その夜りおは帰宅途中、裏通りの角で小さな悲鳴を聞いた。
「助けて!」
反射的に駆け出す。
そこには、泣きながらうずくまる小学生の男の子と、異様な影。
【モールモッド】自動車に足がはえたような大きさをしているトリオン兵
「トリオン兵…ッ」
りおは、見学の際トリオン兵のことを教わり、今目の前にいる、化物が敵であることを察知した。
トリオン兵が近づいてくる。
りおの心臓が跳ねた。
「逃げなきゃ」そう思った瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
ブレスレットが強く脈打つ。
眩い黒い光が広がった。
次の瞬間、世界が変わった。
すべての音が遠のき、空気が歪む。
りおの体を中心に、黒い結界のような光が波紋を描いた。
トリオン兵が結界に触れた瞬間、砕け散る。
りおは息を詰めて立ち尽くす。
結界が霧のように消えていった。
「…え、何?」
子どもが震える声で言った。
「おねえちゃん、ありがとう……」
その言葉で我に返り、りおはその場を走り去った。
同時刻、ボーダー本部では
「黒トリガー反応、発生!」
オペレーターの声に、風間が顔を上げる。
「どこだ」
「市街地南部、反応は一瞬だけ!」
迅がすぐに動いた。
「やっぱり……彼女か」







