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(大森視点)
やばいやばいやばい。 涼ちゃんを本気モードにしてしまった。
リハ終了と同時にに急いで荷物を取りに行く。
厚底で足挫いたらどうしよ。
いや、捻挫は根性でいける。
それよりも、今は最悪の事態を避けることに集中しないと。
だって明日はライブだよ?
万が一、腰が痛くて動けませんなんてことになったら笑えない。
走り去る大森を見て、何人かのスタッフが、何事だ、というように振り返ってきた。
化粧を超スピードで落として、着替えを終わらせる。
これは大森、過去最速だったと思う。
すれ違うスタッフの方々に、ありがとうございましたと挨拶をかけながら、こそこそと出口を目指す。
「あれ、元貴?」
「ひゃぃっぁ!!?」
突然肩に置かれた手にオーバーすぎる反応を見せながら振り替えると、若井がいた。
ギターを降ろして、今戻ってきたらしい。
「今日早いね、用事でもあんの?」
「あ、いや、うんっどちらかっていうと!用事を作らないように急いでるっていう感じっ!」
「……?…何言ってんのか全然わかんねーけどとにかく急いでるんなら引き留めてごめんな、気を付けて」
「…また明日…!」
事情を細かく訊かずに解放してくれた若井が神様に見える。
無事涼ちゃんに会わずに外に出られて安堵した僕は、背後で涼ちゃんが僕に視線を向けているのに気づけなかった。