テラーノベル
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「……どう?」
「うーん…」
数時間後、俺が書いた歌詞がほぼ完成し、勇斗が一番乗りでそれを見ていた。
「変…かな」
「…ちょっと歌ってみてくれない?」
「え、」
「ダメ?」
「…いいよ」
勇斗のリクエストに答えて、スマホに録音したギターの音源を出した。
「…音源、かけるね」
「うん」
〜〜〜♪
「…〜〜〜っ」
…少し声が掠れる。
…少し緊張してる。
歌いながら、勇斗との出来事を思い返していた。
書いた歌詞の向こうにある【あなた】の姿は確かに勇斗で、けど今の二人の姿とは少し違っている。
俺から見た勇斗。
勇斗から見た俺。
交差するはずのなかった想い。
「〜〜〜っ」
歌声に熱が込められる。
もしも、勇斗が俺から離れてしまっていたら。
それがこの気持ちに気付いた後だったとしたら…
こんなに辛いことはないだろう。
それでも彼の残した匂いや温もりを俺は探すんだろう…
俺の想いを映し、そして隠すようにカーテンが揺れている。
一人きりの部屋で、日が落ちる瞬間の物言わぬ風の匂いを感じて…
揺れる想い。
勇斗と居た頃のいつかの俺が叫ぶ。
そばにいて欲しかった…ただそれだけ。
「〜〜〜…」
「……」
俺が歌い終わると、少しの静寂が訪れる。
音源も、終わっていた。
「…どうだった?」
「…良かった」
「ほんとに?」
「うん…凄い良かった」
「…ありがと」
なんとなく沈黙する。
「…あのさ」
「うん?」
「この、あなたって…誰かのこと考えて書いたの?」
「……」
「…ごめん、変なこと聞いてる」
「謝んなくていいよ」
「……」
また少し沈黙が流れた。
「俺は……勇斗を想像しながら書いたんだよ」
「え…」
「最初は違った。過去の恋愛…とか、完全なる想像で書いてた。でも、今書き直して足したところは、全部勇斗の事だよ」
「…まじ」
「まじ」
「……俺は仁人から離れないよ」
「……」
「置いていったりしない」
「…うん」
「…そっか。でもさ、これちゃんと読み返すと恋人を忘れられない歌詞にも読めるし進行形の歌詞にも読めるよね」
「…ああ」
「うん。凄いいいよ」
「…ありがと」
好きな人に褒められるのが嬉しい。
どんな相手に褒められるよりも、きっと特別だろう。
「今度、ギター弾きながらちゃんともう1回歌うね」
「俺が一番最初に聴いていい?」
「もちろん、いいよ」
「やったっ」
君の知らない俺の恋物語は、きっとこの先もうないだろう。
君だけが知る俺との恋のうたを聴かせて。
俺が知らない君の物語をこれからゆっくり教えてくれ。
「本当に俺でいいの…?」
「…何言ってんの。俺は勇斗がいいんだよ」
「…うん」
俺の恋の終着点がコイツで良かった。
失わなくて良かった。
安心したように笑った顔を見て、心からそう思う。
手を握るとすぐに握り返され、その距離感が愛おしい。
あなたと紡ぐ恋のうた。
もう二度と、悲恋にはしないから。
fin
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