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#ゲーム部屋
(株)姫神V
52
586
#曲パロ
玲奈
148
翌朝。
警視庁・捜査一課の会議室には、
昨夜までの資料が並べられていた。
被害者――三十二歳、会社員。
死因は毒物による中毒死と見られている。
だが、毒物の正体はまだ特定できていない。
青い液体からは植物由来と考えられる成分が
検出されたものの、既存の毒物とは一致しなかった。
そして、被害者の周辺には不自然な点がいくつか残っている。
「被害者の交友関係、洗い直しました」
小宮が資料を配った。
「仕事関係が中心です。特に亡くなる一週間前から、何度か連絡を取っていた人物が一人います」
「誰だ?」
黒崎が資料に目を落とす。
「同じ会社の元社員です。名前は、秋山裕介。三年前に退職しています」
橘が眉を上げた。
「三年前って……被害者が昔の公園に行ってた時期と近くないか?」
「はい」
小宮が頷く。
「ただ、二人が当時から親しかったという証拠はありません」
「最近になって急に連絡を取り始めたってことか」
「そうです」
神代は資料をめくった。
秋山裕介(あきやま ゆうすけ)。
三十五歳。
現在は個人で運送関係の仕事をしている。
住所も勤務先も判明している。
「会いに行く」
神代が立ち上がる。
「俺と橘で話を聞く。小宮は過去三年間の二人の接点を調べてくれ」
「はい」
「白瀬は?」
「私は鑑識に戻ります。あの青い液体、もう少し調べたいので」
白瀬が資料をまとめながら答えた。
「何か分かりそうなのか?」
「まだ断定はできません。ただ……」
白瀬は少しだけ言葉を選んだ。
「普通の植物から、そのまま出るものではないと思います」
「加工されている?」
「その可能性があります」
神代は頷いた。
「頼む」
「はい」
黒崎が時計を見る。
「神代」
「はい」
「今回は橘と二人で行け」
「分かっています」
「本当に分かっているか?」
「……」
神代が黙る。
橘が吹き出した。
「黒崎さん、朝からそこ確認するんですか」
「確認する必要がある」
「ですよね」
神代は小さく息を吐いた。
「単独では動きません」
「ならいい」
黒崎はそれ以上何も言わなかった。
だが、神代には分かっていた。
黒崎が自分の行動を気にしているのは、
昨日の件だけではない。
自分が無茶をすることを、
以前から見抜かれている。
「神代」
橘が肩を叩いた。
「行こうぜ」
「ああ」
二人は会議室を出た。
その背中を、黒崎はしばらく見送っていた。
――今回だけは、余計なことをしないでくれ。
そんな言葉を飲み込むように。
秋山裕介の自宅は、
都内の古い集合住宅にあった。
「失礼します」
橘が警察手帳を見せる。
秋山は三十代半ばほどの男だった。
突然の訪問に驚いた様子を見せたが、二人を部屋へ通した。
「三日前に亡くなった男性について、お聞きしたいことがあります」
「……三日前?」
「はい。あなたは彼と連絡を取っていましたよね」
秋山の表情がわずかに変わった。
神代はそれを見逃さなかった。
「何かありましたか?」
「……いや」
秋山は目を逸らす。
「ただ、少し相談を受けていただけです」
「どんな相談です?」
「仕事のことです」
「それだけですか?」
「……」
沈黙。
部屋の時計の音だけが聞こえた。
神代は急かさなかった。
やがて秋山が口を開く。
「……あいつ、最近変だったんです」
「変?」
「何かを怖がっていた」
橘がメモを取る。
「何を怖がっていたんです?」
「分かりません」
「本人は何か言っていませんでしたか?」
「一度だけ」
秋山は俯いた。
「『昔のことを掘り返された』って」
神代の視線が上がる。
「昔のこと?」
「はい」
「三年前のことですか?」
「……たぶん」
「何があったんです?」
「それは、俺にも分からない」
秋山は首を横に振った。
「ただ、あいつは最後にこう言ってました」
「何と?」
「もう関わらないほうがいいって」
神代は黙って秋山を見る。
「誰に対してです?」
「……分かりません」
今度の沈黙は、先ほどより長かった。
橘が神代を見る。
神代も何も言わない。
やがて秋山が、小さく息を吐いた。
「すみません。これ以上は、本当に何も……」
「分かりました」
神代は立ち上がった。
部屋を出る直前、ふと振り返る。
「秋山さん」
「はい?」
「亡くなった彼から、何か預かっていませんか?」
「……」
一瞬。
秋山の目が泳いだ。
「ありません」
神代はそれ以上追及しなかった。
「失礼しました」
二人は部屋を出る。
廊下に出たところで、橘が口を開いた。
「……今の、絶対何かあるよな」
「俺もそう思う」
「聞かないのか?」
「今は聞いても話さない」
「じゃあ?」
「別の角度から調べる」
神代はエレベーターのボタンを押した。
「人間は、隠したいことほど直接聞かれると隠す」
「なるほどねぇ」
橘が感心したように笑う。
「じゃあ俺、神代の隠し事も別角度から調べようかな」
「やめろ」
「即答かよ」
エレベーターの扉が開く。
二人が乗り込んだ、そのときだった。
神代の携帯が鳴った。
「はい、神代です」
相手は小宮だった。
『神代さん。今、いいですか?』
「どうした?」
『さっき、別の事件の資料を見つけました』
「別の事件?」
『はい』
小宮の声が少しだけ硬い。
『三日前です』
神代の足が止まった。
「……三日前?」
『はい。市内で一人の男性が倒れて搬送されています』
「死亡したのか?」
『いえ。まだ生きています』
橘の表情も変わる。
『ただ、病院側から出ている情報では、原因不明の中毒症状です』
「症状は?」
『意識障害と呼吸状態の悪化。それと――』
小宮が一度言葉を止めた。
『血液検査で、通常では見られない成分が出ています』
「どこの病院だ?」
『今、送ります』
「頼む」
通話が切れた。
橘が神代を見る。
「……偶然か?」
「まだ分からない」
神代は携帯を握り直した。
「だが、調べる価値はある」
二人は病院へ向かった。
その頃。
鑑識室では、白瀬が一人、顕微鏡を覗いていた。
青い液体の成分を、別の角度から確認している。
「植物……じゃない?」
小さく呟く。
採取した成分の一部には、
植物組織とは異なる特徴があった。
しかし、
それだけでは何なのかまでは分からない。
白瀬は記録を残し、検体を慎重に戻した。
ふと窓の外を見る。
夜の街には、まだ人の姿が多い。
何も変わらない日常。
それなのに。
その日常のどこかで、また一人が倒れている。
白瀬は静かに息を吐いた。
「……同じものなのかな」
答えは、まだ出ていない。
病院。
神代と橘は、患者の担当医から話を聞いていた。
「患者さんは三日前、自宅近くで倒れているところを発見されました」
「外傷は?」
「ありません」
「食事は?」
「それも調べています。ただ、食中毒としては症状が少し特殊です」
「毒物の可能性は?」
医師は少し迷った。
「可能性はあります」
神代の目が細くなる。
「血液検査に異常が出たと聞きました」
「はい」
「詳しく教えてください」
医師から渡された資料を見る。
そこに書かれていた成分名を見て、神代は黙った。
完全な一致ではない。
だが。
先日の青い液体から検出されたものと、近い特徴がある。
「……橘」
「ああ」
橘も資料を見る。
「これ、もしかして……」
「まだ決めつけるな」
神代は資料を閉じた。
「でも、同じ事件の可能性はある」
二人は顔を見合わせた。
まだ一件目の事件すら終わっていない。
それなのに。
もう一つの事件が、すぐ近くで動き始めていた。
そしてその患者は――
意識を取り戻していなかった。
コメント
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わあっ、第6章読み終えたよ〜!!📖✨ まだ一件目の事件すら終わってないのに、もう別の中毒事件が出てくるの、展開が一気に広がってドキドキしたよ…!😳💦 特に「昔のことを掘り返された」っていう秋山の言葉、めっちゃ気になる…何があったんだろう🤔💭 それにしても橘と神代の掛け合いが絶妙で、シリアスな場面でもほっこりしちゃった♡ 「神代の隠し事も別角度から調べようかな」のノリ、天才すぎるでしょ(笑) 続きが気になりすぎる…!次も絶対読むよ〜!!🌸🔥