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〈1〉
あらゆる面で私たちの代わりに考えてくれる本、私たちの代わりに良心を担ってくれる牧師、私たちの代わりに判断してくれる医者がいるかぎり、自分の頭を使わなくても生きていける。
そうした他人の発言に頼ってばかりいると、やがて自分で考えることが面倒になり、ついには不可能になってしまう。人間は、自らの意思によって愚かであり続けるーードイツの哲学者、イマヌエル・カントの残した言葉だが、さすがは歴史に名を残す偉人だ。個々が空気を読み、目立った人物の意見に寄りかかる。今現在の社会、同調社会の虚を突いている。
否、これは今に始まったことではない。学校では学級委員の意見が。会議では上司の意見が。たとえそれが仲良しグループだったとしても、リーダー、つまりは絶対的権力者は必ず存在する。
同調社会はすなわち、絶対的権力者の指示に従い、反対派意見を潰す、同調圧力を丸めたものなのだろう。まるで多数決だ。最も手軽で手短く、そして最も残酷に討議を決着させる手段。
私の意見も、それによって潰された。
否、あれは願いだったのだろう。七夕祭りの短冊に。サンタクロースへの便箋に。初詣で、神様に願うように。私は多数派に、それを叶えてほしかった。
つまりこの物語は、私、飾理招(かざり まねく)が、願いを叶える物語だ。ーー最後になってしまったが、先筆したイマヌエル・カントの名言の、続きを言わせてもらおう。
Habe Mut, dich deines eigenen Verstandes zu bedienen。
自分の力で知る勇気を持て!