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みぃ
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『誰も覚えていない夜』
「最初の疑い」
【02:59:57】
中央ホール。
大きな円になるように、35人がそれぞれ距離を取って座っていた。
さっきまで聞こえていた小さな話し声も、今はほとんどない。
誰もが周りを見ている。
誰が怪しいのか。
誰が味方なのか。
そして――
誰が、人狼なのか。
ななもり。「……じゃあ、話し合いを始めよう。」
誰も返事をしない。
ななもり。「最初だから、何を話せばいいか分からないと思うけど……。」
ななもり。「まずは、このゲームについて分かっていることを整理しよう。」
ロゼ「はい。」
ばぁう「今分かってるのは、人狼が6人いるってこと。」
さとみ「それと、夜に人狼が一人を襲撃する。」
ものくろ「昼の投票で、一人が脱落する可能性がある。」
莉犬「役職は言わなくていい。」
るぅと「……そして、役職を偽ってもいい。」
その言葉に、何人かの表情が変わった。
ジェル「そこが一番厄介やな。」
しゆん「役職を言っても、本物かどうか分からない。」
あっと「つまり、何を言っても疑われる可能性があるってことか。」
ぷりっつ「そういうことですね。」
まぜ太「だからこそ、発言を見る。」
らいと「発言?」
まぜ太「誰が何を言ったか。」
まぜ太「誰が誰を庇ったか。」
まぜ太「逆に、誰が誰を疑ったか。」
まぜ太「そういうところから探すしかない。」
心音「……なるほど。」
あっきぃ「でも、初日だよ。」
まぜ太「だから何もない、って考えるのは危ない。」
あっきぃ「……。」
まぜ太「人狼だって、今この瞬間も俺たちと同じように話してる。」
その言葉に――
再び静寂が落ちた。
ちぐさ「……。」
らお「……ちぐ、大丈夫?」
ちぐさ「う、うん。」
らお「顔、固まってるぞ。」
ちぐさ「ちょっと緊張してるだけ。」
らお「そっか。」
らお「無理すんなよ。」
ちぐさ「……ありがとう。」
その会話を、少し離れたところから見ていた人物がいた。
ころん「……。」
ゆた「ころんさん?」
ころん「ん?」
ゆた「どうかしました?」
ころん「いや……。」
ころん「みんな、思ったより静かだなって。」
ゆた「まあ……怖いですからね。」
ころん「だよね。」
さとみ「じゃあさ。」
全員がさとみを見る。
さとみ「とりあえず、全員一回しゃべらないか?」
ジェル「一人ずつ?」
さとみ「そう。」
ロゼ「それなら、全員の最初の発言を聞けますね。」
ななもり。「いいと思う。」
ぷりっつ「じゃあ、順番決めます?」
ななもり。「うん。」
少し話し合い、順番が決まった。
まずは――
莉犬。
莉犬「えっと……。」
莉犬「正直、まだ何も分からない。」
莉犬「だから、今の段階で誰かを疑うつもりはないかな。」
莉犬「みんなの話を聞いてから考えたい。」
ぷりっつ「俺も似た感じですね。」
ぷりっつ「最初から決めつけるのは危ないと思います。」
るぅと「僕もです。」
るぅと「今は情報が少なすぎますから。」
ころん「僕も……かな。」
ころん「できるだけみんなの話を聞きたい。」
ちぐさ「俺もです。」
けちゃ「僕も!」
だいきり「僕も、今の段階では何とも言えません。」
てると「僕も……まだ分からないです。」
みかさ「……俺もです。」
メルト「僕も、同じです。」
らお「俺もかな。」
ゆた「僕もです。」
やなと「僕も、まだ何も分かりません。」
そあら「僕も……。」
パルオ「俺もです。」
一人ずつ答えていく。
けれど――
誰も決定的なことは言わない。
あっきぃ「……まあ、そうなるよね。」
まぜ太「全員同じようなこと言ってる。」
心音「初日ですから。」
らいと「じゃあ、次は?」
おさでい「少し踏み込んだ質問をしてみますか?」
ななもり。「そうだね。」
さとみ「じゃあ質問。」
さとみ「今、一番怪しいと思ってる人いる?」
一瞬で空気が変わった。
莉犬「……。」
るぅと「……。」
ころん「え?」
けちゃ「いきなりですか?」
さとみ「もちろん、理由も聞く。」
さとみ「別にその人が人狼って決めるわけじゃない。」
さとみ「ただ、今の時点でどう見えてるか知りたい。」
ジェル「なるほどな。」
ロゼ「面白い質問ですね。」
ばぁう「ただ、答える側も慎重になるな。」
しゆん「……。」
タケヤキ翔「まあ、話し合いなんやから言ってみてもええやろ。」
パルオ「俺は……。」
パルオが少し考える。
パルオ「まだ怪しい人はいません。」
タケヤキ翔「俺も。」
まぜ太「俺もまだいない。」
あっきぃ「……。」
心音「どうした?」
あっきぃ「いや。」
あっきぃ「俺は……少し気になる人ならいる。」
何人かがあっきぃを見る。
ころん「誰?」
あっきぃ「……まだ名前は出さない。」
ぷりっつ「え?」
あっきぃ「理由が弱すぎる。」
まぜ太「じゃあ、なんで言ったんだよ。」
あっきぃ「聞かれたから。」
ぷりっつ「それはそうやけど……。」
少しだけ空気が緩む。
けちゃ「なんだぁ……。」
だいきり「けちゃくん、まだ安心するのは早いですよ。」
けちゃ「え?」
だいきり「このゲームでは、何が起こるか分かりませんから。」
けちゃ「……。」
だいきり「大丈夫です。」
けちゃ「うん。」
ロゼ「では、俺からも一つ質問していいですか?」
ななもり。「もちろん。」
ロゼ「皆さんは――」
ロゼ「今、一番信頼できそうな人は誰ですか?」
今度は、別の意味で沈黙した。
心音「……信頼?」
ロゼ「うん。」
心音「そんなの……まだ分からないよ。」
ロゼ「そうだな。」
ロゼ「だからこそ、今の時点でどう感じているかです。」
みかさ「……。」
さとみ「俺は、みかさかな。」
みかさ「……え?」
さとみ「最初から一緒だったし。」
みかさ「……ありがとうございます。」
その瞬間。
みかさの表情が、ほんの少しだけ揺れた。
ころん「僕は……。」
ころんが周囲を見る。
ころん「ゆたかな。」
ゆた「えっ?」
ころん「最初から一緒にいたし、話しやすいから。」
ゆた「……ありがとうございます。」
ちぐさ「俺は、らお。」
らお「俺?」
ちぐさ「うん。」
らお「そりゃ嬉しいけど。」
ちぐさ「……。」
らお「俺も、ちぐのこと信頼してる。」
ちぐさ「……ありがとう。」
るぅと「僕は……。」
るぅとが少し考える。
るぅと「てるとくんと、メルトくんかな。」
てると「……!」
メルト「僕もです。」
るぅと「今、一緒にいるから。」
てると「……はい。」
ジェル「俺は……。」
ジェルが周囲を見る。
ジェル「まあ、まぜ太やな。」
まぜ太「俺?」
ジェル「一緒にいると色々話せるからな。」
まぜ太「……まあ、分かりますけど。」
あっきぃ「……。」
心音「……。」
二人の間には、妙な沈黙が残る。
ロゼ「なるほど。」
ロゼ「少しずつですが、人間関係が見えてきましたね。」
ななもり。「うん。」
ななもり。「でも――」
ななもり。「信頼できる人が、人狼じゃないとは限らない。」
全員「……。」
その一言で、また空気が重くなった。
そのとき。
モニターが突然点灯した。
全員「……!」
【残り時間 02:31:42】
そして、新しい文字が表示される。
『第一回・昼の話し合い』
『中間報告を開始します。』
ななもり。「中間報告……?」
『現在、投票対象として名前が挙がった人物ーー』
全員が息を呑む。
画面に、名前が表示される。
【ころん】
ころん「……え?」
ゆた「ころんさん……。」
ころん「僕?」
あっきぃ「……。」
まぜ太「誰か、師匠を疑ったのか?」
ロゼ「まだ分かりません。」
ころん「……。」
『理由ーー』
画面に続きが表示される。
【発言が少ないため』
ころん「…………。」
さとみ「それだけ?」
ジェル「それだけみたいやな。」
ころん「……。」
ゆた「ころんさん、大丈夫ですか?」
ころん「うん。」
ころん「……でも、そう見えたなら仕方ないよ。」
まぜ太「いや。」
まぜ太「それだけで疑うのは早すぎる。」
あっきぃ「俺もそう思う。」
ころん「……あっきぃ。」
あっきぃ「初日だよ。」
あっきぃ「発言が少ない人なんて、何人もいます。」
ぷりっつ「確かに。」
莉犬「そうだね。」
るぅと「ころちゃんだけじゃないです。」
ころん「……ありがとう。」
その会話を聞きながら――
一人だけ、黙ってモニターを見ていた。
にしき「……。」
はりま「どうした?」
にしき「別に。」
にしき「少し気になっただけ。」
はりま「何が?」
にしき「この報告。」
はりま「?」
にしき「誰が名前を出したのか、表示されていない。」
はりま「……あ。」
ロゼ「確かに。」
ななもり。「匿名で疑いを出せるってことか……。」
しゆん「それなら、もっと厄介だな。」
ジェル「誰が誰を疑ってるか分からん。」
心音「……。」
まぜ太「なるほど。」
まぜ太がモニターを見る。
まぜ太「じゃあ、この中には――」
まぜ太「自分の疑いを隠したい奴もいるってことか。」
誰も答えなかった。
【02:20:00】
時間だけが進んでいく。
35人の中で、まだ誰も投票先を決められていない。
それでも。
最初の疑いは、もう生まれてしまった。
ころん「……。」
ゆた「ころんさん。」
ころん「ん?」
ゆた「僕は……ころんさんを疑ってないですから。」
ころん「……うん。」
ころんは少しだけ笑う。
ころん「ありがとう、ゆた。」
そのすぐ後ろ。
ちぐさは二人を見ていた。
そして――
ほんの一瞬だけ、目を伏せた。
らお「ちぐ?」
ちぐさ「……え?」
らお「どうした?」
ちぐさ「なんでもないよ。」
らお「そっか。」
ちぐさ「うん。」
誰かが嘘をついている。
誰かが本当のことを言っている。
そして。
誰かは――
自分の正体を隠している。
35人の中で、
まだ一人も脱落していない。
けれど。
疑いだけは、確実に始まっていた。
――第3話「最初の疑い」終わり。
コメント
3件
第3話読み終わったよー! 最初の話し合いで少しずつ関係性が見えてきて、でも同時に誰も本当のこと言ってない感じがすごく伝わってきた😶 ころんが中間報告で名前挙がった時、ドキッとした…発言少ないってだけで疑われるの怖いよ💦 ちぐさの“なんでもないよ”が逆に何かありそうで気になる…次どうなるんだろう? みぃさんの心理描写じわじわ効いてて好きです🥀