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──────無名の天使視点──────
私は幸運の子らしい。物心ついた時には剣を持ち、正統派の剣術を体に覚え込ませるまでやり続け、勉学は全員が均一な知識になるように制限された時間内で全てを覚えさせられた。
髪色は金髪に統一。戦闘の邪魔になる髪は短く切り揃えられ、個人としての名も、番号もなく、死んだら何体死亡、と数にしか表されることはなく、誰が死んだのか、そもそも今話してるのは誰なのかすら知らない。
悪魔は争いを好み、天使を憎み、嫌い、言葉ではなく武をもって我々天使を服従させようとしてくる。と、何百回何千回ときかせられ、いつしかあったことも無い悪魔を憎む、という天使が大半を占めていた。私は、特に何も感じなかった。命令を聞けば飯が与えられ、やらなければ罰せられる。その仕組みさえわかっていれば、命令を違反する、なんて愚かなことはしない。ただ、神様のために。と言っておけば全員が賞賛し、褒めたたえ、勝手に崇めてくれる、なんて言う都合の良い夢の中にずっといただけだった。
どうでもよかった。
10の時に私は悪魔を殺した。複数の天使と合同で、一体の悪魔をひたすらに突き刺して。誰かの命を終わらせた、というのに私には罪悪感はなかったけれど、一緒に殺した天使たちはずっと笑っていた。
「醜いものが一体消えたね」「世界が綺麗になっていくね。」「もっともっと頑張って神様に尽くさないとね。」「ふふっ頑張ろー!」
私は、理解できなかった。そこからずっと、私は命令されれば戦争に赴き、自身の命を容赦なく戦場に晒したが、死ぬことはなく、命令を遂行し続けた。けれど、いつしか周りの天使の数は減っていった。けど、その度に新しい天使が入るから、正直よく分からなかった。
私が100の時か、はたまた悪魔を100体殺めた時か。私は神器の適性があるかどうかを調べさせられた。
どうやら、悪魔には能力、という異常な力があり、それに対抗するためには神様のお力をお借りしなければならない、との事だった。
適性があるか否かは、その神器に触れればわかる、ということだった。実際に、最初に適当に触れた神器ではバチッと激しい雷が手に落ち、一瞬全身が痺れるほどの電撃を食らってしまった。…適性がない、ということらしい。回復を待たないでそのままどんどんあらやる神器に手を近づけては、その度に違うペナルティをくらい続けた。
結局、私は神器の適性がないようだった。上位の天使は残念がることも、悔しがることもなく、淡々と私に帰るように促した。
その時だった。私の目の前に【███】が現れた。”それ”が直々に契約を結んでくれる、ということらしく、私は私専用の神器を手に入れた。
何が気にいられたのか。微かな断片を辿る。
「…なぜ、私なのか。と聞かないのか?」
「いえ。それは重要なことではありません。神器に適性があるか否か。それを調べるために、と言われておりましたから。ただ、これは適性があった、と言えるのでしょうか?という疑問は抱えております。」
「…私は、お前がそこまでの戦闘スキルを持つのに七つの美徳に入れないことに疑問を持っていたが…。ここに来てわかった。【空っぽ】なんだよ。お前は。」
「…?すみません。私には理解できないようです。空っぽ、というものはそこに何もない、という意味しか知りません。それが知的生命体をさして言うべき言葉ではない、と私は教わっています。」
「花を美しいと思う心も、誰かの死を泣くほど悲しがることも、誰かを心から愛することも、お前にはできない。」
「貴方様のお話は高度すぎるみたいです。私のようなものには理解できません。」
「簡単に言ってあげよう。君には感情がないんだよ。それが、私───【ロスト】にとって素晴らしく好ましい。何もない、無、失ってしまったもの。実に素晴らしい。そんな君が、最後まで感情がなく死ぬのか。私はそれはそれは楽しみで仕方がない。」
「…ようやく合点が行きました。貴方様は私の死に様をご覧になりたいのですね。そもそも、天使には感情というものがいらないようにも思えますが。…それは私の持論に過ぎず、神様の決定を妨害することもできません。それでは、死ぬまでの短い間、契約、どうぞよろしくお願いします。」
「楽しみにしてるよ。───君の死に様を」
あぁ、そういえばこんな会話をしたな、なんて思いながら私はこの状況をどう打開するかを考えながらあの悪魔の質問に答え続ける。───誰かに何かを聞かれたら答えなさい。そう教わったのだから。
──────メメさん視点──────
「天国っていうのはなんだか退屈そうな世界ですね〜。私なら暇すぎて死んでしまうかも。」
「あなたは死ぬことがないはず。」
「そうですよ。冗談ですよ。別にいいでしょ、そのくらい。」
私がわざわざ冗談を言ってあげたのにこの天使はバカ真面目に答えてくる。まるで長年の友のような会話だがお互い腹の底はしれず、そしてどう殺すかを常に考えていた。これはお互いの暇つぶしであり、脳を活性化させるためになるべく五感を使うことを意識しているからでもある。
「…そういえば、あなたいつも目元を布で覆ってますけど、どんな目なんです?」
ずっと隠している目。案外そこが弱点なのでは?と目を付けてみる。その天使の抵抗らしい抵抗もなかったので弱点では無さそうだが、散々見下されたのだ。このくらいやったって罰が当たりやしない。そう思って私はその布を解いてみせる。
「…うっわ。」
「ただ目がないだけですよ。───空洞の代わりに闇が入れこまれてるだけで。」
そう、その天使の布を外した途端、目からポロポロ───いや、ドロドロとした液体じみた何かが出てくる。瞬時にそれが闇だということに気づくが、疑問は絶えない。
「え、目は?てか天使が闇を持ってるって…えぇ?」
「目は契約で失いました。闇は目の代わりに詰め込まれたものです。どうせ使わないですしいいじゃないですか。この闇のお陰で光に敏感になれてある程度のものの位置とかはわかるんですから。」
「…弱点じゃないんですね。残念。」
「まあ、何もないですからね。…私は、よく分からないですよ。若い時から争って死ぬかもしれない環境にいる悪魔が。」
今度はそっちが質問するのか、と思いつつ私はその質問に対する答えを言おうとした時───。殺す方法を思いついた。いや、違う。思い出したのだ。
───私もまた、神と契約したものだと。
こいつには悪魔の力は効かない。けど、神の力には耐えられない。そんな説が脳裏に急浮上して、その高揚感のまま、私はその行動に及ぶ。
「…w思い出しちゃいました。私は、あなたより1枚上手だったってことを…!【生の消滅】」
そう私が唱えれば目の前に禍々しいオーラをまとった剣が現れる。私は、そのまま天使の体を何回も貫いてみせる。貫ける。そう確信すればもう止まらない。ずっと、ずっと刺し続ける。天使から出る血をまじまじと見るのは初めてだったし、死にゆく天使の顔を眺めたのも初めてだった。そいつは、全てを理解したように、けど絶望も喜びも、どんな感情の起伏も見せずに、ただその終末を待っていたかのように抵抗はしなかった。
「…どんだけ苦しい身の上話でも、私は同情なんてしませんし、友達ごっこもしません。あなたは、私の親友を殺した。戦友を殺して、その死を愚弄する形で弄んだ。死よりも深い罰をあなたに罰さなければなりません。」
私がそう言い捨てながら、あとはただひたすらに意識が飛ぶまで貫き続ける。神器を持った天使の耐久力は馬鹿げているが、そんなもん神の力の前では紙に等しい。
そして、最後に肉塊と成れ果てた天使だったものは遺言らしきものを吐き出す。
「…447年11ヶ月19日間をもって契約終了です。神様。」
そう呟いた瞬間、こと切れたかのように目の中の闇が全て流れ落ち、天使の光輪が割れる。ただ、翼だけがその天使の成れの果てを守るかのように囲っていた。
「───思い出してくれたようで何よりだよ、メメ。この天使との戦いは楽しんでくれたかな?」
「…相変わらず思うんですけど、神ってここに降りちゃダメなんじゃないですか?」
私はそういいながら、先程使った神の力の元、【最高神:ロスト】を見つめる。自身を含む全ての神に神界以外から出ては行けない、という命令を出したくせに、我々悪魔側には数名、神と出会ったものがいる。明らかにおかしい話だ。
「あぁ、それは力や未来を暗示してはいけないだけだよ。私のように仮初の人形を使えば来れないこともないし、夢のような空間なら直接干渉したとも言えない。」
「随分ガバガバなルールなんですねー。」
「相変わらずの塩対応だね。まあ、大丈夫。そろそろルールを一新するから。今日は、この天使の魂を回収しに来たのと、久しぶりに思い出してくれたから君に挨拶を、と思ってね。」
「なんでそんなに私に思い入れがあるかなぁ…。と、言うか。この天使の魂回収するんですか?てっきり放っておくものかと。」
私がそんなことをいえばいやいや、とその神はいいながら既に魂を回収し始めている。
「この天使とは契約を結んでいるからね。生きている間は目を代償に、死んだら魂をいただくってね。その代わりに、あの天使専用の神器をつくってあげたわけ。」
「…あなたのせいで私の親友殺されたんですけど?」
「ははっ。君はお気に入りだけど贔屓はしないよ。それに、この天使も私は気になっていたからね。」
「はぁ…?」
「おや、君は気にならないのかい?空っぽの天使が死にそうになったら絶望するのか、しないのか。死は誰もが生まれた直後から付きまとう恐怖の代表例だ。感情がないこの天使もまた、生まれもった感覚で絶望するのか。気になってたんだけどね。」
「未来見ればいいじゃないですかそんなの。神なんだからそのくらいできるでしょう?」
「そんなものつまらない。分からないからこそ面白いし、意外なことがあるからこそ観察のしがいがある、というものだ。全てわかっていたらこんな箱庭はやりたくもないね。分からないを楽しみたいんだよ。こっちは。」
「あなたにも分からないものがあるんですね。」
「私は全ての半分しか知らないからね。そうしないと二柱もある意味がないだろ。…おっと、おしゃべりをしすぎたようだ。それじゃ、また会えたらよろしく。」
「どうでしょうか。…戦争が終わっても、どうせ私は地獄に行くので何ともですが。」
私がそう答える前に、その人形も、天使の死体も消えていた。けれど、唯一の戦果品、神器である扇を手に入れた。
けれど、神はこれを契約で与えた、と言っていた。なら、私にこれは使えるのか。───とっくに私の中で答えは出ているというのに。私はその神器を構えてみる。
その神器が拒むことはない。けど───
「やっぱり。私には、使えないみたいですけどね。」
ここで切ります!はい!ここでサクッと天使は死にます。皆様この天使に愛着が湧いて…ませんよねぇ。けど、世界観のためにも、私が時間をかけて設定した部分を書かせて頂きます。読まなくても大丈夫です!
天使はなぜ目がなかったのか。
これは暗示。目がない、ということは盲目であり、この子は盲目的に神を信じて、上からの命令だけをただそれだけをするだけの空っぽなものだから。その空っぽに闇(つまりロスト)という部分が埋め込まれたけど、結局は未来が見えなくなっちゃう(目がないから)し、ロストでさえその空っぽを埋めることは一部分(目の空洞)しかできなかったっていう意味を込めてます!
ちなみに髪型も上に縛られているからという意味を込めて鎖っぽい形にしてます。
ちなみに名前もありますが言わない方がこの世界ではただの歯車っぽいのでいいですね!
神器についてもまとめておきましょう。
神器
神の力を模したもの、または神がはるか昔に使用したとされる武器。神器を扱うには、その神器に宿った思想や、力の面での適性があるかないかで扱えるかどうか、最大限使えるかどうかが決まる。
今回出てきた天使は直接神との契約によって神器を得ている。代償を支払ったぶん、それに見合った力だけ与えられる。また、ほかのものがその神器を使用するためには同様の代償を支払わなければならず、そのうえで神器に適性がなければ最大限の力を発揮できない。
天使は集団で組織的に動き、全体のために命をかけ、悪魔は個人で、欲のために命をかける。
割とかけたので良かったです!
それでは、おつはる!
コメント
8件
さぁだんだん終わりが近づいてますけど終わりまでに何話まで行くのかな〜?