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寝てる時にフラッシュバックが起きたせいだろうか
頭が割れるほど痛い
嫌な記憶は本能で忘れると聞いていたが
あの日のせいで思い出すなんて最悪だ
まだあの男の捕食するような目が脳裏にこびりついている
それまで自分はケーキだということも忘れていた
あの日の夜、若井の言いつけを守らず一人で出歩いた事は反省してる
若井には謝ったけど
「涼ちゃんが無事ならいいよ」と許してくれたがどうにも気まずい
しばらく若井の家に泊まっているのに
顔を合わせづらくてすぐに寝室へと籠ってしまう
守らなかった自分が悪いのに
シャワーを浴びながら
色々と悩んではため息をつく
そして
風呂場から出て着替えてリビングに行くと
そこには既に帰宅していた若井がいた
若井はテレビに夢中で僕に気づいていない
背を向けて物音を立てずに
リビングから出ようとしたその時
後ろから強く抱き締められた
「若井…?」
「涼ちゃん…最近俺のこと避けてない?」
心臓が跳ねる音がした
「…そんな事ないよ」
「嘘だ」
「嘘じゃない」
「もしかして俺がまだ怒ってると思ってる?」
あぁ、バレた
「…うん」
「あのね、俺は確かに涼ちゃんが勝手に一人で出歩いたことには怒ってるけど、なにより涼ちゃんが無事でいてくれたんだからそれでいいんだ」
だから、もう怒ってないし
一人で抱えこまないで
若井はそう言って
僕の首に巻かれた包帯を撫でる
「もう少し早く行けばよかったな」
俺が後悔してるのはそれだけかな
眉が下がり、じっと僕の首を見つめる
「若井ってほんと優しいね」
「いつもだろ」
クシャッと笑う若井のその笑顔が好き
「…若井がフォークだったらなぁ」
彼に聞こえないよう呟いた
「涼ちゃん…?」
抱きしめる手が緩んでく
「若井…どうしたの?」
「涼ちゃん、さっきなんて言った?」
もしかして聞こえてた…?
「ううん、何も言ってないよ」
「…だよな」
「とりあえず明日早いんだしもう寝よう」
「そうだな、涼ちゃんは先に寝ていいよ 俺は他にやることあるし」
「わかった、じゃあ おやすみ」
「おやすみ」
若井におやすみの挨拶をかわし
一人寝室へと向かった
涼ちゃんが寝室に行ったのを確認し
崩れ落ちるようソファに座り込む
「はぁー……くっそ…」
咄嗟に涼ちゃんの不安を消そうと抱きしめてしまったが
いつもより甘い匂いが俺の鼻を刺激してきて衝動を抑えるのに苦労した
顔にも出ないように
まぁでも仲直り?して
いつもの涼ちゃんに戻ったし解決かな
“若井がフォークだったらなぁ”
涼ちゃんが呟いたあの言葉が耳から離れない
俺がフォークだったら?
最近、フォークに襲われたばかりなのに
なぜあんなことが言えるんだ
もしも、本当に俺が衝動を抑えられずに涼ちゃんを襲ったらどうなったんだろう
涼ちゃんはそんな俺を受け入れてくれるのか?
じゃなきゃ、あの言葉が出ないだろう
それなら
いま、寝てる涼ちゃんを襲うか…?
俺はすぐさま涼ちゃんが眠る寝室へと向かう