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「……たくや」
電話越しのかすれた声を聞いた瞬間、タクヤは嫌な予感がして上着を引っ掴んだ。
楽屋での仕事を終え、急いでNAOYAのマンションに向かう。鍵を開けて寝室に入ると、ベッドの上の小さな膨らみが、苦しそうに浅い呼吸を繰り返していた。
「直弥、大丈夫か?」
おでこに手をかざすと、ハッとするほど熱い。冷やすシートを貼り直し、スポーツドリンクをグラスに注いで枕元に置くと、NAOYAが薄っすらと目を開けた。熱のせいで潤んだ瞳が、じっとタクヤを見つめてくる。
「タクヤ……来てくれたの」
「来ろって電話してきたの自分だろ。ほら、水分摂れ」
体を起こすのを手伝い、ゆっくり飲み物を飲ませると、NAOYAはグラスを置くやいなや、タクヤの服の袖口をキュッと掴んできた。
「どこ行くの……?」
「ゼリーと冷えピタの予備、キッチンから取ってくるだけ」
「やだ、行かないで。ここにいて……」
普段のワンエンのNAOYAなら、体調が悪くても強がって「一人で大丈夫」と言いそうなものだ。だが、高熱で弱りきっている今は、隠していた甘えん坊な素顔が隠しきれなくなっている。
タクヤはため息をひとつ吐くと、ベッドのフチに腰を下ろし、NAOYAの手をギュッと握り返した。
「行かないよ。ここにいるから、安心して寝ろ」
「ほんと……?」
「嘘ついてどうすんだよ。ほら、横になれ」
頭をなでてやると、NAOYAは安心したようにホッと息をつき、タクヤの手を両手で抱え込むようにして胸元に引き寄せた。
「タクヤの手、冷たくて気持ちいい……」
「お前が熱すぎるんだよ。早く治せ」
言葉とは裏腹に、タクヤは空いている方の手でポンポンと優しく弟の背中を叩き続ける。規則的なリズムと兄の温もりに包まれて、NAOYAのまぶたが次第に重くなっていく。
「……タクヤ、ありがと」
「いいから黙って寝ろ」
小さく口尖らせながらも、嬉しそうに寝息を立て始めた弟の顔を見つめ、タクヤは「熱のせいにして甘えてくるとか、ずるいんだよ」と、聞こえないくらいの声で呟いて微笑んだ。
コメント
1件
第1話読み終えた!もうね、これ、めっちゃ好きなやつだわ。普段は強がってる弟が熱でぼんやりしてる時だけ素直に甘えてくるとか、ずるすぎるだろ・・・。タクヤの「行かないよ」って優しさと「いいから黙って寝ろ」のツンデレ感のバランスが完璧すぎる。高熱で潤んだ瞳の描写とか、二人の手の温度対比とか、細かいとこまで丁寧で解像度高い。えみさんのこういう日常の隙間の温かさ描くの、本当に上手いな。続きが気になる…!