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「お前、結婚しなさい」
父の口から出た言葉を、私は理解できなかった。
「……誰と?」
「神崎グループの御曹司だ」
「え?」
思わず聞き返した。
神崎グループ。
日本でも有数の大企業。
その後継者――神崎蓮。
雑誌で何度も見たことがある。
仕事ができて、容姿も完璧。
女性なら誰もが憧れるような人。
そんな人と、私が?
「会社同士の契約だ。お前が断る余地はない」
「……私の気持ちは?」
「家を守るためだ」
父は、それだけだった。
翌日。
私はホテルのラウンジで、婚約者となる男を待っていた。
約束の時間から、三十分。
来ない。
帰ろうとした、そのとき。
「――待たせたな」
低い声がした。
振り返る。
そこに立っていたのは、写真で見た神崎蓮だった。
「初めまして」
私が立ち上がると、彼は私を一瞥した。
そして――
「悪いが、俺はお前と仲良くするつもりはない」
「……え?」
「この婚約は会社のためだ」
冷たい目。
「勘違いするな。俺はお前を愛するつもりなんて、一生ない」
胸が、少しだけ痛んだ。
「……私だって、あなたなんか好きじゃありません」
強がって言い返す。
すると彼は、一瞬だけ目を細めた。
「そうか」
そして席を立つ。
「それなら話は早い」
そのまま去っていく彼の背中を見ながら、私は思った。
――最悪。
この人と、本当に結婚するの?
けれど私はまだ知らなかった。
この日、彼が私に向けた「嫌い」という言葉には、
私には言えない、別の意味があったことを。
コメント
1件
あー、これめっちゃ好きなやつだわ!「結婚しなさい」の一言から始まる王道展開、でも最後の「嫌い」に別の意味があるって伏線がもう刺さりまくり。冷たい婚約者・神崎蓮の態度にムカつきつつも、裏がありそうで続きが気になって仕方ない。強がって言い返すヒロインも好感持てるし、このすれ違いがどう動くのか、もう次の話読みたい🔥