テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
二人の「息子」たちに監禁同然の夜を強要されながらも、リオは社会的な生活を捨てきれずにいた。
28歳。
本来なら働き盛りで、自由に恋をする権利があるはずの若さだ。
仕事中、ハイネックの襟で首元の「鎖」を隠し、痛みと屈辱をプロフェッショナルな仮面の下に押し殺して働くリオ。
そんな彼に、同僚の女性が歩み寄る。彼女は二人の若者のような暴力的な熱さを持たず、春の陽だまりのような穏やかさでリオの心を癒やした。
二人に支配される日常から逃げ出すように、リオは彼女との時間を積み重ねていく。
「リオさん、最近お疲れじゃないですか? よかったら、今度の日曜に駅前にできたカフェでも……」
彼女の控えめな誘いに、リオは心臓が跳ねるのを感じた。
首元で冷たく光るネックレスが、肌をチリリと焼くような感覚。
けれど、彼は抗いたい一心で、無理に笑顔を作った。
リ「……はい、ぜひ。僕も、ゆっくりお話ししたいと思っていました」
それは、サンウォンとアンシンに対する、リオなりの必死の反抗だった。
彼女と一緒にいる時だけは、自分は「二人のパパ」でも「飼い犬」でもなく、ただの一人の男になれる。
彼女と手を繋ぐ時の清廉なときめきは、あの部屋で繰り広げられる淫らな記憶を、束の間だけ洗い流してくれた。
「リオさんの手、少し震えてますね。……私でよかったら、いつでも頼ってください」
彼女が優しく微笑み、リオの手に自分の手を重ねる。
その暖かさに、リオは危うく涙をこぼしそうになった。
二人に内緒で、こっそりと育む小さな恋。
それは、リオにとって唯一の、暗闇の中に刺す光だった。
しかし、日曜のデートを終え、最寄り駅で彼女と別れた直後。
背筋が凍りつくような感覚に、リオは足を止めた。
サ「リオ、おかえり。……楽しかった?」
街灯の影から、サンウォンが音もなく現れた。
その隣には、見たこともないような冷酷な笑みを浮かべたアンシンが立っている。
リ「ふ、2人とも……。どうしてここに……」
ア「どうしてって、決まってるじゃない。パパがなかなか帰ってこないから、迎えに来たんだよ」
アンシンが歩み寄り、リオの首元に指を滑り込ませた。
ハイネックの襟を強引に引き下げると、あの銀色の鎖が露わになる。
ア「……いい匂いがするね、リオ。僕たちの知らない、女の匂い」
サンウォンがリオのスマホを奪い取り、絵里とのやり取りを画面に映し出した。
「『また明日も会いたい』……か。へえ、リオは僕たちにこんなに可愛がられてるのに、まだ外で『メス』を探す余裕があったんだ」
リ「違う……、彼女はただの同僚で……っ!」
サ「嘘つかなくていいよ、リオ」
サンウォンがリオのネックレスの鎖をぐいと手元に引き寄せた。
サ「あの動画、彼女に見せてあげようか? パパが僕たちの足元で、どんな顔して喘いでるか。……彼女、どんな顔するだろうね」
リ「やめて……それだけは、本当にお願いだ……っ!」
リオは、公共の場であることも忘れ、二人の前で膝をついた。
彼女にだけは、自分の汚れきった姿を知られたくない。
サ「わかってるなら、いい子にして。……さあ、帰ろう、リオ。裏切り者には、相応の『お仕置き』が必要だよね」
二人の腕に両脇から抱えられ、リオは引きずられるようにして、あの「檻」へと連れ戻されていく。
唯一の希望だった恋さえも、二人にとってはリオをさらに絶望させるための、格好の「餌」でしかなかった。
マンションの重いドアが閉まった瞬間、リオの「日常」は音を立てて崩れ去った。
リ「っ、離せ! サンウォン、アンシン……っ!」
ア「大人しくしてよ、パパ。せっかくのデートが台無しになっちゃうじゃないか」
アンシンが冷たく笑いながら、リオをリビングのソファに放り投げる。
サンウォンは無言でスマホを操作し、昼間、リオと彼女がカフェで微笑み合っていた時の隠し撮り写真を、大型テレビの画面いっぱいに映し出した。
ア「綺麗だね、この人。……でも、可哀想だ。リオが、僕たちの鎖に繋がれた犬だってことも知らずに、あんなに優しく笑いかけて」
リ「やめろ……彼女は、本当に関係ないんだ……っ!」
サ「関係なくないよ。パパが僕たちの『所有物』だってことを忘れて、浮気したんだから」
サンウォンがリオの首元の鎖を掴み、無理やりテレビの画面を見せつける。
サ「ほら、見て。この時、パパの服の下には僕たちのつけた痕がびっしり残ってた。……それを隠して彼女と手を繋ぐなんて、パパ、本当は僕たちよりずっと質が悪いんじゃない?」
リ「あ、ぁ……っ……」
リオは絶望に顔を歪めた。
清廉だと思っていた彼女との時間さえも、二人の言葉にかかれば、ただの「裏切り」と「不潔な隠し事」へと塗り替えられていく。
ア「……パパ、彼女を守りたいんでしょ?」
アンシンがリオの耳元で、毒を孕んだ甘い声で囁く。
ア「だったら、今ここで、彼女に『別れの電話』を入れてよ。……もし少しでも変なこと言ったら、その瞬間にさっきの動画、彼女のアドレスに送信しちゃうから」
リ「……っ、そんな……」
サ「早く。……それとも、彼女の目の前で僕たちに抱かれてる姿、見せたい?」
サンウォンが送信ボタンに指をかける。
リオは震える手でスマホを握りしめた。
スピーカーフォンに設定された通話が、絵里の明るい声を部屋に響かせる。
『あ、リオさん! さっきぶりですね。どうしました?』
隣でサンウォンが、リオの首の鎖をぐいと強く引く。
窒息しそうな苦しさの中。
リ「ごめん、もう君のこと嫌いなんだもう二度と何も連絡してこないでくれ、」
通話が切れると同時に、リオは崩れ落ちるように泣き崩れた。
自分の唯一の光を、自分自身の言葉で、最悪な形で汚してしまった。
ア「よく言えました、リオ。……これで、リオの居場所はここしかなくなったね」
アンシンがリオの涙を指先で拭い、そのまま彼の唇を奪う。
サンウォンはリオの服を無造作に引き裂き、冷たい鎖を手首に巻き付けた。
サ「お仕置きを始めよっか。……夜は、まだ始まったばっかりだよ」
外の世界との繋がりを自ら断ち切らされたリオは、もはや抵抗する気力もなく、ただ二人の愛という名の底なし沼へと沈んでいった。
鏡の中の自分は、鎖に繋がれたまま、もう二度と戻れない「普通の生活」に、音もなく別れを告げていた。