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片付けが終わり、ひと息ついたころ――
「実はさ…こっそり持ってきてたんだよな」
ひまなつが少し得意げにバッグから取り出したのは、レトロなパッケージの人生ゲームだった。
「おぉー! なつかしっ」
「まじで? 人生ゲーム!?」
「これ持ってくるとか、センスいいな、なつ」
反応は上々。テーブルに広げると、一同は懐かしそうな笑みを浮かべたが――
「人生ゲーム……?」
みことだけは、首をかしげながらボードに目をキラキラと輝かせていた。
「やったことないの?」とひまなつが尋ねると、みことは小さく頷く。
「うん……はじめて。これ、すごい……車がある……! えっ、子どももいるの? お給料も……えっ、家買うの? 結婚も……!?」
想像以上に興奮しているみことの様子に、一同は思わず吹き出した。
「お前、反応が小学生」
「かわいすぎるだろ……」と、すちが呆れつつも頬が緩む。
「じゃあ、みことは初プレイ記念ってことで、一番手にしようよ!」とこさめが提案し、
「せっかくだし、お酒も飲みながらやろーぜ」とらんがグラスを配り始めた。
それぞれの手元にはカクテルや梅酒、ノンアルも混じりながら、わいわいとコマを進めていく6人。
「えっ!? 子どもが3人も乗っちゃった……!?」
「おいおい、税金で破産した……」
「なんで俺ばっか借金生活なんだよ~!」
笑い声と歓声が絶えず響く部屋の中、
みことは何度も笑い、驚き、みんなと過ごす”人生”を楽しんでいた。
みことの番が回ってきて、ルーレットを回すと――
「……おっ、結婚マスだ!」
「え、け、結婚……!?」
みことは目を丸くしてカードを見つめる。
「おめでとうみこと! 昔、結婚相手を適当にカード作ってカスタムしてたんだよな。相手はランダムで選んでいいよ!」
ひまなつがカードを差し出すと、みことは恐る恐る1枚を引いた。
「……名前は、あおい、さん……?」
「は?」
その瞬間、すちの表情が曇る。
「浮気……?」と低く呟いたすちに、場の空気が一瞬静まった。
「え、ち、違っ……これ、ゲームだから……っ」
みことが慌てて言い訳をするも、すちはじっとみことを見つめたまま。
「俺以外と結婚するなんて、みこと……俺のこと捨てるの……?」
わざとらしく落ち込んだ様子で肩を落とし、ゲームボードからそっと離れようとするすち。
「すち、待って!! 違うよ!これ、遊びでっ……!遊びの人生で……!」
必死に弁明するみことに、すちが不意に顔を近づけて微笑んだ。
「……冗談だよ、みこと。そんな必死になるなんて、かわいい」
みことの頬が一気に真っ赤になる。
「も、もう……」
目を潤ませながらそっとうつむいた。
その様子を見ていたこさめがすかさず、
「うわ〜〜〜〜!甘っ!甘すぎて虫歯できそ〜!」と茶化し、
「ほんと、やってらんねーわ」とらんがため息をつく。
ひまなつは「これがリア充か……」と小声でぼやき、
いるまは「俺らもあとで結婚マス止まろうぜ」とにやけ顔で呟き、ひまなつを赤面させた。
笑いと照れが入り混じった、あたたかい夜のゲームはまだまだ続いていた。
___
ゲームが終盤に差し掛かり、それぞれの人生もラストスパート。
「……最終資産、俺が一番ってことか」
らんが淡々とボードを見ながら言うと、周囲がどよめいた。
「さすがらんくん~! 頭も強運も完璧じゃん!」
こさめが拍手しながらぴょんぴょんと喜ぶ。
「……悔しい。あと少しで逆転できたのに……」
ひまなつがふくれっ面で2位のカードを見つめると、
「俺は3位か、まあまあだな」すちが苦笑しながらみことの腰に腕をまわす。
「……俺、5位……」
みことがしょんぼりとスコアを確認し、
「それより下がいるから安心しろって」と、いるまが肩をぽんと叩く。
「……え!? 6位!? ウソ!? こさめ!?!?」
こさめが叫び声を上げ、みんなで爆笑。
「でもめっちゃ楽しかった~! みこちゃんの初・人生ゲームも見れたし♪」
こさめが笑顔で言うと、みこともほわっと微笑み、
「すっごく楽しかった……またやりたいな」とうなずいた。
するとこさめが勢いよく手を上げて、
「じゃあさ、次はタコパしようよ! たこ焼き!パーティー!」
「いいじゃん、それ!」とひまなつがすぐに乗り、
「すちの家にタコ焼き器あるから、すちよろしく~!」と満面の笑みで振る。
「おい、勝手に決めるなよ……まあ、別にいいけど……」
すちは苦笑いしつつも、どこか楽しげにうなずいた。
自然と場が和み、時計を見るとすでに夜も更けていた。
「そろそろ寝る準備するか」とらんが声をかけ、片付けるメンバー。
「ちょっとだけ外出て星がみたい!らんくんついてきて!」
「ちょっとだけな」
そう言ってらんとこさめは部屋を後にした。
「俺らは風呂行くから」といるまとひまなつは手を振り、それぞれ散っていった。