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風間と仁がメインドックの通路を歩いていたとき、整備士長らしき中年の男の人物が整備用の巨大なプラットフォームの高所から設計図らしき書類を片手に持ち、拡声器をもう片方の手で握って整備士たちに力強い声で指示している声が響き渡った。「ケーブルはそこに繋げ!!冷却水の補充も忘れるなよ!右脚部の溶接はあと一時間で済ませろ!」
整備士たちは彼の指示に従い、手際よく動き回る。彼の指示する声は工具の音や機械の稼動音が響きあってる中でもハッきりと聞こえた。
「彼は?」
「そうだったな、紹介するよ」
すると風間は置いてあった拡声器を片手に、プラットフォームで指示する中年の男に呼びかけた。
「今井さーん!!」
すると、プラットフォームの上にいた男は風間の声に気づいたのか、こちらに振り向き大きく手を振った。それと同時にゆっくりとプラットフォームが降下し始めた。
「彼は今井幸平、元Gフォース技術仕官で、第二型メカゴジラ開発計画当初から携わってくれている。今はこの第二型メカゴジラの整備士長だよ」
プラットフォームが完全に降下し終わると、今井が降りて、こちらに歩み寄ってきた。
「久しぶりじゃないか風間!元気にしてたか?」
すると今井は被っていた作業用のヘルメットを外した。黒髪の刈上げの短髪に中年らしい皺、それに何とも男らしい風貌していた。すると今井は風間に近づくと、風間の肩を片手で軽く叩いた。上官の筈の風間にやけに馴れ馴れしく、しかもため口だった。
「えぇ、本当に久しぶりですね。私がいない間、メカゴジラの整備を進めてくれてありがとうございます」
「いいって事よ!むしろ光栄だね」
逆に風間は敬語で話しており、こちらに振り向く。
「ちなみに何だが、この若造は?」
すると今井は仁に指を指しながら言った。
「あぁ、紹介が遅れましたね、彼は核山仁、このメカゴジラの操縦士ですよ」
すると今井は驚いた表情をする。
「あんたがか!?あの元スーパーXⅢの英雄様ってのは?」
「英雄・・・?なんのことですか?」
「部隊内ではもっぱらの噂だぜ、地上の戦車部隊を救ってさらに怪獣も駆除したってな。俺達からしたら英雄だよ」
どうやら自分の命令無視の件が自衛隊内では英雄扱いされていたらしい。そのおかげで免職処分を受けた仁自身、少し複雑な感情でもあった。
「にしても、信じられないな。元エースパイロットととは聞いていたが、思っていた以上に若すぎやしないか?もっと年行ってると思ったが・・・。本当にこの若造が操縦士なのか?」
今井はやや怪訝そうに言った。すると今井は仁に近づくと両手で仁の両肩を掴む。
「仁だったな、本当に良いのか?お前はまだ若いしコイツに乗れば、死ぬリスクだって高いんだぞ?」
仁の顔を見つめながら話す今井、その仁を見つめる今井の表情は不安と、どこか幼さを感じさせるものだった。今井の目には仁の“若さ”が映っている。若さゆえの無謀さが今井の心配の種になってるのだろう。それと見つめる瞳はまるで、戦地向かう息子を思い浮かべたかのようだった。
「覚悟の上ですよ、それに私はあの時[[rb:一度死んでいますから 」
「どういうことだ?」
すると迷彩柄の戦闘服を着た一人の自衛隊員が風間に駆け寄ってくる、まるで焦っているかのようだった。その自衛隊員が風間の手前で一旦止まり敬礼する。
「どうした?」
風間が聞くと、自衛隊員は風間に近づき、手を口で隠し、風間の耳元でコソコソと何か話している。緊急の話なのだろうか?
「なんだと・・・。分かった。すぐに向かう」
風間は一瞬動揺したような表情を浮かべたが、すぐに冷静になりながらその自衛隊員に言った。
「すまない、緊急の案件が出来てしまってな。今井さん彼を操縦席まで案内して説明してやって下さい」
そう言い残すと風間は自衛隊員と共にどこかへ行ってしまった。
「あぁ・・・分かった。それじゃ、操縦席まで案内してやる、ついてきてくれ」
仁は言われたと通りに今井についていった。
さすが第二型メカゴジラを収容してるだけあってメインドックの中はかなり広く、第二型メカゴジラの左右に作業用の足場が組まれ、整備士たちが忙しそうに行き来している。足場は第二型メカゴジラ囲むように設置され、まるで巨大な生物を取り囲む巣のようだった。
第二型メカゴジラの背後には何台ものクレーンや巨大な溶接機が第二型メカゴジラの背鰭部分を溶接し、ジリジリ、という音を鳴らしながら背後で小さな火花を散らしていた。仁は今井に案内されながら第二型メカゴジラの左側の脚部や腕部に接続された作業エリアの階段を登った。手を伸ばせば第二型メカゴジラの装甲に触れられるまで近づいた。
「風間から聞いたと思うが、こいつの機体装甲はNT1Sを使ってる。お前が乗っていたXⅢと同じ装甲だ」
「えぇ、装甲やこの色とか見るとかなり懐かしく感じます」
「そうか、ならよかったな。だがNT1Sと言っても前代のメカゴジラの装甲より劣る、なにせ前のと比べたらこいつは一部にしかにダイヤモンドミラーコーティングを施してはいないからな」
「一部と言うと?」
仁が聞くと、今井は仁に振り向き、人差し指で自分の胸を指した。
「操縦席部分だ、操縦者の生存確率を高めるためにな」
仁はそれを聞いて安堵すると同時に、第二型メカゴジラの性能に不安を感じ始めた。
「それに武装も少ない、遠距離に対する攻撃なんて背鰭のミサイルや腕に装備されたメーサー砲しかないからな、あとは近接戦闘用の兵器しかない。武装も装甲も前代のメカゴジラに比べればかなり劣る。だが唯一前のと比べて優れているのは機動力だけだな」
若干皮肉交じりに今井は言った。
「そもそも、風間が立案したこの第二型メカゴジラ開発計画、通称は『MG2計画』と言われていたな。この計画に反対するものは多くいたよ。前代の極僅かな設計データを元に開発するのは極めて困難だし、メカゴジラなんてうちらからしたり“オーパーツ”のような代物だからな。反対派の上層部はメカゴジラの開発に使う予算と資源は戦車やミサイル、メーサー砲の量産に使うべきだと言う声は多かったよ」
すると今井は登っていた階段に一度立ち止まると、佇むメカゴジラを見つめる。
「だがここまで開発できた。こいつはまさに奇跡の代物だ。」
そういうと再び歩き始めた。作業エリアの足場の上では多くの整備士たちがそれぞれの役割を果たしていた。高所で作業する者、下から部品を渡す者、そして溶接機を手に持った整備士たちが腕部の間接部分の装甲に向かって集中していた。彼らの手元からは青白い火花が散っている。
足場の下には、工具や部品が整然と並べられた作業台があり整備士たちが必要なものをすぐ手に取れるように工夫されていた。作業エリアの最上階までまで登ると、第二型メカゴジラの胸部と奥の右側の作業エリアに通ずる通路があった。仁はその通路を歩く。
胸部に近づくにつれ、第二型メカゴジラの装甲の細部が目に入る。濃い緑色の主に間接部分の鋼鉄の表面には無数の溶接跡が残っており、関節部分には赤や黒の太い無数のコードやチューブなどが絡み合ってるのが見えていた。
そんな中、第二型メカゴジラに近づくと胸部にハッチを見つけた。
機械の音を響かせながら胸部のハッチがゆっくりと開かれていく。そこからは電子的な光が漏れ出し、内部のシステムが見えた。
「どうぞ」
すると今井が開かれたハッチに手を向ける、入れという事らしい。仁は胸部のハッチを抜けると目の前には狭い空間。中央に一人用の操縦席が鎮座していた。左右にはモニターが3台ずつ、計6台あり、操縦席上部には、スイッチやボタンが整然と並べられたパネルが備え付けられていた。左右には横向きの操縦桿らしきものが一本ずつ、合計2本あった。仁は操縦席に一度座ると今井が説明を始めた。
「まず左右に付けられたモニターなんだが、手前のが可視用のモニター、用はメインカメラだ、隣にあるのは索敵用で、レーダーと赤外線センサーを組み合わせて怪獣の動きをリアルタイムで表示してくれる。奥にあるモニターは状況分析モニターだ、過去に怪獣との戦闘データや地上部隊と連携するときに役に立つ。どれも最新鋭の機器だ」
「これは?」
すると仁は上部に備え付けられているオーバーヘッドパネルに似たパネルを指差す。
「コイツは武器システム統制パネルだ、各種武器システムのスイッチを押せば、武装されているミサイルやメーサー砲が発射可能になる。その操縦桿のトリガーを引いてな」
仁が無意識に握っていた操縦桿を指差しながら言った。仁は慌てて操縦桿を離した。
「ようは安全装置と同じだと思ってくれれば良い」
今井は笑いながら言った。
「これだけで本当に動くんですか?モニターだって小さいような気がしますし、たった二本の操縦桿だけで機動力があるとは思えないのですが・・・?」
仁が聞くと、今井はニヤリと笑みを浮かべた。この質問を待ってましたと言わんばかりだった。
「良い質問だな。実はこれだけでコイツは動かない」
「どういうことですか?」
すると今井は操縦席内から何かを取り出した。
「コイツを動かすのは、ここだ」
すると人差し指で自分の頭を指差しながら言った。
「頭ですか?」
「頭と言うよりかは、『脳』だな。コイツを使って」
今井は片手に持っていた特殊な形状をした黒いヘルメットを仁に見せた。ヘルメットの前部分にはゴーグルのようなものが備え付けられており、後部には太いコードが2本接続されていた。
「こいつは、『脳内神経伝達システム』だ。ようは操縦者の“脳”の神経をメカゴジラに接続することによってコイツを動かす、このヘルメットに備え付けられたゴーグルがメインカメラの映像に繋がっている、いわば“目”でもある」
仁はそれを聞いてイマイチ理解出来なかった。と言うのも脳の神経をメカゴジラに繋げる?飛躍的過ぎて、仁は動揺した。
「ようするに“一体化”するという事ですか・・・?」
「そういうことだ。」
仁は驚いた。それと同時に微かに戦慄した。この機体と一体化する、それはすなわち、自分がゴジラになると言う事を意味してると思ったからだ。
「すごいですね・・・そんな事が出来るなんて・・・」
「言っただろ?奇跡の代物だって」
今井は自慢げに言った。
「メカゴジラとは関係ないですが、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「風間さんと今井さんの関係って?」
仁が疑問に思っていたことだ。仮にも風間はここの司令官であり今井よりも上官の筈、しかし今井は風間に対してため口だ。その質問に今井はフッっと笑みを溢す。
「風間は俺の元部下だ」
「え?」
意外な回答だった。
「というのも風間は俺と同じ元Gフォース所属の技術仕官だ。解体されてから風間は自衛隊に転属して今じゃここの司令官になってるが、あの時風間が『MG2計画』を立案して俺が招待されたんだ。結果俺も自衛隊員になってここの整備士長に任命されたってわけだ」
「だからなんですね」
仁の疑問が一つ解けたような気がした。
そこから仁の訓練の日々が始まった。航空自衛隊に入隊していた時に行った耐G訓練や体力訓練、第二型メカゴジラの整備訓練を行い、中でもキツかったのは水中で機体から脱出する訓練だった。その後は前代のメカゴジラで使用されていたシュミレーターを元に操縦訓練と対怪獣の戦闘訓練も行った。
その後は基礎知識から怪獣との戦史や戦術を学ぶ日々が続いた。仁にとっては現役の頃に経験してるためかどの訓練も慣れていた。
そこから約二ヶ月が経過した日の事である・・・
風間は、足早にメインドック内の通路を歩いていた。向かっていたのはメインドック内に設置された司令室だ。風間はどこか慌てている様子だった。それもそのはず、今朝、長野県と群馬県の県境付近に怪獣が活動したと思われる事象が発生したという報告があったからだ。
やがて風間は司令室とプレートかかった一室に入った。広い空間には自衛隊の幹部やオペレーター、研究員で溢れかえっており全員が慌しい様子で動いていた。周辺機器や何台ものPCが整然と並べられ、デスクの上には書類が置かれていた。目の前には巨大なモニターがあり、各地域、主に防衛線の映像がリアルタイムで映し出されている。その司令室の中で片手にPCを持った高志と怪獣生態学者の佐藤の姿もあった。
「待たせたな、それでどういうことだ?[[rb:震源が動いてるっていうのは?」
「気象台からの報告によると、長野県の北西部の県境付近で震度3程度の地震が観測され、最初は小規模な内陸地震だと思われたのですがその後、断続的に震度3から2の地震が発生。観測された震源の深さは20メートル、揺れた範囲も300から500メートルだけで地震が発生した場所を確認したところ、こちらをご覧ください」
すると高志は持っていたPCデスクに置き画面を開いた。風間はPCの画面を覗く、映し出されていたのは日本地図だった。
だが普通の地図では無く、日本全域を覆うように無数の点が表示されていた。
この点は全て日本各地に設置された地震計を表していた。
地震計が揺れを観測するとその地点に揺れた震度が数値として画面に表示される仕組みだ。
風間はその地点と数値を見ると、確かに震源は長野県の山陸地帯から南東の方角一直線に伸びており群馬県に移動しているようだった。
地震計の数値と地点が何らかの巨大な生物が地中に潜んでいるかのように思わせていた。
「もしこれが観測機の故障じゃなければ、地中を移動している巨大な生物がいると言う事か?」
「まさか・・・」
ボソッと佐藤が口を漏らした
「なにか心当たりのあるがあるのか?」
すると佐藤は指を顎に当てた。何かを考え込んでるようだった。
「一体何なんだ?」
その佐藤の仕草を見て、風間は聞いた。すると佐藤は振り向きざまに言った。
「バラゴン・・・」
“バラゴン”佐藤のその一言で司令室内がざわめいた。“バラゴン”とはかつて四年前、新潟の妙高山の地中から突如として出現し、新潟一帯を蹂躙した怪獣の呼称名だ。
「待って下さい!バラゴンって四年前に新潟を蹂躙した怪獣ですよね?でもあの怪獣は今は冬眠状態で活動しないはずでは?」
高志が言った。『バラゴン』という怪獣は温度が上がった夏の時期になると活動を活発するが、逆に温度が低い冬の時期はほぼ全くというほど活動が確認されていなかった。その為、生物学者が調査した結果、地上の温度が下がった場合、地中で“冬眠”状態になると結論付けられていた。なので今月、今の季節は冬の真っ只中の2月、普通であれば『バラゴン』は活動停止状態の筈だった。
「あれはあくまで、一般の生物学者 が調べた結果の仮説だ。実際は違うのかもしれない・・・」
「どういうことだ?」
風間が聞いた。
「確かに、バラゴンと言う怪獣は地上の表面が寒くなると、その寒さを凌ぐために地中に潜り、活動を停止させるのは間違ってない。元々は温暖な中生代に生息していた大型爬虫類の末裔が、地上の寒冷化から逃れるために地中に潜り、仮死状態にあったのが、急激な温暖化によって目覚め、怪獣化した生物だからね。これもあくまで仮説だけど・・・」
「仮説って、確かな事は分かっちゃいないのか?」
それを聞いた一人の部下が怪訝そうな表情をしながら聞いた。
「怪獣についての生態や生存のメカニズムは未だに解明できてないんです。なにせ怪獣の皮膚や細胞などのサンプルすら手に入らないし、おまけに情報量だって少ない・・・。でも一つ言えることは怪獣というのは今までの生物の常識を覆す、人知を超えた存在であるということ、だから必ず想像の範疇を超える仮説を出さなければなりません。」
「ならもし、生物学者が導いた“冬眠状態”で無ければ、一体何なんだ?」
風間は佐藤に聞く。すると、佐藤は固唾を呑んで答えた。
「今までは、“冬眠”では無く、“進化の過程”だったかもしれない」
『進化の過程』佐藤の一言を聞いた風間は驚いた。
「どういうことだ?」
尽かさず風間は佐藤に問うた。すると佐藤は再び顎に手を当て考える素振りをしながら答えた。
「もしかしたら、寒い環境に適応するために進化した可能性がある」
その一言を聞いて風間は驚くと共に戦慄した。
「馬鹿な・・・こんな短期間で生物が進化できる訳がない・・・」
風間が言った。確かにその通りである、普通の生物が温度や環境に適応するために進化するには約数百年、いや何万年と掛かる。生物的に見てもあり得ないのだ。そもそも『バラゴン』は中世代という今よりも温暖な環境に生息していたとすれば尚更でもある、生物は一度環境に特化した適応が進むと、他の環境への適応が難しくなる。現に突如怪獣として目覚め、妙高山に出現したバラゴンは、冬の期間になると活動を停止する、いや活動が出来ない筈でもあった。すると佐藤は風間に向け答えた。
「言っただろ、怪獣は人知を超えた存在だって。怪獣であれば十分にありえるよ。もちろんこれも仮説に過ぎないけどね」
「どうか、仮説である事を祈るよ・・・」
風間はそう返した。佐藤の『仮説』という言葉に一瞬安堵するも、どうかその仮説が当たらない事を祈りながら。だが問題はこの地図に表示された地震の数値と地点だった。風間は鋭い目つきで、画面を見つめ、司令室内の部下達に指示を出す。
「どちらにせよ、この地震計などのデータは怪獣であると言う可能性が高い。これより群馬県の県境の防衛線に“第一種警戒体制”を発令する!最悪“第四種”に引き上げる可能性も高い。新町駐屯地には警戒を怠らないように要請しろ!」
「「「了解!」」」
風間が指示すると、部下たちはすぐに動き出し、迅速に連絡を取り始めた。
「やけに騒々しいな」
風間の背後から今井が声を掛けた。というのも今井も司令室に呼び出されたのだ。
「今井さん」
「怪獣が現れたんだって?」
「まだ確実ではありませんけど、その可能性が高いです」
「ところでなんだ?俺を呼び出したのは?」
「ええ、第二型メカゴジラの事なんですが・・・」
それを聞いた佐藤は察したのか、驚いた表情をする。風間の言葉にはどこか焦りを感じたからだ。
[newpage]
「まさかもう実戦配備するのか!?」
今井の言葉に風間は首を縦に振った。おそらくそのようだ。
「待ってくれ!まだメカゴジラは起動試験を終えたばかりだぞ!?」
「操縦士の訓練はどうなんです?」
「仁の事か?耐G訓練と戦闘シュミレーター訓練では優秀だが、まだメカゴジラの実物を使った訓練は出来てないぞ?」
「シュミレーター訓練で優秀なら問題ないはずです。むしろ怪獣との実戦を行える良い機会かもしれませんし、お願い出来ますか?」
すると今井はフぅーと一息つきながら、答えた。
「全く無茶な注文をしてくれるよ。武器の装備に少なくとも一日費やすかもしれないが急ピッチで半日終わらせるよ」
「お願いします」
そのまま今井は司令室内から去っていった。
第一種警戒体制
『怪獣の活動が物理的以外の化学、[[rb:地質 > ・・]]、気象、精神などいかなる点でも一つ確認された場合。』
※この『特殊災害警戒体制』は元々、『ゴジラ』に対して使われていた警戒区分だったが、現在では対怪獣用に国土庁・特殊災害研究会議によって指定されている。
群馬県 荒船山 深夜11時
荒船山は長野県と群馬県の県境にそびえたつ山々の一つで、険しい岩肌と深い森に覆われ、急な斜面や隠れた洞窟が点在し、山の中腹には清流が流れている。まさに自然の神秘を感じさせる場所でもある。その荒船山は今は夜の静けさに包まれていた。
だがその静寂を打ち破るかのように、突然、鳥の群れが一斉に山から飛び立った。
まるで何かから逃げるように、そして何かを予兆するかのように、翼を羽ばたかせる音を響かせながら無数の鳥が飛び立って行った。その時にはもう、あの静けさなど無かった。
低い地ならし音が響き始め、その音は段々と大きくなってゆく。
次の瞬間には地面が揺れ始め、その揺れは次第に大きくなり木が次々と倒れていく。そして山の一部の斜面から轟音を響かせながら巨大な岩石や巨大な樹木をも巻き込んだ大量の土砂が崩れた。
轟音は揺れと共に徐々に静まっていく。崩れた斜面には大量の土煙が舞っていた。
再び静寂が包んだ、それも不気味なほどだった。土煙の向こう側に巨大な何かの気配 を感じさせていたのだ。
土煙は段々と薄れていく、そして地ならしの正体が姿を現す。
低い唸り声を響かせ、崩れた斜面から現れたのは巨大な生物、怪獣だった。四足歩行で前後肢には鋭い爪が生えている。全身は赤茶色の皮膚で、背中には重なり合った巨大なひだがあった。
額の中央には巨大な角が生えており、下に向かって広がるような巨大な三角状の耳らしき鱗が左右の側頭部を沿うように覆っていた。口には鋭い無数の牙を生やし、その怪獣の眼光はまさに残忍凶暴な捕食者だと感じさせる。この怪獣こそ、新潟県の妙高山から突如として現れ新潟を蹂躙した怪獣、『バラゴン』であった。
生えていた木を踏み潰しながら、バラゴンは山岳部の地上を歩行し始めた。バラゴンが一歩前進するたびに地面は揺れ、怪獣がいかに巨大であるという事を物語る。
バラゴンは頭部に伏せていた巨大な両耳を起き上がらせ、月夜に向かって巨大な低い咆哮を轟かせた。
そして荒船山から“南東の方角‘’ へ侵攻を開始した。
続く・・・