
黒マスクの目をじっと見つめて微笑む。
「慣れない武器だから一撃では切り捨てられないかも」
ここに来るまでにどれほどの血を吸ったのだろう。そのくすんだ光を放つ刀身をちらつかせながら、りうらは続けた。
「あんたの部下、苦しんだらごめんね?」
「…! っ…」
盗聴器で聞いていたんだろう。
さっき黒マスクがないこに告げた言葉をなぞるように言う。
息を飲んで怒りに満ちた目を向ける黒マスクの視線を、それでも何でもないことのようにサラリと受け流した。
「じゃあまろ、ないくん、また後で」
そう言って、りうらは軽快に地面を蹴って走り出す。
ついこの前大怪我をしたばかりだというのにあの回復力は若さ故だろうか。
頭の中で妙に感心しながら、俺は力を振り絞るようにしてゆっくりと立ち上がった。
全身が悲鳴を上げるように軋むけれど、構ってなどいられない。
部屋には、元通り黒マスクと俺たち2人だけになった。
銃を向けたまま、ないこは深く呼吸をする。
息を整えるように吸い、それから覚悟を決めるように細く長く吐き出した。
「…っちっ」
このままでは状況を打破できないと、黒マスクはそう思ったんだろう。
ないこの視野からは見えにくい位置で、後ろ手にズボンのポケットを探った。
「ないこ!」
思わず俺が叫ぶのと、黒マスクがポケットから何かを取り出すのが同時だった。
それは小型のスイッチ。
恐らくどこかに仕掛けた爆弾の起爆装置だろう。
もしかしたらこの部屋の…ないこが今立っている、まさにすぐそこにあるのかもしれない。
それを視認するや否や、ないこはトリガーを引いた。
黒マスクがスイッチを押すよりも早く、飛び出した弾丸がその手を掠める。
「!!…っ」
ピッと、黒マスクの手の甲から血が細く吹いた。それと同時に起爆スイッチがぽとりと床に落とされる。
「いい加減、観念してよ。もうどうしたって無駄なことくらい分かるだろ」
もう一度銃を構え直し撃鉄を起こしながら、ないこは黒マスクにそう呼びかけた。
それでもあいつは往生際悪く、落ちたスイッチに手を伸ばそうとする。
クルリと手の中でブラスターを回して構え、俺は、右手で躊躇なくトリガーを引いた。
「!」
バシュと音を立てて放たれたレーザーが、今度は黒マスクの手を貫く。
「…っ、ぅ…!」
声にならない悲鳴。撃たれた右手を抑えながら、黒マスクは思わずと言った様子で前かがみになりながら耐えた。
血がボタボタと落ちる。
赤黒い染みを床に作っていくそれに、ないこはピクリとも眉を動かさなかった。
「尊敬してたよ、最初は」
静かにないこはそう口火を切った。
歯を食いしばり痛みに耐える黒マスクは、中腰に近い態勢からないこの顔を見上げる。
こめかみから伝う汗は、顎を滑り落ちて血と一緒に床の染みとなり滲んでいく。
「技術を教えてくれたのも感謝してる。周りに好かれるカリスマ性も本物だと思ってる」
間違った道だとは言え、それでもこれだけ何十人…いや何百人の人間を動かすことができるんだ。
この男が人を惹きつける何かを持ち合わせていることは事実なんだろう。
でも、とないこは続けた。
「それでもこれは間違ってる。そうさせたのが俺だってことも分かってる」
だから、自分で決着を着ける。
ないこはそう続くはずの言葉を飲み込んだようだった。
代わりに「…まろ」と前を見据えたまま俺を呼んだ。
「ブラスター、貸して」
え、と目を瞠った俺に、ないこはそのまま右手を差し出した。
意味が分からずに戸惑いながらも、そこに自分が手にしていた武器を乗せてやる。
それを左手に持っていた銃と入れ替え、ないこは俺のブラスターを構えた。
さっきまで使っていた銃は代わりにこちらに寄越す。
「…ごめん」
ないこの低い声が、再び黒マスクに向けられた。
黒マスクの目は大きく見開かれ、ただないこを睨むように見上げる。
それでもまだこの世の何よりも愛しい物を見つめるように、矛盾した感情を乗せて。
「結局あんたのこと、『一度も好きになれなかった』よ」
ないこの発した言葉に、黒マスクの目が絶望に歪むのを見た。
煽りのようで懺悔のようで…そんな不思議な感覚をもたらすないこのセリフは、恐らくどちらも本心だったに違いない。
『あれでも結構ドライなとこあるんやで? 自分に益のない人間はばっさり切り捨てれるし』
いつだったか、ないこのことを甘すぎると評した俺に言ったあにきの言葉を思い出す。
俺が胸の内でそんなことを描いた次の瞬間、ないこが手にしたブラスターが眩いレーザーの光を放った。
コメント
2件
赤さんの登場の仕方がかっこよすぎますぅ!!! 主人公みたいな登場の仕方でしたねッ!! 桃さんもそーとう元恋人さんに恨みを持っていたみたいですね…! もう『ザクッ』とやれる桃さん尊敬しますね… 今回展開多くてびっくりしていますw 続き楽しみですぅ〜^ ̳> ·̫ < ̳^
赤くん来たー✨ 青くんめっちゃ心配((( 黒くん優し、、、多分話を最初聞いてて傷とかわかったから説教なんだと思いたい((((((( 桃くん凄、、、、、あんなバッサリやるなんて めっちゃ面白かったです♪続き楽しみに待ってます♪