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夜。
電気を消した部屋の中、布団にくるまった咲は天井をじっと見つめていた。
――ほんの一瞬、目が合っただけ。
でも、あのときの悠真さんの瞳が、まだ鮮明に浮かんでくる。
「……ありがとう」
たったひと言なのに、耳の奥で何度も反響していた。
胸の奥がざわついて、息を深く吸い込んでも落ち着かない。
何度寝返りを打っても、心臓の鼓動が強すぎて眠れそうになかった。
「どうしよう……」
誰にも聞かれないように、枕に顔を埋めて小さく呟く。
恋なんて知らないままでいいと思っていたのに。
今はもう、知らないふりなんてできなかった。