「銀河、ねぇ…あんなことして、よかったの?」
「いいだろ、あれぐらい」
不安いっぱいな私に対して、まるで大したことじゃなさそうに銀河が口にする。
「だけど銀河、もしかしたら花梨に目をつけられたかも……」
心配になり、置いてきた花梨の方を振り返ろうとする私を制して、
「目をつけられようと、別に俺はかまわないから。それより、おまえはもっと自分のことを気にしろよ。あんな風に言われたい放題で、いいのかよ?」
そう話す銀河に、「うん……」と、気まずい思いでうつむく。
「だって花梨はいつもああいう感じだから、周りはみんな目をつぶってて。なんか反論したりすれば、さらに責められたりしそうだし……」
なかなか強気に出ることが出来ない、どうにも消極的な自分の性格に嫌気が差す。
「それでいいのかよ。あんなの野放しにしといたって、ろくなことになんねぇし。だいたい理沙の中身も知らないで、言いたいことばっか言ってただろ」
「うん……」と、また口ごもった後で、
「……だったら、銀河は私の中身、知ってるの?」
ついそんなことを確かめずにはいられなくなった。
「知ってるぜ。前にも言っただろ? おまえは素直じゃないって。さっきも内心では彼女の態度にイラついていたのに、そういう感情にフタをして、無理に丸く収めようとしてただろ。
まったく素直じゃねぇよな……怒りたいんだったら、怒ればいいんだよ。そうやって感情を押し殺してたって、誰も本当のおまえになんか気づいちゃくれないんだから」
自分から尋ねたのにも関わらず、あまりにもあっさりと心の内を見見透かされて、
「……知った風なこと言わないで……」
またしても、へそ曲がりな自分が顔を覗かせた。
「……そんな風にいつも感情をストレートに出してたら、誰も相手にしてくれなくなるじゃない……」
もっともらしい言い訳をする私に、「ふぅーん…」と、銀河がぞんざいに相づちを打つ。
「じゃあおまえは、このまま自分を隠してでも、周りとなんとなく付き合えればそれでいいんだな?」
彼の言葉が痛いくらいに胸に突き刺さって、
「そんなこと……」
と、唇を噛み締めた……。
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