テラーノベル
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翌朝。
教室の窓際の席に座っていても、黒板の文字がまるで頭に入らなかった。
――傘の下で、肩が触れそうなくらい近かった距離。
――濡れないように守るみたいに傘を傾けてくれた横顔。
その光景が頭の中で何度も繰り返されて、胸が熱くなる。
「……悠真さん」
小さく名前を口にしただけで、心臓が跳ねる。
“兄の親友”で、“妹ちゃん”としか呼ばれない私。
わかっているのに――。
気づけば窓に映る自分の顔が赤くなっていて、咲は慌てて頬を押さえた。
――もう、この気持ち、隠しきれない。
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