「俺、先生が好きだ。」
なんでそんな事言うんだよ。
今の俺じゃお前の気持ちに応えらンねぇだろ。バカヤロウ。
_先生、俺、大人になったら迎えに来るからね_
「おーい、席つけー。ホームルーム始めるぞー」
「でさー笑」
「やばァ」
「うるせぇよ!」
太陽が眩しい朝。その眩しさに負けない賑やかさを持つ教室に、俺は毎日、足を踏み入れる。
「センセー、谷口がいませーん」
「は?谷口?どうせ遅刻だよ。気にすんな」
「ひどーい笑笑」
俺が勤めるこの学校は、男子校で、生徒の成績もそこそこ。
校則は緩く、教師も注意が甘々だ。
「それじゃあとは自習なー」
「やっべ、ギリセー?」
遅刻して教室に駆け込んできた、短髪の男。
コイツは、生徒にして、俺の、じきに恋人になる男だ。
「何がギリセー?だよ。全然アウトだっつーの。」
「えぇん。時計見てきたのにー!」
「多分お前ん家の時計壊れてる」
「はぁっ!?」
「どんまい谷口ー補習がんばれよー」
「慰めになってねぇつーの!」
…やっぱり、俺のタイプだ。
生徒でこんなことを考えてはいけなのだろが、考えるだけで俺は踏みとどまる。
そう、俺はゲイなのだ。
コイツとの出会いは…丁度春頃。
まだコイツが新入生の頃だった_
(あーやべ、疲れが…)
「…あっ」
ドサッ
「…は、危な…。大丈夫すか?」
よろけた俺を抱きとめて、そう声をかけたのが…アイツだった。
(う、わ。すげータイプ)
ほとんど一目惚れだった。
寝癖がおどる短髪に、少し焼けた肌、俺より大きな体、そして、心地の良い声_
一瞬で全てが愛おしくなった。
「あぁ、すまん…ついよろけてしまった…ありがとな」
「いえいえー、急に目の前で倒れるからさ、せんせ。」
「日頃の疲れが出たんだろうな…君は自分の席へ行きなさい、俺はもう大丈夫だから」
「はいっすー」
抱きとめたあとも、しっかり俺の肩を支えて話す優しさにもまたときめいてしまった。
「「あっ、えっ」」
「担任なの!?」
「生徒なの!?」
クラスが同じになるとは、夢にも思わなくて、互いに驚いたのが懐かしい。
その時の笑顔は_忘れない
それから、谷口とはよく話すようになった。
下の名前は、瑞葉。
女っぽいのであまり好きではないらしい。
姉が1人。両親は仕事で忙しくあまり帰ってこない。
寂しくはないか、と聞くと、もう慣れた、と大人な回答が帰ってきた。
成績もそこそこ。スポーツもできる。
俺とは正反対なやつだ。
そこが好きだけど。
「谷口、また喧嘩かよー」
「他校に喧嘩売られてさ…」
最近、谷口はよく怪我をして学校に来る。
話を聞けば、他校の生徒に喧嘩をふっかけられるらしい。
俺からしたら、あの美貌が傷つくのがなんとも言えん。
絆創膏もかわいらしいが…消えなくなったらどうするのかというとこだ。
「谷口、ちょっと」
「はーい」
「お前、最近他校と何かあったのか?」
「んー…あっちの逆恨みかな」
「…なんか分かるぞ。でもな、お前の体に支障が出るのが怖いんだ。気を付けてくれよ」
「わーってるって。いざとなれば、先生くるっしょ?」
「しょうもないのなら即座に帰るがな」
「ひでー」
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