もとぱです。
※2人は付き合ってないです。
side若井
夜が深まる中、元貴はベッドの上で静かに横になっていた。
時々弱々しい咳をして、ぎゅっと布団の縁を掴む。
熱が出ているため顔は火照り、不安そうに天井を見つめている。
きっと、普段の疲れが祟ったんだろう。
でも、彼が自分の気配を感じて、少しだけ安心しているように感じた、正直に言えば、そうならいいのになと思った。
「元貴、少しだけ我慢しててね。」
俺はそっとささやきながら、彼の額に手をあてる。
「んっ、…。」
冷たかったのか苦しそうな声を上げた。
熱は少し下がったみたいだけど、まだ油断できない。
そう思いながら、額をさすっていると、
元貴は、少しだけ照れたように顔を背けながらも、静かに目を開けて、俺の視線とぴたと合わせた。
「ねえ…っ、おでこ気持ちいの、もうちょっとだけ、こうしてて?」
元貴はそれだけで満足そうに微笑み、俺の手をそっと引き寄せ、離すまいと、おでこの上にのせて、両手でぎゅぅ、と握った。
彼の指先は、少しだけ震えていた。
暫くして元貴が、
「弱いとこ…、、見せちゃった…っごめんね…。」
震える声ポツポツと呟く。
大丈夫だというように、彼の頬を優しく撫でると、暖かくて、柔らかい涙が手に触れる。
「いいんだよ、いくらでも見せて。」
「俺にならね。」
「ばか、今日は特別だから…っ。」
元貴は照れくさそうにそう言う。
涙を拭い終えて、彼の頬からそっと手を離そうとすると、彼はぎゅっと俺の手を掴む。
俺はゆっくりと再び元貴の方に引き寄せられる手を、恋人繋ぎにした。
元貴は、少しだけ顔を赤らめながらも、そのまま俺の手を弱々しく握り返した。
小さくて、暖かくて、柔らかい手から トクトク と脈の振動が伝わってくる。
脈が伝わってくるその一瞬一瞬がひどく切なく感じられる。
このまま、ずっとこうしていられたらいいのに――。
だけど、彼の身から熱が消えてしまうと、この瞬間もなかったことのように、また慌ただしく時が進んでいくのだろう。
side???
静かな夜の中、二人はただ互いの手を握りながら、言葉にならない想いを交わした。
滉斗は、心の中でこう願った。
「いつか、この手を離さずにいられる日が来るのかな…。」
「このまま、ずっと、誰よりも近くにいられるのかな…。」
元貴の目は、まだ少しだけ潤んでいた。
彼もまた、心の奥底でそう願っていた。
「滉斗…。」
と元貴が弱々しくつぶやく。
滉斗は、その声を耳にして、静かに答えた。
「うん、ずっと、一緒だよ。」
二人の手は、そのまま静かに絡まりあい、夜の闇の中に溶けていった。