テラーノベル
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第一話:絶品カレー
会社のデスクで、彩は深いため息をついた。
「またメールミス…今日こそ怒られるかも」
そんなとき、後ろから低く穏やかな声がした。
「田中、ちょっと昼行かないか?」
振り向くと、上司の佐藤修が、少し笑った顔で立っていた。
「え、私と…ですか?」
彩は驚きと戸惑いが入り混じる。
普段は厳しい修が、ランチに誘うなんて思ってもみなかったのだ。
「うん、いい店知ってるんだ。美味しいから、せっかくだし」
修は少し得意げに言った。
彩の胸の中で、ちょっとした期待が芽生える。
二人が歩くのは会社近くの小さなカレー屋。
店内は木の香りがほんのり漂い、ランチタイムのにぎわいで温かい空気に包まれていた。
「ここ、辛さ控えめだけど、スパイスが効いてるんだ」
修はメニューを指さして続けた。
「おすすめはチキンカレーとほうれん草カレー。俺は両方頼んで味比べするけど、田中はハーフサイズで十分楽しめる」
彩は目を輝かせて頷く。
「じゃあ、ハーフでお願いします!」
注文を終えると、二人の前にカレーが運ばれてくる。
彩はまずチキンカレーから一口。
「うわっ…チキンが柔らかい!スパイスも香ばしい!」
修はほうれん草カレーを一口食べ、にっこり笑う。
「ほうれん草の苦味がチーズでまろやかになるんだ。…田中、味どう?」
「めっちゃ美味しいです!…あ、でもスパイスがピリッとしてて、食欲増しますね」
彩は続けてほうれん草カレーもひと口。
「チーズがとろ~っとしてて、うわ…幸せです」
修はニヤリとしながら、自分の皿のチキンカレーを追加で一口。
「ここのチキンカレーは肉のジューシーさがポイント。ハーフじゃちょっと足りないかもしれないな」
彩が笑いながら言う。
「いや、私はハーフで十分ですよ!でも修さん、二つもペロリですか…」
「グルメは胃袋で味わうものだからな」
修は楽しそうに、二つのカレーを順番に味わう。
ランチを食べながら、二人は仕事の話や趣味の話に混ざって、食べた感想を実況する。
「これ、ほうれん草の風味が意外としっかりしてる!」
「うん、でもチーズがいいバランスを作ってる」
「次はあのスパイスカレーも食べてみたいですね」
「来週あたり、一緒に行こうか」
彩は気づくと、緊張していた肩がすっかりほぐれていた。
そして修も、部下の素直な反応に、心の中で小さく満足している自分に気づく。
「…また、今度別の店も教えるから」
帰り際、修が言ったその言葉に、彩は自然と笑顔になった。
「はい!楽しみにしてます!」
小さなランチ一回で、二人の距離は少しだけ縮まったのだった。
コメント
1件
あ、やっぱ作品作りの天才だな〜!?