テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

Noside



「あ、キャプテン。ジェイデン寝ちゃった」



ベポの腕の中ですぅすぅと小さな寝息をたてて眠るジェイデンを見て、ローは目尻を僅かに下げて笑う。

ローはジェイデンのつけている狐の面を外してやる。



「空いてるベッドに寝かせておけ」

「アイアイ!」



ローはソファに座りながら、腕を組んで目を閉じた。



「あいつ、12年の間に色んな奴と繋がり持ってたな。ドレーク屋、ユースタス屋、麦わら屋……海軍ともつながりがありそうだ…」



己が別の場所にいる間に遠い存在になってしまったかとローは思ったのだが、ジェイデンは昔と変わらないところがあるようで安心する。



「キャプテン!」

「どうした」

「先ほど世界経済新聞が号外を出したんです。キャプテンはその時ヒューマンショップにいたからすぐに報告できなかったんですけど…」

「号外?」



ローがクルーから新聞を受け取る。



「なッ……!?」



そこには『火拳のエース』の公開処刑が確定したことが書かれていた。



「頭の痛ェニュースだ」



そう言ってローは目を閉じた。




次にローが目覚めた時、ジェイデンはすでに起きていて、ペンギンと話をしていた。



「キャプテン、おはよう」

「お、ロー! おはよう。ソファで寝てたけど、身体とか痛くないか?」

「あァ、大丈夫だ」



ローはゆっくり体を起こして頭をかく。



「夕飯、ペンギンと作ったからもうあるぞ」

「……いや、」

「ん?」

「…食べる」



ローはキッチンへと向かう。テーブルには確かに食事が用意されていた。スープを一口飲む。美味い。



「ローってよく飯サボるんだろ?」

「サボってねぇ、栄養調整食品なんかは口にしてる」

「……俺がこの船にいる間は絶対にそういうの許さねぇからな。おやつに食うならまだしもそれを主食にすることは絶対認めない」



まるで母親のようなことを言い出したジェイデンにローはふっと息を吐く。そういえば、こいつは昔から面倒見はよかったなと思い出す。



「ジェディ、食べ終わったら足の包帯を巻き直す」

「ん、わかった。ありがとな、ロー」



ジェイデンが屈託のない笑みを浮かべてローに礼を言う。その顔を見てまたローは彼が変わっていないことに安堵するのだった。



「なぁロー、包帯変える前に風呂入った方がいいよな?」

「あ? ……まァ、そうだな」



夕食を食べ終えて片付けをしている最中、ジェイデンがそんなことを聞いてきた。

怪我をした足を見ると血はほとんど止まっていたし、化膿している様子もない。



「俺が先に風呂入っても大丈夫か?」



念のために確認してくるジェイデンに、ローは何も言わずにただ首を縦に振った。するとジェイデンは「客なのに悪いな」なんて言う。



「あ、着替えとかどうすればいい? 俺の着替え、全部シャボンディのホテルに置いてきちゃって、今これしかねぇんだけど…」



そう言ってジェイデンは自分の服を見下ろす。普通のパーカーに、ジーンズ。それとジェイデンが持っている鞄。中身は財布、救急セット、青いリボンタイなどなど…。着替え類は一切なかった。



「うちのクルーが着てるつなぎでもいいか?」

「全然いいよ」

「じゃあ今持ってくるから風呂入ってろ」



そうしてジェイデンはローの言葉通り風呂場へと行った。

風呂でジェイデンは、傷にあまり触らないように慎重に洗っていく。シャワーを浴びると少し染みたが我慢できないほどではなかった。そして、頭と体を洗い終えたところで、脱衣所の方から声がかかった。

ローの声だ。



「着替え手伝う」

「マジで? ありがとう、助かる」



普段なら一人で出来ると言いそうなものだが、さすがに怪我をしている今は誰かの手を借りたいと思っていたのだ。だから素直にジェイデンは感謝を述べた。

扉を開けると、そこにいたのはもちろんローである。彼は手に持っていたタオルと替えの下着とつなぎを渡してくる。

生まれたままの姿であることが少し恥ずかしいジェイデンだったが、ここで変な態度をとってしまえば余計に意識してしまう気がしたから気にしないふりをしてそれらを受け取ってローに手伝ってもらいながら着替える。



「包帯変えるからここ座れ」

「はーい」



言われるままにジェイデンは椅子に座って足をローの前に差し出す。消毒液を浸したガーゼで丁寧に拭かれてから新しい包帯を巻かれる。その間、特に会話はなかった。

しかしそれが気まずい沈黙ではなく心地よい静寂だと感じるから不思議だ。



「次腕」

「ん」



左腕にも同じように処置をされる。

全ての手当が終わると、ローは立ち上がってジェイデンに手を差し出す。



「はは、王子様みたいだな」

「それはお前だろ」

「もうレドリック王国で俺のことを覚えてる奴なんかいないだろ」

「どうだか」



ジェイデンは笑いながら立ち上がるとローに手を引かれて脱衣所を出る。そのまま二人はキッチンへ行ってお茶をいれた。温かい紅茶を飲みながら、ソファに深く腰掛ける。

そこでやっと一息ついたような気持ちになった。

ふぅ……っとジェイデンが息をつくと、ローがその隣に座る。



「今日はいろんなことがありすぎて疲れたよ…」

「あぁ。麦わら屋一味のイカレぶりには正直驚いた」

「ルフィは昔っから俺以上に無鉄砲で、冒険好きなんだよな。でも、仲間想いで友達思いだから。撃たれたのが俺とハチじゃなかったらもう少し違ったかもしれないな」



紅茶を飲みながら苦笑するジェイデンの横顔をローは無言のまま見つめていた。その視線に気づいてジェイデンはローを見る。目が合う。



「どうした?」



ローは何も言わずにジェイデンの顔を見続ける。

ジェイデンはその様子に首を傾げながら、ローの頬に触れる。彼の目元にはうっすらと隈ができていて、ジェイデンはそっと指先でそこに触れる。



「眠れなかったのか?」

「……別にそういうわけじゃない」

「ならいいけど」

「お前こそ眠そうな顔してる」

「そうか? ならもう寝るかな」



そう言ってジェイデンが立ち上がる。ローはジェイデンの歩行を補佐するように一緒に立ち上がった。



「そんなにしてくれなくてもベッドまで歩くことくらいはできるぞ」



ジェイデンの言葉にローは答えない。ただ黙ってジェイデンについて行くだけだ。ジェイデンもローの手を払うことはせず、へにゃりと眉を下げて笑った。

クルーたちが使っている共用の寝室に入り、ジェイデンをベッドに降ろす。



「おやすみ」

「ん、おやすみロー」



ジェイデンがローの頭を撫でてからベッドの中に潜り込んだ。すぐに寝息が聞こえる。それを確認してから、ローは自身の部屋へと戻った。

loading

この作品はいかがでしたか?

72

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚