大森side
【若井邸】
若井「そこのソファ座ってて、あ、元貴、上着頂戴?………それと、なんか飲む?」
大森「いや、いいよ……ありがとう」
若井「じゃあ、喉乾いたら教えて?元貴の好きなコーラもあるから」
自分の上着もまだ脱いでもいないのに、俺の上着や喉の乾きまで気にかけてくれる。
ソファに座り、目で若井を追いかけると、上着なんてポールハンガーにそのまま掛ければいいのにわざわざハンガーに1度掛けている。
ああ、若井ってこういう少しの手間な事を自然とやるんだよな、なんてしみじみと思った。
俺のを掛けた後、若井自身の上着を掛けたタイミングで、俺は若井に声をかける。
大森「……あ、あのさ、俺……若井と話したい」
若井「ん?わかった……俺、隣座っていい?」
大森「ん、」
少し眉を下げながらもわかったと言った若井は、少しでも俺との目線の差を埋めるようにソファに座りながらも少し前のめりになりながら俺を見た。
若井と目が合い、恥ずかしさから目を逸らしてしまった
若井「話したい事って……なに?」
大森「あの…………ありが、と……助けてくれて」
若井「それは当たり前の事だから気にすんな」
大森「それと…………ずっと……謝りたかった事がある……俺………………」
やっぱり怖い
言わなきゃと思っても怖い
若井に拒絶されたら
嫌な顔されたら
と思うと言葉が出ない
ただ、あの時の事を謝るだけなのに
若井「元貴……大丈夫、ゆっくりでいい、元貴のタイミングで」
目を逸らし俯いている俺に、若井の表情は見えないけど
いつもより少しゆっくりで
いつもより少し低く優しい声だ。
ちゃんと若井の顔を見て言わなきゃいけない
大森「俺、…………っ、」
顔を上げて目が合った若井は穏やかで優しく微笑んでいた
大森「……俺っ、……中学の時、若井にイヤな態度とったのをずっと謝りたくて……ごめん……ごめんっ、若井…………」
若井「…………元貴……、俺も……ごめん……俺もずっと謝りたかった……あの時、元貴の了承も取らずに無理やりコマンド使ってって……」
大森「ちが、ほんとは……あの時…………若井に、褒められて嬉しかったんだ……でも、それが恥ずかしくて……ごめ、ごめんな、さい」
はらはらと溢れる涙に、若井にバレてるとわかっていても、泣いてる事が恥ずかしくてまた俯いてしまう……
若井「俺も……俺もずっと元貴を褒めたかった…… だから謝らないで……本当はさ、涼ちゃんがずっと羨ましいかったんだよね。俺もSwitchだったら元貴をケアできるのにって…………あの時……あの時の事を俺はずっと忘れられなくて……ずっと怖かった……ずっと謝りたかった」
大森「俺も……あの時、若井の顔が見れなくて……初めてのコマンドで身体があんな風になるのを知らなくて……喜んでる自分が恥ずかしくて若井の顔が見れなかった……」
若井「元貴、こっち見て……」
大森「…………」
若井に見てと言われても、自分で言った言葉が恥ずかしくて顔を上げれそうにない
若井「お願い元貴……コマンド使いたくないから……元貴自身で俺を見て」
若井は
ずるい……
こんなタイミングでそんな事を言われたら顔を自ら上げるしかない……
俺と若井の目が合った
若井のダークブラウンの優しい瞳は
俺を安心させる
若井「俺、ずっとずっと怖かった。元貴がdomが嫌いなのは俺のせいだって思ってた」
大森「ちがっ」
若井「だから自分がdomなのが嫌だった、俺が元貴の傍に居る価値はにはギターだけなんだって……それが辛いって思うこともあった……でもそれは俺に課せられた罰なんだ、お前は人の人生狂わせたんだぞ、だからお前も一生辛い思いをしろって神様に言われてるってね」
俺は初めて若井の思いを聞いた
あの時、ちゃんと話をしていれば
あの時、あの時ちゃんとしてればって……
そうしていたら俺たちは互いに何年も悩まないですんだのに……
大森「ごめ、若井……」
若井「元貴が謝ることなんてないじゃん」
大森「……若井はあの時、俺を助けてくれた……あの時の俺は自分の羞恥心が強くてあの場でも…その後も何もしなかった……何も言わなかったんだ……。domが嫌いなのは……あの時の件もあるけど……自分がsubで……期待してしまうから……また……コマンドが欲しいって期待しまう自分が嫌なのをdomのせいにしてただけ……だから……ごめん……俺のせいで……ずっとずっと悩ませて……」
若井「そっか……ありがとう元貴……ありがとう……話してくれて……ありがとう……」
目尻に少し透明で小さな粒を作りながらも笑って何度も何度も若井は俺に謝ってきた。
大森「俺たち……謝ってばっかりだね」
若井「ははっ、確かに」
大森「もう謝るのは……やめよう」
若井「そうだな……あとさ、もうひとつ…………俺、ずっと元貴に言いたかった事がある」
大森「……ここまで話したんだ……なんでも聞くよ」
若井が大きく深呼吸をして、俺を見た
その瞳はいつになく真剣で
若井「元貴……好きだ……ずっとずっと好きだったんだ」
俺を好き……?若井が?
でも……だったか……
そっか……今はパートナーが居るって事だよな…………前に会った子……か…………
大森「そっか…………ありがとう……俺も……ずっと若井が好き、だった……若井はあの子と幸せになれよ、な」
若井「……元貴……あの子って……だれ?」
大森「え……前に……会った子……」
若井「え、なんで?」
大森「だって、俺の事好きだったって……」
若井「…………」
……なぜか若井頭抱えてる……
どちらかと言えば今でも若井が好きな俺の方がショックで頭抱えたいのに……
若井「元貴……前に俺が連れてた子はさ」
大森「う、うん……」
若井「……まあ、…………セフレってやつで……」
大森「セ、フ……セフレ?!」
若井「まあ、うん……で、俺が好きなのは元貴……ずっと昔から今も好きだったんだよって意味でだったって言ったんだ……」
大森「昔から……いま、も……」
若井「そう、昔も今も。俺はずっと元貴の事が好きなんだ……」
今も俺が好き
そんなおとぎ話の様な事に俺の頭はパニック寸前
ずっと若井に謝れなくて嫌な態度をとった俺をずっと好きだったなんて考えもしなかったし、女を連れて居るところまで目撃してた
それなのに……
若井「色々とあって信じられないかもしれない、でも……元貴が好きなんだ……今言わなきゃまた言いたい事言えずにまた何年もって思ったら……」
そうか、若井も俺と同じで何年もあの時の事を悩んでたんだ
今言わなきゃ
俺も……今言わなければ……
大森「若井……俺も若井が好き……ずっとずっと好きだった……今も昔も…………うわっ」
言葉の途中で突然若井に抱きしめられて思わず声が裏返った
若井「好き、元貴大好き……やっと……やっと言えた……好き……」
少し震えた声で何度も好きだと言う若井
大森「……おれ、も……」
嬉しくて涙が溢れる俺には、ひと言「俺も」って言うのが精一杯だった
でも若井は読み取ってか、強く強く俺を抱きしめてくれた
コメント
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最近コメントあんましできてなかったのですが…… "ちゃんと見てるゼ^_−☆" ということだけ伝えに来ました(?) 今回も最高でしたグヘヘ♡
うわ、うわあああっ、! ありがとうございます。 最高です…..挿絵まで! ありがとううううっ✨✨