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設楽理沙
#不倫
#離婚
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「明日はスーパーにも行かないと…」
テーブルを片付けながら呟いた時
「ぅ、わっ…!?」
突然聞こえたピアノ音にグラスを落としそうになる。
「なに…?」
―― セーフ…初日からグラスを割るなんてこと不吉だもの
グラスを抱えて聞いた私に
「母さんからだよ」
と俊介さんが自分のスマホをチラッと私に見せる。【母さん】そう表示された画面をタップした彼は、スピーカーで話すようだ。
「もしもし、俊介だよ」
という声を聞きながら、私はピアノの着信曲がベートーヴェンのピアノソナタ・熱情であることを少し不思議に思った。
『俊介、ちゃんとご飯食べた?』
「うん」
『梓さんは疲れていない?』
「うん、大丈夫だよ、母さん」
柔らかい声がスマホの向こうから聞こえる。何の用件かは分からないまま、なんとなく電話は終わった。
「今の…何の電話だった?」
「ああ、母さん、ちょっと過保護だけど悪い人じゃないから」
満面の笑みを向けられ、私が不安かもしれないと気遣わせたのかな、と思う。
「あ、うん。優しそうな人だよね。あの着信は初めて聞いて驚いたけど。お義母さんが好きな曲?」
「そう。母さんと僕が好きな曲」
「へぇ、知らなかった。クラシック音楽が好きなの?」
「そんな感じ」
あくびをしながら返事をした俊介さんを見ると、私にもあくびが移る。今朝は早起きだったからね。
あ……今度は、私のスマホが振動した。
さっきから、何度か友人たちからのメッセージを受信している。返信は明日でいいかな、と思いながらもスマホを手にすると
「えっ…お義母さんから…?」
メッセージを送ってきたのは、さっき俊介さんと話し終えたばかりのお義母さんだった。