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朝、職場に着くとすぐにマネージャーから呼び出された。
___嫌な予感がする
「駒井さん、このリストに記憶ある?」
三枚綴りの発注リストだ、少し前にやった記憶がある。
「あ、はい、やりましたけど…」
「ここのところ、見て。タイプ3の物を30個で注文が来てるけど、一個しか送られてないみたいなの、そんな間違いした?」
「えっ!30個?」
その商品は今の時代に何故かまた売れ出したカセットテープレコーダーだった。30個ということは、6個入りの段ボールを5箱?リストの上部に私の字で書かれた荷物の口数は3箱だ、間違いない、一個しか入れてない。そもそもリストには1個と私が記入している。
「すみません!間違えてます、一個しか送っていません!!」
私は平謝りで頭を下げる。なんでこんな大きなミスをしてしまったんだろう?
「あー、そうだよね?これ、明後日からのキャンペーンに使われる商品だったみたいで先方はカンカンに怒ってるの。取り急ぎ在庫があったから至急送って。日時指定の配送便にすることを忘れないで」
「は、はい、すみません、すぐに!」
慌てて事務室から出ようとした。
「あとで、始末書ね。それから、スマホはロッカーにしまっておくように」
「は、はい、すみませんでした」
___え?翔馬さんとやり取りしてて間違えた?
スマホばかり気にしていたのがマネージャーにバレてる。スマホをロッカーに入れておかないといけないなんて、あ、でもそんなことより今はミスのフォローをしないと。
頭の中でいろんなことがグルグル回って、階段を踏み外しそうになる。
3階の倉庫へ急ぎ、型式と個数を再確認して荷札を出す。
「えっと、日時指定だ、日時指定のシールは?」
独り言が声に出る。
「はい、これどうぞ」
目の前に探していたシールが出された。その手の主を見たら、ニッと笑う篠宮由香理だった。
「ありがとう、助かる!」
「手伝うよ、ラジカセ30個って、重いし」
シールを貼って台車に積むまでを手伝ってくれた。出荷場まで届けて、配送業者に手渡し、日付を確認して完了。
「ありがとう、ホントに助かったよ」
「どういたしまして。でも珍しいね、駒井っちがミスするなんてさ」
「あ、はははっ、なんか焦ってたのかな?ヤバいよね?始末書だし」
駒井っち、なんて呼ばれたことに少々動揺する。
「駒井っちって、あんま目立たないけど仕事はしっかりやってるってイメージだったんだよね?実際、今まで始末書なんて、ほとんど書いてないでしょ?」
「うん、まぁ」
「やっぱり、あれ?気になる?スマホ」
小声で下から顔を覗き込まれて、ドキっとする。
「なんで?」
「わかるんだよねー、あれ、絶対子供が熱出してるから気になる…って感じじゃないもん。これでしょ?」
由香理は、親指を立てて見せた。
___男?
「違う違う違う!ちょっとトラブった友達から相談されてて、それでその…気になって」
「あ、そう?私はてっきり、いい人でもできたのかと思ったわ。最近、駒井っち、おしゃれしてるから」
「そ、そうかな?」
「うん、まぁ、ほどほどにね!マネージャーに目をつけられると後々面倒だから」
そこまで言うと、由香理は自分の持ち場へ帰って行った。一人になって、思いっきりため息をつく。
___なにやってるんだろ?私
「じゃあ、これ。ミスの原因とこれからの再発防止の対策も忘れずにね」
マネージャーが始末書を持ってやってきた。A4サイズのその用紙を見て、またため息が出た。