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あの夏が飽和する .. 0.1


梅雨時、ジメジメとした空気に辺りは気分が薄れていた。ここ最近ずっと雨だ。それはそれは皆気分も薄れるだろう事。


だが汀はそれを好んでいた。

もうすぐ夏が始まるから、暑い太陽にあたりながら、冷たい水に身体を泳がせる。

こんな雨も、数日経てば夏に変わるんだから


授業は終わり、すぐさま自分の家に帰ろうと足を運ぶ。歩いて、歩いて、歩いて..。

自分の家が見えたかと思うと、セーラー服が濡れ、雨が流れる瞬間と同じように泣き声をあげている何かが居た。


「 あ..、汀…….ご、ごめんね。こんな所座ってて、邪魔だよね.. 」


座っていた彼女の名は梓(あずさ)。

セーラー服は濡れているが、所々に汚れや赤い何かが散らばっている。


きっと此処にいるのは何か理由があるはず、彼女はここ最近学校に来ていなかった、彼女は虐めを受けており、大変辛い思いをしたであろう。だがしかし、一つ謎があった。


虐められていた彼女が休むのも無理はないが、その"いじめっ子"も共に姿を消していた。

先生も事情は知らず、誰も事を知らなかった


「 そんな事は別にいいけど..。寒いだろ?とりあえず中に入って暖まろう 」


現在地は玄関前、傘を持ったまま彼女と話すわけにもならないし中に入って暖まれば彼女も落ち着くであろうこと。

家の中に招き、タオルを渡す。梓は申し訳なさそうに謝りを入れてから、タオルで髪の毛を丁寧に拭いた。


「 今日も学校来なかったね、しかも僕の家の前に居たし..、何かあったの? 」


階段を登り、部屋に招く。

ドアを開け、辺りの荷物を適当に片付ける。

彼女は震えながら、そっと自分の手を強く握り口を開いた。


「 ..昨日、人を殺した..んだ。 」


彼女はゆっくり、だがしかし言葉には息詰まっており、声だって震えていた。

「 話を続けて 」とだけ、言ってからずっと無言のまま優しく目線を投げ話を聞く。

どうやら、隣の席の..憬(さとる)にいじめられていたのが耐えられなくなったのか、2週間前の昼休みに屋上に呼び出し、強く身体を押してしまったそう。その時は、急いで学校の近くの小さな森に隠したそうだが、毎晩確認しに行ったのだろう、毎度毎度身体を揺らしても起きやしない、さらには身体も冷たいと言った状況であり、憬は死んでると昨日確信したのであろう


「 多分、いや..きっと此処にはもう居られない。だから、最後に話したくて.. 」


“ 遠い誰にも見つからない場所で、死んでくる。遺体も見つからないように “

きっと数日後には憬の遺体が見つかって、警察も動くであろう。手袋もなしに遺体を運んでしまったから指紋も大量に付いている。


「 なぁ..、それ僕もついて行っていい? 」


彼女は驚いたように顔を上げ、クエスチョンマークを頭の上に出した。

驚くのも普通ではない。だって犯罪者である彼女の旅に着いて行くと言ったのだから。


「 ..、いいの?汀はまだまだする事あるでしょ..?私なんかに着いてきたら.. 」


震えたままの手を握り、温もりを感じさせる

“ 梓、僕の意思で言ってるんだ。 “

ゆっくりと笑いかけ、彼女はまた俯き

「 ..いいよ。明日になったらきっと警察も動くし、早めに支度して此処を出よう。」


何も言わずに頷き、少し大きめのバッグを2つ出す。此処を出るには普通を演じなければならない。だが大きめのバッグであれば何処か旅行に行く。そう考える人がいるであろう、だから不自然ではない。


財布、包丁、携帯ゲーム、..必要ない物は全て壊して新しい物を作ればいい。

無駄な物を詰め込み、服装も変える。

ふと、目につく物が見えた。


“ 小さい頃の写真 “

笑顔で二人ともピースサインをしていて、なんだか楽しそうだった。隣には日記もあり、ぎこちない自で昔の日常が細かく書かれていた。

この写真も日記も、..もう見ることはない。


人殺しと、ダメ人間の君と僕の旅だ

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