「っっ」
あれからしばらくして、晴明と凛太郎が来た。そして、飯綱の顔を見るや否や、晴明は飯綱を殴った。飯綱は、ただ大人しく殴られ、下を向いているだけだった
「なんで、あんな振り方したんや?!!!!!!!」
そして、凛太郎の胸ぐらを掴まれても、何も言わなかった
「…」
「なんか言ったらどうなんだよ?!」
「…」
「おい、…ちょっと悪い」
「ちょっと引っ込んどき…!こいつは今僕らと話してんねん…!」
「分かってる。だが、どけ」
「…」
流石に見かねた道満は止めに入った。飯綱は、このままでは友人関係まで失う事になる
「飯綱、さっき言ってたことくらいは話してやってもいいんじゃねえのか」
「…」
「黙ってても何にもならねぇぞ?」
「…別に…こうなって当然でしょ…?」
「飯綱…でもな、それでも、ちゃんと話せ」
「話すって…」
「さっき話してくれたことで良いんじゃねぇのか?」
「…同情してもらえと?」
「違う。凛太郎…だっけか。姉が泣いてりゃあ心配するだろうし、アレだって荊棘といた時間はずっとお前より長いんだ。…お前だって、暗が泣いてたら助けるだろ」
全くもって飯綱に響かない。恐らく右から左に話が抜けているのだろう
「おい」
そろそろ、頭に来た
「飯綱!!!!!話を…聞けっっっっっっっ!」
スパァァァァァン
乾いた音が鳴り響いた。飯綱も、初めて道満に殴られたからか、今までピクリともしなかった表情が驚きに染まっていた。
初めて、手をあげた。あげないように、してきた。それでも、こうでもしないと恐らく飯綱は話を聞かない
「目ぇ覚めたか?」
「…」
「…はぁ。ったく頑固になりやがって…」
一回飯綱を放し、凛太郎達に向き合った
「…悪い。今は話が通じねえ」
「…いつも、あんな感じになるんですか?」
「…そもそも、人間関係悩む奴じゃないからな」
飯綱は、一線を引く割にコミュニケーションが上手い。明を毛嫌いしているが、うまく付き合ってると思う。暗も、なんだかんだ1番荒れてたが、1番最初に心を開いたのは飯綱だった。誠ともたまに世間話に花を咲かせていた。他の構成員とも隔てなく関わっていた。対して道満は、友人がいない。朱雀はよくてパートナー、晴明はライバルであって友達ではないのだ。なので、全くもって友人関係で悩む飯綱の気持ちなんてさっぱりだし、恋愛もさっぱりだ
「あの、ちょっとだけ話してきて良いですか?」
「…なにもかわらねぇとおもうけど」
「それでも、いいです」
「荊棘姉ちゃん泣かした罪は重いでな」
「好きにしろ」
「飯綱くん」
「…」
先ほどとは打って変わり笑顔で話しかける凛太郎。むしろ怖い
「…あんなぁ…まあいいや。飯綱くん、前荊棘姉ちゃんに時計貰わんかった?」
「…これか」
「なんや、つけとるやないか」
「…」
「あんなぁ、飯綱くん。どうせ知らんと思うから言うたるけど…贈る物によっては意味があるんや」
「意味…」
「時計を贈る意味はーーーーーーーーーーーー 」
「…え、」
「ま、それを知って後は君がどないするかや」
知らなかった。そんな意味があったとは。しかし、かなり大胆だな…
「若いってすげぇな…」
人知れずそう呟いていた道満だった
「飯綱くん、大丈夫だよ!!!!!もしなにかあっても、みんなで力を合わせればなんとかなるよ!!!!!」
「…そっか…」
「飯綱くん?!」
いきなり寝転がる飯綱。しばらく目を閉じていると、見事な跳ね起きをきめ、笑顔を見せた
「ありがとな。楽になった」
「苦しめやバカ中」
「うん。逃げるつもりはない。それだけのこともしたし」
そういうと、道満の方へ歩いてきた
「明日休みもらっていいですか」
「…おう」
「ありゃ告んな」
「え?!」
「んなことあるわけ…」
「告ってこなかったら万札やるよ」
「え〜万と言わず億くださいよ〜」
「いいぞ。でも、告ってきたらお前らのボスに請求すっからな?」
「ええですよ!!」
「ちょっと凛太郎君〜!lそれ僕が怒られる奴〜!」
人知れず、かなりの大金がかけられた賭けが始まった
翌日
「…ごめん」
「飯綱くん…!////」
飯綱は、迷っていた。でかい家だなーと思い歩いていた。そして、ふぇなどという声に顔をあげてしまったために、荊棘の着替えを見てしまった。敷地内で、塀でしっかり囲まれている。完全に飯綱が悪かった。見合いの時の気まずさより、男として、人間としてやってはいけない行為ともとれることをした飯綱は、地面に躊躇なく頭を擦り付けた。参考:金をパクった事が道満にバレた朱雀。最早これほど完成された土下座はないだろう
「腹でもなんでも切りますね…」
「いや、そんなことせえへんでええから!!」
「いや…」
「…なんでこんなとこにおるん?」
「迷った」
「…窓からはいりぃ」
「でも、」
「晴明さんに用があるんでしょう?ええよ。案内したる」
「あ、えっと…用があるのは…荊棘さんにで…」
「うち?」
「そういえば、時計もらったお返ししてなかったなと、思いまして」
「いや…お返しなんていらんよ…」
「いえ。そう言うわけにも行きません。小物ですが」
「…!なんや、つけてくれとるんやね」
「…ええ」
「…開けてもええの?」
「はい」
そこには、荊棘が買ったものとは色違いのものが入っていた。飯綱のものが赤であるなら、荊棘のものは青だ
「新橋色、って色らしいです」
「っありがとう…。でも、こんな色あったかな…?」
「頑張りました」
暗が。あの後、飯綱によって何十件という時計売場を連れ回されていた。ただ、それ自体暗にとっては問題なかった。しかし、その後、なんとなく見ていた時計を飯綱が買うと言い出したのだ。そこまでしてもらう必要はないと30分ちかく遠慮し続けた。そちらの方が暗的には堪えたのか今日は部屋でゆっくり寝ている。まあ、帰ってきたのが午前3時だったのだ。そして現在午前8時
「あの…荊棘さん。改めて、先日は失礼しました」
「あ、いや…うちこそ、無理言ってごめんなぁ…」
「いえ。全部俺が悪いので」
「そんなことあらへんけど… 」
「そういえば、話は変わりますが、時計を贈る意味とかご存知ですか?」
「えっっ//////////」
わかりやすい。どうやら知っているらしい
「えっと…別に無理強いしたいわけやのうて…!」
「それが、俺の答えです」
「え…。この、時計…」
「そういうことだと取ってもらって構いません」
「えっっっ…いや、なんで急に…」
「…俺は、貴方といるには汚れすぎてるんです。なので、俺といない方が幸せになれると思ったんです。でも…昨日凛太郎から腕時計の意味を聞いて…。それで、その…」
耳が真っ赤である。荊棘はもう首まで真っ赤だが
「…えっと、それで、その…俺と、付き合ってほしい…です」
「〜〜?!」
「あ…見合いまでしたのにそこからはやっぱりダメですか」
「いや…!そっちじゃなくて…」
「俺の都合です」
「飯綱くんの…?」
「言っておきますが、俺はメチャクチャ敵が多いです。恐らく、危険に晒してしまうかも知れません 」
「う、うちは…それでも、飯綱くんのこと大好きやで…?」
「あ、はい…ありがとうございます。それでですね。ちゃんと貴方を守れるっていう…自信が欲しいんです。なので、三年間くらい…長いですかね?」
「何十年でも待つよ…!」
「…かっこ悪いですね…俺…」
「え、そんなつもりじゃ…」
「…えっと、それで、その…数年後の未来で、俺と結婚してください」
「〜っっっっっ!!!…ウチは、未来で、君と同じ時間を生きたい」
「へっっっっ…//////////」
お互い真っ赤である
「えっと、その、…よろしく…ね。…荊棘…ちゃん」
「…ふぁぁ…」
「荊棘ちゃん?!」
気絶する荊棘。そしてなぜ気絶したのかわからない飯綱。とりあえず
「っっっっ誰かーーーーーー!!!!!」
大声で叫んだ
「何事だい…って、なにがあったの」
「えっと…」
「飯綱くん?なんで…」
「…こ、」
「こ?」
「婚約、させていただき、ました…」
「…ん?」
安倍晴明。人生で初めて、脳がショートするという現象を体験した
「おう。お帰り」
「ただいま…戻りました」
「…晴明から連絡あったんだが…」
「あ、婚約、という形で…まあ、はい」
「…告った?」
「はい…」
「…ご祝儀いくら欲しい」
「いや…そんな大金じゃなければ…」
じゃあ、…5000万くらいか。億じゃねえし、セーフ。子煩悩レベルMAXな道満だった
「…家族に報告してやれよ?」
「あー2週間後に行きます。正式に。メールはもうしてあります」
「そう…暗とかにも報告してやれ。昨日…今日も頑張ってたみてぇだしな」
「そうですね」
こうして、知人に婚約の旨を伝えた。暗は、結婚に必要な費用や心構え、デートプランまで乗った
『飯綱くん用新婚ガイドブック』全4巻をもらった。マジでいつ作った。明は、まあ、連絡してくれれば病院関係全部タダにしてくれるらしい。そこは金をかけよう。朱雀はいいとこでご飯が食べたいそう。3年後だけど。ご祝儀の代わりに3年間月々5万で訓練につきあってくれる事になった
凛太郎と晴明からは翌日に告るとかどんな神経してんだ的な事が書かれたメール(要約:暗)がきていた。すんごい怒ってた。まあ、そっか
「飯綱くん!お待たせ」
「荊棘ちゃん。いいよ、今来たとこだし。…どこ行く?」
2人は、遊園地にデートに来ていた
「…とりあえずまずはジェットコースターやな…!」
「了解。…並んでるからチュロスとか買って来れば?」
「何味がええ?」
「…何がいいと思う?」
「せやな…シナモンにするか」
「ん」
「シナモン食べたことある?」
「砂糖みたいなもんでしょ?」
絶対にわかっていない
「…待ってて!食べさせたる!!!!!」
そう意気込んでチュロスを買いに行く荊棘だった。飯綱は、ただ幸せそうに走る荊棘の背中を見ていた。いや
おまけ 請求書と子煩悩
「ん?」
道満の携帯に、晴明から電話がかかってきた
「はい、何のようで?」
『これ、何の請求…?』
晴明の手元には、0の数がおかしい請求書がきていた
「お前んとこの凛太郎とちょっとな。告らなかった一億やるって話になって」
『どんな話してんだよ』
「で、見事告って婚約まで結んできたんでその請求」
『…』
「ま、払わなくていいけどな」
『え…?』
「お、払うか?」
『いや…君から選択肢出るんだと思って』
「別に…飯綱の結婚費用にでも当てようかと思って。ほら、家とか防犯しっかりさせねーと馬鹿な烏が金盗みに行くかも知れねぇしな」
『…こんな大金受け取るかな?』
「だからこっそり給料増やしてくんだよ。あいつは足し算引き算できねえから。増えた事になんてきづかなねえよ」
『…』
計算高い道満。いや、子煩悩なだけか
「てか、つめてぇな。せっかく晴れて最難関レベルの恋を叶えた部下に対して」
『いや、家の防犯とかそこらへんしっかりしてあげようとは思ったけど…この分だと僕がやろうとしてる事全部道満がやりそうで案がないの』
「ひでぇ上司。考えてやれよ」
『…やりすぎにも注意だろ』
「知るか。こちとら飯綱の母親に孫見せるって決めてんだ」
『ちょっと待って初耳なんだけど?!』
「話してねぇからな」
外堀もすでに埋め終わっているようだった。いや、告ってまだ2週間だよ?
「切るぞ。仕事が多いんでね」
『…何してんの』
「さあな〜じゃ」
『あ、ちょっとど』
晴明が何か言い切る前に電話を切った道満は、本に目を落とした。そして恐らくお互いの家にいるであろう2人を思い浮かべながら、優雅に紅茶を口に運んだ。本の題名は『身内が結婚したらやる事50選』であった
完結…!しばらくようはじネタ続きますが…なんかチーム大親友(三馬鹿)マフィアパロもかいてみるか…?今回も登場してましたが、メインで。で、そういや烏さんと荊棘さんって面識あるんだな〜ということで…どんなのがいいんだろう。あ、『秦中家居候の烏with学園長』みたいな基本ギャグに走るか…ま、まだテスト期間なんでなんども言いますが、今後主がなんの音沙汰もなく1週間以上更新してなかったらテストで赤点取って補習➕反省ってことです。復帰は未定で。
まあ、テストの結果は早くて来週でしょうし…ははははははは!!!!!!!
数学できる人優しくしてください
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