「理沙に似合わないかどうかは、理沙が決めるんだよ。あんたじゃないから。けど……」
そこまで言うと、銀河が言葉を切って、
「……これでも、俺が理沙に合わないと思うか?」
掛けているサングラスをずらして、花梨にぐっと顔を迫らせた。
紫色をした妖艶な瞳が、彼女の視線を真正面から捕らえる。
途端、今まで挑発的で敵意むき出しだった彼女の眼差しが、うっとりとまるで虜まれたかのように潤んだ。
「それって……」
花梨が、銀河から目を離せないまま呆然した顔つきで呟く。
「……この俺に、おまえも、落とされたいだろ?」
「なっ…!」
銀河の一言に花梨が一瞬で真っ赤になる。
「なんなら、相手してやってもいいんだぜ?」
言いながら彼女の頬にひたりと手の平で触れると、さっきまで強気に吠えていた花梨がさらに顔を赤らめて、まるで手なづけられた仔犬みたいにおとなしくなった。
「……これからは、理沙のことを勝手にわかったふりをしたり、あれこれ嗅ぎ回ったりするのはやめろよ」
「わ…私は、別に、そんなこと……」
赤面してしどろもどろで口にする花梨に、
「いいな? 素直に言うことを聞けば、ご褒美にキスをしてやってもいいんだぜ?」
銀河がニッと口の端を吊り上げると、花梨の耳元にわざとらしく唇を寄せて、そう低く囁きかけた。
「えっ……」
「”えっ”じゃない、”はい”だろう?」
さらに顔を寄せ返事を促す銀河に、顔を赤くしてうつむいた花梨がこくりと頷いた。
「それで、いい。もう、理沙には構うな。わかったな?」
そう念を押して、花梨の頭をさらりと撫でると、ほっぺたにチュッと軽くキスをした。
キスされた頬を片手で押さえて、あのやかましい花梨がだんまりで立ちすくむ。
「……忘れんなよ。理沙には構うな。そのキスは、約束だからな」
まだ突っ立ったままでいる花梨に、もう一度そう言い聞かせると、
「じゃあ、行こうぜ。理沙」
銀河が私の手を引いて、彼女をその場に置き去りに歩き出した──。
コメント
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凄い女ったらし😆